百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第18章 亜湖 vs 香14

次の日―――、社長は亜湖に、
「今日から亜湖さんは中堅上位になります。で、試合相手は―――」
と言った。亜湖は中堅上位の2名に勝ったのでその内の一人と入れ替わるように上がった。それを聞いて、
「はい、有難う御座います」
と言って頭を下げ、
「次の相手は……は誰でしょうか?」
と聞いた。社長は、
「ジェネラル美紗さんです、本人の希望で―――。かえでさんも希望しましたが美紗さんの方が早かったのでそうしました」
それを聞いて亜湖は驚いた。美紗とはパートナーを解消していないからだった。しかしお互いの力を確認する為、パートナー同士で試合する事などいくらでもある。
それ以上に美紗が自分の力を認めてくれたというのが大きかった。
「ありがとうございます、胸を借りるつもりで頑張ります」
亜湖が礼を言うと社長は、口元に笑みを浮かべて、
「あなたみたいな立派な胸を持ってる人は借りる必要無いわよ―――大きさではプルトニウム関東さんには負けますが、あなたは形がいいわ―――」
と言った。亜湖はバッと両腕で胸を隠し顔を真っ赤にして上目遣いで、
「しゃ……社長まで―――」
とブツブツと呟いた。社長は、
「冗談ですよ、頑張りなさい」
と言うと亜湖は姿勢を正して、
「はいっ」
と返事し、ブラジャーとパンティを直してから練習室に向かった。
さくらと合流して練習室に入ると香に声を掛けた。
「美紗対策? そんなのいつも一緒にやってる貴方達の方が分かるんじゃないの? こっちが聞きたい位よ」
と言った。さくらは、
「それに何で香さんなんですか? あれだけやられたのに私だったらもう無理です」
と言った。亜湖は、
「そうだね。でも―――覚悟決めてやってるから堪えないとだよ。それに……」
と言って一息ついてから、
「使えるものは使え。そうですよね? 香さん―――」
と聞いた。香は、
「解ってるじゃない。いいわ、わかる範囲で教えても―――」
と言って立ち上がると、
「手を後ろに回して」
と言った。亜湖は何の事か分からずに言われた通り、両手を後ろに回した。すると香は、
「そのままブラ外したら教えてあげるわ」
と眼鏡を直しながら澄まして言った。亜湖は、
「ほ、本気ですか!?」
と赤面して言った。香は、
「冗談よ。この間のパーティは別として、それは試合で起こるから面白いのよ」
とクスッと笑った。さくらは、
「何気に酷い事言ってないですか?」
と不満そうに言った。さくらとしては亜湖が言わなけれは香とは顔を合わせたく無かった。どうして亜湖があれだけやられても香と関わろうとするのか―――理解できなかった。
亜湖にとって香は年が近い事もあり、やはり一番話し易い先輩だった。裏切られたと思った件についてもこの間の試合で返した。
再び裏切られたら、とか人が良すぎるとかさくらや美紗、更にはかえでにも言われた事があるが、またそうなったら試合で勝てば良いと―――。
ここは闇プロレス丸紫なのだから馴れ合いなど必要ない、裏切りだってあるのだと割り切る事にしたらすっきりした―――。香だって亜湖とさくらが新人だった時に言ってた。
「ここが闇プロレス丸紫だって事わすれてるんじゃないの―――?」
と―――。兎に角亜湖はどうしても香の事が憎めないと思った。

ジェネラル美紗との試合当日―――。亜湖は香との試合の時に身に着けていた赤いリボン付きのピンクのブラジャーとパンティ、そして膝下までの赤い靴下に黒のスニーカーという姿だった。
「頑張って下さい、センパイ」
白地に水色の縞模様のブラジャーとパンティを着けたさくらが亜湖の腕を掴んで笑顔で言った。亜湖は、
「うん、練習とは違うから何処まで通じるか分からないけど全力でぶつかるよ」
と答え、さくらの腕を握り返してそれからリングに向かった。

事務所ではかえで、美里、そして生徒会長が。社長室では社長、銀蔵、メイドが。良とプルトニウム関東は試合場まで下りてきて壁に寄りかかっていた。また、洋子と栄子は実況の亜希子の隣に並んで座った。
そしてさくらは練習室に向かった。入ると体操服ブルマ姿の香が冷蔵庫から牛乳を出し、プロテインを用意している所だった。モニターを見るとスイッチが入っている―――。
「香さんも? みんな試合見るんですか?」
さくらが聞くと、香は眼鏡を拭いてから掛けて、ポニーテールをほどいて、
「亜湖のやられ姿目当てでしょう」
と答えた。さくらは、
「もう、みんな酷すぎ」
と口を尖らせた。香は、
「大して楽しめないと思うわ。美紗はすぐに倒しに来るからね。それに亜湖と―――貴方で楽しむ、いや、本当に楽しめるのは私だけよ」
と笑みを見せてプロテインシェイクしてから飲んだ。さくらは、
「どうして亜湖センパイが貴方みたいな人を―――やっぱり理解できません」
とキッパリ言うと香は、
「私も解からないわ。兎に角この試合は美紗と亜湖の対策をする為に見るわ」
とだけ答えてクスッと笑った―――。


リング場では亜湖が先に紹介され、ボディチェックを受け、後から上半身はTシャツ、下半身はミリタリー風の膝上までの短パン姿のジェネラル美紗が紹介され、ボディチェックを受けた。
それからゴスロリ姿のレフリーが二人にコメントを求めた。美紗は、
「覚悟は決まってるな? パートナーだからといって手加減はしないぞ。いや、パートナーだからこそか」
と言って指を鳴らした。亜湖は、
「はい。よろしくお願いします」
と答えた。
それを見届けたレフリーは右手を高く上げ、試合開始を告げ、ゴングが鳴り響いた。
亜湖と美紗は互いに一歩下がってから踏み込んで手四つに組み合った―――。


百花繚乱 完

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