母はアイドル
木暮香瑠:作

■ 突付けられた罰6

 リビングでは、三人の会話は弾まない。演奏する曲を考えると言う言い訳が、三人を沈黙させる。三人の思考は二階に向けられていた。まさみと龍一が二階に消えて、どれほど時間が経ったのだろう。長いようにも短いようにも感じる。時間の感覚がなくなるほど、三人の思考はこの場に無かった。

 この男三人の沈黙する雰囲気に、居た堪れなくなった柴田が口を開いた。
「俺ッ、ちょっとトイレ……」
 柴田はそう言い残してリビングを出て行った。
 しばらくして及川も口を開く。
「俺もトイレ行ってくる」
 そう言って、及川もリビングを出て行った。

「柴田……」
「お前もか……」
 及川と柴田の考えは同じだった。二階が気になってしょうがなかったのだ。二人は、階段の下で二階から漏れてくる声に耳を澄ませた。
「…………」
 微かな声が聞こえてくる。しかし、何を喋ってるのかは判らない。声なのか物音なのかさえ区別がつかない音に耳を済ませる。
「……あん、あうっ……」
 僅かな音ではあったが、まさみの声が漏れ聞こえてきた。
「ヤッてるな。まさみちゃんと龍一……」
 及川は、ゴクリと唾を飲み込む。
「あのでっかいオッパイ、揉み放題か?」
 柴田も龍一に嫉妬を感じながらも、妄想を膨らませ声に耳を傾けた。

 戻ってこない二人に痺れを切らし、耕平はリビングを出た。二階に続く階段の上り口に二人の姿を見つける。
「どうしたんだ? ミーティングはどうすんだ」
 背後からの声に二人は、息を止めビクンと仰け反る。
「いやっ、その、始めよう」
 バツの悪そうな歯切れの悪い返事を返し、二人はリビングに戻った。

 リビングに戻った三人だが、話は続かなかった。重い沈黙が支配しているだけだ。
「俺、帰るわ」
「オレも……」
 もう我慢できなかった。すぐに帰ってオナニーでもしなければ収まりはつきそうになかった。及川と柴田は、そそくさと帰っていった。
 耕平だけが一人、リビングに取り残される。両手の拳を膝の上でぎょっと握り、ただ俯いていた。



 龍一は、背中をブルブルッと震わせた。
「痺れるぜ、この締め付け……。ヒダヒダがチ○ポ全体に絡み付いてくるようだぜ」
 龍一に犯されたあの日から、まさみは毎日呼び出され犯され続けていた。一週間に及ぶ凌辱は、女の保護本能を目覚めさせていた。擦れる肉棒から自分の身を守るため股間を濡らし、濡れた膣壁は怒張に擦られ官能を目覚めさせる。棹を包み込んだ膣壁がギュッギュッと収縮する。
「逝く時は、ちゃんと逝くと言うんだぜ。判ったなっ!」
 まさみの膣が自ら収縮をしだした事を確認した龍一は、角度を変え膣壁の上部を責め立てる。
「い、いやっ! こ、この家で……逝きたく、ない……。ううっ!」
 Gスポットを龍一のカリでグリグリと抉られ、まさみの意識がグラグラと歪む。
「あうっ、ああっ、あん……」
 漏れる声を、自分では押し殺せなくなる。バンドの仲間が帰ったことを知らないまさみに、漏れる声が不安をもたらす。
(だめえっ、聞かれちゃう……。耕平君に……、みんなに聞かれちゃう……)
 グチュグチュと、自分の搾り出した愛液が掻き回される音が耳に纏わりつく。頭の中を、不安と快楽がグルグルと旋回する。そして、次第に快楽が不安を追い出していく。

「あん、ああん、あうっ!」
 まさみは、声を上げることを押さえることは出来なくなっていた。喘ぎ声が階下に漏れるのさえ、もういとわない。ただ、この家で龍一の責めに感じてしまうことが怖いだけだ。
(龍一君に感じてるんじゃない。先生としてるの、先生と……)
 まさみは、先生とのセックスを必死で想像した。感じてしまう自分が許せなくて、龍一に犯されたあの日から、せめて先生とセックスしていると思うことで屈辱から逃れようとした。しかし、思い浮かべた先生の顔は、優しく微笑んでいる。セックスしてると想像した途端、耕平の顔に代わってしまう。自分の思いとは裏腹に、耕平に犯された情景がフラッシュバックする。
(ど、どうして? どうして先生……セックスしてくれないの?)
「ああっ……」
 まさみの口から、戸惑いの息が漏れる。先生のセックスしている顔は、想像すら難しかった。
(逝かしてやるぜ。この家で……、この部屋で……)
 まさみの困惑など知らない龍一は、ここぞとばかりに腰を激しく撃ち付けた。

 軋むベッドの荒波に翻弄される小船のように、まさみの身体がバウンドする。龍一の眼下で、豊乳がブルンブルンと揺れる。
「だめえ、そんなに激しくしたら……。あっ、あうっ、あん、ああん……。逝っちゃう、だっ、だめっ、だめえ……」
 まさみの頭の中に白い靄が掛かり、意識が飛びそうになる。必死で思い浮かべる先生の笑顔が、龍一のにやけた顔に、耕平の心配そうな顔にと目まぐるしく映り変わる。
「ああん、あん……、あ、あっ、あっ、あんっ……」
 まさみのエクスタシーが間近な事を告げる喘ぎ声が搾り出される。
「あん、いっ、逝っちゃいそう……、逝っちゃう……、そんなに……激しくしないで……、あっ、あっ、あっ……」
 想像の中では、耕平がまさみの恥丘に激しく腰を撃ち付けていた。
「あっ、あんっ……、だ、だめえ、こ、こ…へい……くっ…ん……」
 薄れる意識の中、まさみの口から無意識の喘ぎ声が漏れた。
「ううっ、うっ、い、いくううぅ……」
 まさみは龍一の下で肢体を震わせ、そしてガクンと堕ちた。
(こ…へい? コイツ、逝きながら耕平の名前を呼びやがったのか? 耕平を思って逝ったっていうのか?)
 自分の身体の下で意識を飛ばしたまさみを見詰めながら、龍一の眉が歪んだ。

 龍一はそそくさと服を着ると、振り返りベッドの上のまさみを睨みつけた。
「……、帰る!!」
 官能の余韻から抜けきれずシーツの海に漂うまさみに、龍一は言葉を吐き捨てた。

 龍一は、リビングの耕平には目もくれず玄関を飛び出した。
「俺のチ○ポであんなに感じてるくせに……、ふざけやがって……。そんなに俺のチ○ポでは逝きたくないっていうのか? 耕平を思って、今までも逝ってたっていうのか? ちきしょう……」
 龍一は、今までに感じたことのない屈辱を味わっていた。

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