母はアイドル
木暮香瑠:作

■ 染み込んでいく官能10

 まさみは放心状態で、バスルームの床にしゃがみ込んだままボーっとしていた。必死の舌掃除も間に合わなかった。まさみは努力が報われなかった虚しさに生気を失っていた。耕平はTシャツとトランクスだけの姿になり、まさみを洗った。髪にこびり付いたザーメン……。まさみの三つ編みを解き、シャワーのお湯を頭から掛けた。胸にも大量の粘液が張り付いている。髪を優しく手で擦り、ヌルヌルに張り付いた白濁液を洗い流し、そしてまさみのバストを汚すザーメンを洗い流そうと身体に手を触れる。
「あんっ……」
 まさみが甘い声を上げる。
「強かった?」
「耕平君……、洗ってくれてるんだね」
 耕平に問いに、虚ろなまさみは弱々しく首を横に振った。何回、犯られたのか、どんな風に嬲られたのか……、指が喰い込んだ跡が紅く残る胸……、身体は手が触れるだけで感じてしまうほど官能に苛まれていた。それほど神経が敏感になっていた。

 まさみにシャワーを浴びせ、全身を綺麗にする耕平。その姿が鏡に映っている。濡れた髪、虚ろな瞳の顔、そしてその下には大きく盛り上がった双乳、未だに尖り出したままの乳頭が鏡越しに見える。まさみの目にも鏡を通して自分の姿が映る。まさみはポツリと呟いた。
「胸……大きくなったよね、わたし……」
「う、……うん」
「お尻も……、丸く柔らかくなった気がする。そう思わない?」
「そうかもしれない……」
 耕平が手を動かす間も、淡々とした会話が続く。
「どんどん嫌らしい身体になってくね、わたし……」
「……」
(なんて声を掛けてやればいいんだろう……)
 言葉に詰まる耕平をよそに、まさみは話を続けた。
「何回も……何回も抱かれて、精液を飲まされて、身体に塗りこまれて……染み込んで……、膣(なか)で出されて……。それでかな?」

 まさみの身体を洗って最中、まさみの背中に触れるものがあった。気にしないよう心がけたが、まさみの身体を隅々までキレイニするには、大きく張り出した胸、張りのあるお尻、柔らかな繊毛に包まれた肉丘を見ないわけにいかない。
(硬くなるな! どうして……、どうして大きくなるんだ!!)
 どんなに平穏を保とうとしても、下半身は反応してしまう。まさみがゆっくり振り返り、背中に当たるものを確認した。
「あっ……、耕平君の、大きくなってる……」
 触れているたのは、大きくなった耕平の一物だった。トランクスは大きくテントを張っている。
「する? わたしと……。もう汚れた身体だもん、耕平君がしたいなら……、耕平君としてもいいよ」
 まさみが視線を鏡に向け直し、呟くように言う。
「バカなこと言うな!」
 耕平は、顔を真っ赤にし語気を強めた。
「そうだよね。わたしたち、親子だもんね……。親子なんだ……」
 まさみは視線を下に落とした。バスルームにシャワーの音だけが響いた。



 永い沈黙が続いた。耕平も何も喋らず、手も動きを止めていた。
「今日ね……何回も抱かれちゃった。へへへ……」
 沈黙に居た堪れなくなったまさみが口を開いた。鏡に、まさみの笑顔が映っている。
「抱かれた?」
「あっ、その……セックス……。犯されたって言った方がいいのかな? でも、抵抗しなかったから、やっぱり『抱かれた』だよね……」
 鏡に映る口元が歪んだ笑顔は、心とは裏腹に無理して作った為だろう。
「何回もしてると……、頭の中が真っ白になって……、いつまで続いてるのか……、何回目なのかさえ……判らなくなっちゃう……」
 作り笑顔で淡々と話し続けるまさみ。しかしその瞳は、涙で潤んでいた。
「何度も、何度も犯されてるとね……、感じちゃいけない、いけないって思ってても……、喘ぎ声なんかが出たりするんだよね。だめっ、だめだって思ってるのに……」
 搾り出すようなまさみの言葉が宙を彷徨う。
「もう、誰のオチン○ンが私の中に入ってるのかさえ判らなくなっちゃう。腰が勝手に動いたりなんかして、自分から腰振ったりなんかしちゃって……。先生の顔を思い浮かべてるのに、それさえ浮かばなくなっちゃう……。バチバチッて火花が散って、誰に犯されてるのかさえ判らないぐらい変な気持ちになるの。私って淫乱なんだよね、きっと……」
 笑顔の影で、キレイに洗われた肩が小刻みに震えている
「汚れちゃったね、わたし……。綺麗なママでいられなくて……、ごめんね……」
「汚れてなんかいないよ」
 耕平は、再びまさみの身体を手で拭い始めた。
「そんなに優しくされたら……わたし……。辛いよ……、最低の母親なのに……」
 シャワーの飛沫に混じって、一滴の光が落ちた。

「先生の奥さん失格だね。……耕平クンのママ失格だね。アイドルと奥さん、母親って欲張りすぎたんだよね……、わたし……」
 鏡に映る自分の姿を見るのさえ辛そうに、まさみは眼を閉じ俯いた。
「こんなに汚れちゃったわたし、誰にも好きになってなんて言えないよね。こんなに汚いわたし、愛される資格無いよね」
「汚くなんて無いよ、まさみは……」
 俯いたまま喋るまさみに、耕平はぶっきら棒に声を掛けた。
「わたし、ちゃんと先生の奥さん、出来てるかな? 耕平君のママ、出来てるかな?」
「ちゃんと出来てるよ。オヤジだってそう思ってるさ」
 振り向き顔を挙げ縋るような瞳を耕平に向けるまさみに、耕平ははっきりと言い放った。
「オヤジだって判ってくれるさ。全部話そう。芸能界は辞めなくちゃいけないかもしれないけど……」
「いっ、イヤッ!! そ、そんなこと、みんなに……、うっ、みんなに知られたら……、この家に住めなくなっちゃうよ、わたしも先生も……、耕平君も……。うっ、ううっ……」
 まさみは、声を詰まらせ頭をガクッと折る。この家庭を守る為、抵抗もせず七人の男たちに犯されてもじっと耐え我慢しているまさみ、家族の前では努めて明るく振舞っているまさみ。それを思うと、耕平の胸が締め付けられた。
「世間の噂なんてすぐ無くなるさ。無くなるまで……、俺とオヤジが守ってみせる」
 耕平は、まさみの濡れた身体をギュッと抱きしめた。

 耕平に胸に顔を埋めたまさみ。ドクッ、ドクッ、ドクッと、少し速い心臓の鼓動が聞こえる。まるでまさみの鼓動と同調するように、同じリズムを刻みながら……。
「こうしてると落ち着く……、どしてだろう」
 耕平の胸に頭を寄り添わせ、まさみは呟いた。ドクッ、ドクッ、ドクッと心に染み込んでくる鼓動の中に、いつまでも身を置いていたかった。
「もうしばらく……こうしてて良い?」
 まさみの言葉に耕平は、まさみの肩をギュッとさらに強く抱き締めた。

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