母はアイドル
木暮香瑠:作

■ 明かされた秘密4

「あっ、ううん……」
 涙に濡れたベッドに横たわるまさみの口から、切ない声が漏れる。無意識に手が、パンティーの上から股間を弄っていた。もう一方の手は、胸に宛がわれ指先を食い込ませている。まさみは知らず知らずの内に、ベッドで一人自分を慰めていた。気が付いた時には、パンティはすっかり濡れ恥丘に貼り付いていた。
「ああんっ、だめえ……。こんなことしてちゃ……だめえ……」
 まさみは手の動きを止めた。しかし手は、胸と股間から離す事が出来ない。一度自ら火を点けた淫欲の炎は、ジリジリをまさみを内部から焦がしている。それを鎮める為の必然の行為……、龍一に嬲られ続けた身体が覚えた、性欲の炎を鎮火させる為の解決策だった。手を離さなくちゃと思っていても、どうしても離すことが出来ない。
(あんっ……、どうすればいいの? どうすれば、わたし……)
 そう思っているうちに、手はパンティの中に忍び込み、縦裂に指を潜り込ませていく。
「あんっ、いいっ……」
 忍び込んだ指が淫芽を探り当てる。ビリビリッと痺れが広がり、指はコリコリと淫核を転がした。

 まさみはもう一方の手も股間に忍ばせ、蜜壷に指を埋め込んだ。
「こんなこと……してちゃいけないのに、止めなくちゃ……」
 形だけの否定……、指の動きは止められない。さっきより激しさが増していく。火のついた官能は、まさみに止めることを許さなかった。溢れる愛液が指に絡みつき、クチュクチュと音を立てる。
「アンッ、はうっ、ああん……。ダメなのに……、こんなこと、しちゃあ……」
 蜜壷に埋め込まれた指をくの字に曲げ、膣壁の襞を弄る。クリ○リスを摘み転がす事も忘れてない。
「ああん……、もっ、もっと……」
 胸をシーツに押し付けながら、浮かした股間を両手で弄る続ける。
「声が漏れちゃう。耕平君に……聞かれちゃうっ!」
 隣室にいるだろう耕平に気付かれてることを想像し、羞恥心を高めていく。
「耕平君に……聞かれちゃう。指が……おマ○コの中を、グリグリと掻き回してるの……。クリ○リスが……コリコリとされてるの……」
 龍一に教えられた恥辱の昂ぶりで一気に登りつめようとする。身体を前後に揺すり、シーツに押し付けられた双乳をグリグリと潰し、両方の手で股間を激しく弄った。
「あん、も、もっと激しいのが……欲しい……。もっと太いの……欲しい……」
 まさみの秘孔は、もっと過激な責めを欲していた。今までの陵辱の記憶が、一人でするHでは許してくれない。まさみの淫欲は、開放されること無く更なる高みを望むだけだった。

 まさみは、必死で自慰に没頭し続けた。ベッドをギシギシと軋ませ、膣に埋めた二本の指を速く動かした。
「はあんっ、あうっ! うううっ!!」
 まさみは軽い絶頂を迎え、ガクンと腰をベッドに落とした。
「はあ、はあ、はあ……」
 大きく息を吸いながらも、まさみの心には大きな穴が開いたままであった。ぽっかりと開いた穴を埋めるには、その絶頂はあまりにも小さなものだった。まさみは物足りなさを覚えたまま、ベッドの上の身体をクネクネと捩っていた。

 まさみはガバッと身を起こし、乱れた着衣を整えた。
「……、行かなくちゃ……」
 深夜にも限らず、まさみは家を後にした。もちろん龍一の所へ行く為だ。まるで夢遊病者のように、はっきりとした目的も無く龍一の家を目指した。龍一の所へ行けば……、まさみは崩れそうな期待を持って出かけた。



 龍一の家に着いたまさみは、玄関のチャイムを押す。右手の指でチャイムを押しながらも、左手はスカートの中に潜り込み股間を弄っている。龍一の家に近付くにつれ、火照りは増していた。そしてパンティを濡らし、染みを大きくしていった。一刻も早く龍一に抱かれることを身体が望んでいた。が、誰も出てくる気配が無い。何度押しただろう……。家の中でなるチャイムだけが、ドアを通してまさみの耳に弱々しく聞こえてくる。
「龍一さん、出て……」
 インターホンに向かって声を掛ける。
「出てよ。誰か出てよ!!」
 誰も応答しないことにイライラが募り、ドアをドンドンと叩きながら大声でインターホンに話しかけた。
「ううっ、どうして……? どうして誰もわたしを……」

(ダメなんだ、奈緒……。俺たち……兄妹なんだ……)
 遠くで鳴るチャイムの音を、龍一はベッドに腰掛けたまま聞いていた。俯いたまま顔を上げようとはしない。どんなに女に酷いことをしても感じなかった罪悪感、今まで持ったことの無い焦燥感が、龍一に重く圧し掛かっていた。血の繋がりが成せる業なのか……、どうすることも出来ない宿命が龍一を苦しめていた。抱く気を起こさせない愛しい娘は、抱いてはいけない愛する妹になっていた。
(奈緒に話せば……判ってもらえるだろうか? 傷つかないだろうか、本当の事を知ってしまったら……。奈緒を苦しめないだろうか?)
 女のことをこれほど心配するなんて……、龍一自身が一番驚いていた。
「あんなに酷いことしておいて、いまさら兄妹だなんて言えねえな……。どんな顔して言えばいいって言うんだ」
 床に吐き捨てるように呟く龍一。膝に着いた手の掌をそっと開いて見る。数時間前まで揉んでいた奈緒の胸の感触が、お尻の柔らかさが、肌の滑らかな感触が残っている様な気がする。龍一はその掌で顔を覆った。
「うおおおおおーーーー!!」
 掌から迫り来る罪悪感を振り払うように、砕け散りそうな魂を押さえ込むように、龍一は雄叫びを上げた。

 しかしそんな想いは、まさみに通じるはずも無い。まさみの声だけが室内のインターホンから響いている。
「恋人だと言ったじゃない!! わたしを満足させてくれるって……言ったじゃない……。どうして? どうして空けてくれないの? 出てきてよ……、龍一さん。ううっ、ううう……」
 まさみの涙声だけが夜の闇に吸い込まれる。

 龍一の部屋の窓には確かに明かりが点いている。窓の下から見上げるまさみの頬に、ポツリと雨粒が落ちてきた。雨がまさみの髪を濡らす、服を濡らしていく。そして、ゆっくりとまさみの熱を剥ぎ取っていく。身体の火照りを醒ますように、雨がまさみを包んでいった。

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