母はアイドル
木暮香瑠:作

■ 枯渇を満たすもの1

 今日は、まさみにとって久しぶりのお休み。ドラマの撮影は順調に進み、予備日として取ってあった日がぽっかりと開いた。先生と耕平は、普段どおりに学校に行っている。誰もいない家で、まさみはやることもなく自分の部屋で、突然出来た休暇を手持ち無沙汰に過ごしている。午前中に掃除洗濯を済ませてしまった。まさみが仕事で大変だと、先生も耕平も自分で出来ることは自分でしている。突然出来た休日に、しなくてはならないことはそうは無かった。

 午後になると、することは何も見つからなかった。まだ何かすることがあったらよかったのに……。今のまさみには、何もすることのないほど辛いことはない。見つからなかったと言うより、違う意識が見つけることを邪魔している。知らず知らずのうちに手が、胸を弄る。股間に手が行く。そして指がパンティの薄い布地の上を、縦裂に沿って動く。
「あんっ、ダメなのに……。こんなことしてちゃ……ダメなの……」
 そう思ってはいても、もう一人のまさみが背後から呟く。
(誰もいないからいいんじゃない? 自分が気持ちよくなることは悪いことじゃないわ……)
 もう一人の自分の囁きに、指が反応する。止めたい気持ちをあざ笑うように亀裂の中に指は潜り込み、淫核を捜し求める。
「あんっ……」
 首を仰け反らせ、指先が淫核に到達した印の甘く短い悲鳴を上げる。
(逝きたいんでしょ? 昨日も逝けなかったでしょ? 時間は十分あるわ。今日は逝けるわ、きっと……)
 満たされない気持ちが、悪魔の囁きとなりまさみの心に染み込んでくる。まさみの自制心を甘く切なく包み込んでしまう。

「あん……、あうっ、うううん……、はあっ、はあん……」
 どのくらい、ベッドの上で自らの裸体の上に指を這わせただろう。自らの穴を指で掻き回しただろう。指を口に咥え、舌を指に巻き付ける。乳首を摘みながら、クリ○リスを指で押しつぶす。二本の指を蜜壷に没し、アヌスを弄った。
「はあん、あん、うううっ……」
 苦しげな喘ぎ声が、部屋を満たしている。
「も、もっと感じたいの……。もっと感じないと……逝けない……」」
 腰を浮かし、激しく指を蜜壷に埋める。指をどんなに動かしても、虚しさと快感が鬩ぎ合うだけだ。膣が締め付けるものは己の指であり、膣を嬲るのは自分の意志で動く指なのだ。
「逝かせて……、私を……逝かせて……。もう、何日も逝ってないの……」
 まさみは、逝けない自分を哀れむように持ち上げた腰を落とした。

 まさみは、とぼとぼとクローゼットに向かって歩を進めた。クローゼットの片隅に置かれた箱、その引き出しの中からある物を取り出した。以前、龍一に買わされたバイブだ。
 二人でアダルトショップに行き、恥ずかしさに顔を真っ赤に染め、『恋人のチ○ポと同じ大きさのバイブをください』と言わされた。店員がニヤニヤと卑猥な笑顔で選ぶバイブを、『もっと長いものを……』『もっと太いものを……』と何度も言わされ選び購入したものだ。
 あの時は、あんなに恐ろしく醜く感じたバイブも、今は愛おしく感じる。その太さも長さも、棹に刻まれたブツブツまでもがまさみを絶頂に導き逝かせてくれた龍一を思い出させた。まさみは愛おしそうに頬に当て、そして根元からカリ首に向かって舐め上げる。カリ首から離れた舌から唾液が糸を引く。まさみは、虚ろな瞳で眺めながら、向きを変え全面に舌を這わせていった。バイブを咥え、口の中で舌を絡めバイブ全体に唾液を塗す。取り出されたバイブは、まるで本物のように唾液でヌラヌラと光っていた。

 ベッドに戻ったまさみは、震える手でバイブを股間に運んだ。亀裂は、それを待っていたかのように濡れそぼっている。バイブのお尻を少し押すと、亀裂はカリ首部をズボッといとも簡単に飲み込んだ。
「はうっ……、はあ……」
 まさみは溜息を吐きながら、さらにバイブのお尻を押していく。蜜壷を押し広げ、膣に溜まった愛蜜をジュブジュブと押し出しながら埋もれていくバイブ。
「はうっ! は、入っていく……。いいの……、これなの!!」
 指よりずっと太く、奥まで届くバイブ。指では味わえない心の隙間を埋め尽くすような充実感に身体を震わせる。

 バイブの棹部がすっかり隠れるまで押し込み、スイッチを入れる。ブーーーンと作動音と共に中で棹が動き出す。振動と共にクネクネと動くバイブが膣壁を刺激していく。
「いいっ! いいの、太いのが……」
 不規則にバイブがまさみの膣壁を弄る。
「届く、届くの! まさみの奥まで……届くの!!」
 子宮口を擽るカリ首にまさみは、背筋を仰け反らせる。

 龍一の怒張を思い出すかのように燃え上がっていく官能が、まさみを大胆にさせる。
「も、もっと感じたいの! 逝きたいの!!」
 耕平が帰ってくるまで、まだまだ時間はある筈だ。今日はきっと逝ける。もう少し刺激があれば……。更なる刺激を求め、まさみはバイブを蜜壷に埋めたままヨロヨロとリビングへ降りていった。そして窓際で、見られるかもしれないという不安の中、時間を忘れオナニーに耽った。レースのカーテンを通して降り注ぐ光に、汗ばんだ肌が怪しく光る。
「あんっ、いいっ! いいの……、ふ、太いのが……、奥まで届くの……。あん、ああん……」
 逝けるかもしれないという期待に、まさみはズボズボと水音を立てバイブを動かす。もっと刺激を浴びたくて、レースのカーテンを開く。
「感じてるの、見られちゃう。逝くところ、見られちゃうの……。先生に隠れて……おチ○ポ咥えてる駄目なわたしを……見て……」
 泡だった愛液を太腿に滴らせながら、双乳を窓ガラスに近づける。窓ガラスに乳頭が触れた瞬間、ひんやりとした感触が胸を痺れさせる。
「はあん……、き、気持ちいい……」
 まさみは、乳肉を潰すように窓に押し付けた。そして、バイブを咥え突き出されたお尻をクネクネと揺らした。

 遠くに見えるマンション、たくさんの窓がある。その一つの窓から、誰かがまさみのオナニーに気付き双眼鏡で見詰めているかもしれない。前の家の二階の窓、カーテンが閉められているが、隙間から窓ガラスに押しつぶされた柔乳が淫らに形を変えるのを覗いているのかもしれない。媚肉を割り突き刺さったバイブを、ブルブルと振動を繰り返すバイブから淫蜜が滴るのを眺めているかもしれない。妄想は、まさみの感受性を高めていく。身体の中をぐるぐると回る官能は、まさみが思う以上に時間が経っていることを気付かせなかった。

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