母はアイドル
木暮香瑠:作

■ 枯渇を満たすもの2

 その頃、耕平は家に向かって帰り道を急いでいた。
「耕平!」
「オヤジ!? 今日は早いだな」
「ああ、秋季大会までは暫くあるし、クラブは個人練習にした。まさみが今日は休みだろ。たまにはゆっくり家族で過ごすのも必要だろ」
 耕平は、ウンッと頷いた。父親がまさみのことを想っているのが嬉しかった。これでまさみも少しが気が和むかな? って期待する。
「オヤジ、急ごうぜ」
 耕平は、父親の前を小走りに急いだ。



「はあ、はあ、はあ……。わたし、逝くのお……。絶対……逝くの……。おチン○ン……、大きなチ○ポ、おマ○コに咥えてるの……。はあ……」
 まさみの願いと甘いと息が渦巻くリビングに夕日が差し込んでくる。官能にピンクに染まる瞳は、日差しの変化を晦ませる。
「見てる? 私が逝くとこ……。見て、はうっ……、あん、おチン○ンが……私の中……掻き回してるところ……」
 バイブを本当の肉根のように締め付け、細い腰を振る。
「太いのが……太いのが好きなの! うっ、あうっ。大きくて長いのが……感じるの……。あん、ああん……」
 夢に魘されるように、虚ろな目を窓の外に向け細い腰を揺さ振っている。片胸を握り潰し、飛び出した乳首を窓ガラスに押し当て、股間に廻されたもう一方の手はバイブを握り締め、それを激しく動かしていた。
「あううっ、あん、……もう、もうすぐ逝けそうなの……、逝きたいの、逝かせて、あん、ああん……」

 カシャッ……、バタン。

 玄関からドアの開き、そして閉まる音が聞こえた。しかしまさみは、それを現実とは捉えられない。
「あんっ? 誰? 来て……、見て、私の逝くところ……。もうすぐ……逝きそうなの……」
 エクスタシーに登りつめようと願うまさみには、玄関の扉が開く音さえ妄想の中の効果音としか聞こえなかった。

 家に充満する淫靡なメスの臭い、そして全裸のまさみの姿に先生の目が大きく見開かれる。胸の肉球をリビングの窓ガラスに押し当て卑猥に変形させ、腰を振るわせている。突き出したお尻の間からは、淫肉を割り突き刺さったバイブの尻尾がぶるぶると震えている。
「!? まっ、まさみ……」
 先生は、驚きに息を飲み込んだ。
「まさみ! 何してるんだ!!」
 耕平の叫び声に、まさみは我に返った。
「えっ!?」
 声の方にゆっくり振り返る。大きく見開かれたまさみの瞳に、先生と耕平の姿が映る。二人の出現は、まさみにとってあまりに突然のことであった。
「せ、先生……」
 やっと発した声でさえ、二人に届くか怪しい小さな声だった。

「いっ、いやああああああぁぁぁ!!」
 まさみの叫び声がリビングに響き渡る。驚きに立ち上がるまさみ。大きな双乳がブルンッと波打つ。その拍子に、股間に埋められていたバイブがストンッと床に落ちた。
「み、見ないで! せ、先生、見ないでえーーー!!」
 まさみは恥ずかしさから、顔を両手で隠した。そして、逃れるように二階へ逃げ上がった。さっきまでまさみがいた床でバイブが、ブーンブーンと儚く音を立てている。耕平と先生の目に、階段を駆け上がるまさみのプリッ、プリッと揺れるお尻が焼き付いた。

 先生にとっては、あまりに突然のまさみの痴態。先生は、ただ呆然と二階に駆け上がるまさみの姿を見詰めることしか出来なかった。
「オヤジ! 後を追わなくていいのかよ!!」
「えっ!?」
 耕平の声に我に返るが、どうしたらいいのか頭を巡らす事さえ出来ない。
「いくら優しい言葉掛けてやっても……、言葉だけじゃ伝わらない事だってあるんだよ! 身体が求めることだってあるんだよ! どうしようもなく身体が求めることだって……あるんだよ!!」
 耕平は呆然と何も出来ない父親を残し、まさみを二階に追った。

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