奪われた記憶
]:作

■ 第二章 百合子の過去2

百合子はそう考えた。しかし、そうもいかない。なぜならこの時の一輝はボクシング部のキャプテンで大会でも何度か優勝していて腕っ節がやたらと強く、体がガッチリとしている。

(う、動けない! この子……まさか……一輝君?)

一輝は学校でも有名で、もちろん担任である百合子も一輝の腕っ節を当然知っている。

「や、やめなさい! こんな事してタダじゃすまないわよ!」

「ほら、大人しくしててくださいよ。俺、先生のオッパイ揉んでみたかったんですよね。うわー! すごく柔らかいですね。」

「あうっ! 一輝君!? やっぱり一輝君だったのね! いい加減にしないと大声だすわよ!」

「いいですよ。音楽室って防音なんですよね?」

「あっ………!」

百合子はすでに蜘蛛の巣に掛かった獲物だ。逃げようがないと知っていても大声を出すしかなかった。

「助けて〜〜〜!」

百合子の悲鳴は放課後の誰も来ない音楽室に響き渡った。一輝の手には、理美と絵里を縛ったあの縄が握られていた。そして跡がつくんじゃないかというぐらい強く縛った。もう片方の手にはあの時のスタンガンが握られていて、理美同様に百合子も気絶させた。



(そっか! あの時もこの縄とスタンガンを使っていたんだ! 理美ちゃんと絵里ちゃんは、あの時の私と同じなんだ。私は自分の教え子になんてことを………!)

百合子は自分の犯した過ちの重大さをこのとき初めて実感した。特殊な椅子に跨がされ恥ずかしながら感じている自分を心の中で叱った。百合子は泣いていた。

(どうしよう。何とかしなきゃ! 理美ちゃんと絵里ちゃんだけでも助けなきゃ!)

一輝をとめることなど出来ない事を十二分に知っている百合子だが、今になってあの時の屈辱、そして一輝を誤った道に進めてしまった自分の教育方針を後悔した。

(百合子先生………! 一輝……いつか、いつか必ず罰を与えてやる!)

理美にはなぜかこの時の百合子の気持ちがわかった。と、同時に一輝への逆襲をいつかしてやると思った。
『この処女を犠牲にしても………。』

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