Midnight Hunter
百合ひろし:作

■ 第一章 屋島学園6

裏サイトの雑談スレ―――、いつもの様に他愛のない世間話に花が咲いていてonirokの書き込みもあったが、何も埋め込まれない日が続いた。
と、そんな中、学園の悪事をバラすといった内容の書き込みがされた。内容は生徒会に権限を与え過ぎた為に専制政治をするのが昔は先生だったのが生徒会に変わっただけだ、的な内容―――。あまりにも凄い内容なので、裏サイトを見た人のレスが珍しく大量に付いた。そしてonirokのレスも付いた。その人も打倒生徒会に賛同した書き込みをしたが、
「さ柿の事を探ってる人は暴露文を逆縦読み」
とメッセージを埋め込んだ。その文に従うと、
「俺ではこれ以上調べられない!今迄男は完璧にやられた。女じゃないと駄目だ」
となる。その後も数日間生徒会を糾弾する側と擁護する側とバトルが続いていたがその中に時々別の意味が埋め込まれた文が投稿され続けた。以前に「ミッドナイトハンターに会った」と書き込みがあったがそれから内容が二転三転しているのでどれが本当のことか解らなかった。兎に角それを探るにはこれを書いている人物に会ってみるしかない。
「貴方に直接会って聞きたい」
葵はそう打ち込んだ―――。すると次の日に、
「日曜の19時に制服で裏のいつも閉まっている校門で」
との返事が来た。日曜までそのスレを見続けていたが、それ以来書き込みはパッタリと止まった。匿名だけでなくonirokの書き込みも無かった。

日曜日の18時50分―――、葵は言われた通りに制服で裏の校門に行き相手を待った。するとそれ程待たずに相手が現れた。その人も制服で来た―――男子生徒だった。とは言っても葵はというかお互い会うのは初めてだった。その男子生徒は3年生だった。お互い簡単に挨拶を交わした後、
「名前を聞く必要はないだろう、兎に角本題だ―――」
と男子生徒が言って話しに入った。とりあえずこの場所はまずいので、場所を変えて近所のファーストフード店にした。そこで男子生徒はハンバーガーをほうばりながら色々集めて来た情報を話していった。
特徴は隠密型で、格闘技術も高い。身長は色んな話を纏めると葵と同じ位か少し低いと予想される事だった。そしてどんな人が狙われるか―――。榊やラグビー部の事件は校内で有名になった(とは言っても彼らが本当にやった事については知られていないがとりあえず事件を起こしたレベルで、という意味)がその他にも何人か捕まっている事、そしてやられているのは殆どが男子という事だった。
「つまり私に探りに行って欲しい……という事ですね?」
「そうだ。その準備するから―――学習室、まあ学習室は幾つもあるから、職員室の真上の学習室だ。明日の夜行って欲しい」
男子生徒はそう言った。その学習室に夜に忍び込んで欲しいとの事だった。葵は、
「はい……、分かりました」
と言った。男子生徒は1つ質問をした。
「運動は得意か?」
葵は、
「はい、運動は好きですし空手部です」
と答えた。男子生徒は、
「じゃ、頼んだよ」
と言い、食べ終わると先に帰って行った。葵は食べ終わっていなかったのでゆっくりと考えながら残りを食べていた。何だかまずいものに首を突っ込んだ気がして来たが、榊に直接「ミッドナイトハンターにやられたの?」なんて聞く訳にも行かないので回りくどいながらもそうやって1つ1つ調べていくしか無いのかな、と思っていた。


次の日―――、葵は部活終了の鐘を聞く前に片付けを終えておいた。そして更衣室に駆け込み制服に着替えて鐘が鳴ると同時に道場から出た。そしていつもはそのまま帰るのだがこの時は校舎に入った。その時、地理教師の小倉典子に会った。典子は、
「あれ……、宮原さん?早く帰らないと生徒会に注意されるよ」
と言った。葵は、
「済みません、ちょっと教室に戻らないと」
と言って典子の前から走り去った。そして、職員室の前を通り過ぎ、上の階に上がり学習室の前に来た。しかし、ドアは開かない。男子生徒の話によると20時過ぎたら開く様に仕掛けて置いたとの事。今調べ物したら見回りに来た生徒会の生徒に見付かってしまうからみんな帰ってからの方がいい、との事だった。その為、20時まで時間を潰す場所が必要だという事で男子生徒はそこまで手を回していてくれていた。
「理事長室の隣の部屋が空き部屋になっているが狭い部屋だ。そこは流石に誰も使わないから、そこに隠れているといい」
と言っていたので、上手くその部屋に隠れる事に成功した。ドアの向こうから見回っている生徒会の人の足音が聞こえて来たりしていたが、男子生徒の言った通りこの部屋は調べもしなかった。
生徒会室―――。いつもの様に見回り終了後の報告会が行われた。理彩はこの日は文化部の方を見回っていて、異常は無かった事を報告した。空手部は副会長が見ていて、異常無しとの報告を。そして外のクラブハウスを使っている部に関しては書記と会計が2人で見回り、同様に異常無しの報告を。更に他の生徒会の生徒も異常なしの報告を上げた。
職員室―――。典子はクラスの担任も部活の顧問もやっていない所謂フリーに近い立場だったので、こんな時間まで残っていたのは久し振りだった。その理由は1つは地理の教師という事で考古学研究部に呼ばれて色々教えていた事、そしてもう1つは同じくフリーなので早く終わり一緒に帰っている美幸が時々仕事に追われて遅くなるがこの日もそうだったという事。
「今日は18時まで掛かりそうだから先帰ってていいよ」
と言っていたが30分程余計に掛かりそうだという事で、その位だったら待っていようと思ったからである。
その時電話が鳴って典子は電話に出た。
美幸は仕事を片付けながら美幸に背中を向けて電話をしている典子を見ていた。ふわっとしたボブカットの髪に白いブラウス越しに薄い水色のブラジャーが透けて見え、そして赤いミニスカートを履いてそこから綺麗な足が出ている―――。美幸はいやらしい妄想に駆られそうになった。典子のブラウスとスカートを脱がして、更にその薄い水色のブラジャーを取って乳首を見てみたいとか、典子がオナニーしたらどんな声を出すのだろうか?とか色々妄想しオナニーをしたくなったが、まさか典子の目の前でするわけにも行かないし待たせる訳にも行かないので我慢して仕事を片付けていた。
典子は随分長電話をしていたが、それが終わるのと美幸が仕事を終わらせるのがほぼ同時になった。
「じゃ、帰ろうか」
美幸が言うと典子は、
「はいっ、宜しくお願いします。先輩」
と笑顔で返事して2人は職員室の明かりを消して帰って行った。


20時―――、葵は男子生徒に言われた通りに空き部屋から出てそのドアを音を立てない様に閉めてなるべく静かに職員室の真上の学習室に向かった。そしてその前に立ち、扉に手を掛けてゆっくりと力を入れると普通に開いた。そして、教卓の所に行って男子生徒が隠しておいたという手掛かりを取る為に教卓に手を入れ探した。しかし、そこには無かった―――いや、ダメ元で上側を調べてみたらそこになにやら貼り付けられているのが分かった―――。
教室の明かりを点けたいところだがそうすると見付かってしまう。男子生徒の話では、気を付けていてもやられる位だから電気を点ける等以ての外だという事だった。その為葵は何とか電気を点けずにそれを手探りで入手する事に成功した―――。それが何か開けて見てみようと思った。小さな物を紙で包んだ感じだった。窓際に行けば月明かりで多少は見える為移動して、包みを開けた。入っていたのはマイクロSDカードだった。
「携帯で使えるかな……?」
葵はポケットから携帯を出してマイクロSDカードを挿して起動した。
「え……?」
遠くから撮られた映像である事はわかった。高感度カメラで更に望遠レンズで撮影されたものの様だった。制服姿の男子生徒である事が辛うじて確認できる物だった。
―――とその時、強烈な殺気に襲われた。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊