Midnight Hunter
百合ひろし:作

■ 第三章 葵10

ピュッ

葵は指笛を鳴らした。するとピエロが来て、
「勝ったか。良くやった。ブランクがあるにせよ、ミッドナイトハンターだった男を倒したんだから―――な」
と言って倒れているビキニパンツ一枚の男を肩に担いで言った。葵は、
「でも―――どうして?」
と聞くと、その後理彩が来て、
「この間から今日まで、何も問題なかったから実践する機会が無かったのよ……。この間の負けから何を学んだか見させてもらったわ」
と言った。葵は、
「い、いえ、必死だったから……。特に何も意識なんて……」
と言った。理彩は口元に笑みを浮かべて、
「合格よ。もう大丈夫ね―――。意識しないで瞬時に作戦立てられるのが重要なのよ」
と言った。ピエロはそれを聞いて、
「しかし、"相変わらず"下着姿の女見ると力出せなくなるな―――彼は」
と面の下で笑い、そして先に引き揚げていった。葵は、
「相変わらず―――?」
と思ったが直ぐにどういう事だったのか理解した。彼はホック―――典子から引き継ぎ、そして7代目の女子に渡した。その時も今のように力が出せなかったのではないかと考えると何か少しおかしかった。


小屋―――。葵が戻るといつもの部屋には先程の男が寝かされていて、横で典子が看病していた。
「う……」
男は気付いて起きた。すると目の前に葵、理彩、典子が居たので気絶してる間に折角落ち着いたのにまた、元気になってしまい、
「うわっ」
と慌てた。典子は、
「平常心だと強いのに相変わらずだね、ブラック」
と笑って言った。勿論典子も今はミッドナイトハンターOGとして小屋に居るので下着姿でいるのは言うまでも無い―――。
ブラックというミッドナイトハンターネーム―――。黒ビキニパンツなのでそう名乗っていたのだが、普通に考えたら下着を表す名前では無いのでルール違反だが、彼は唯一の予定外の男子であり、これからも男子を登用することは無いという事で特別に免除されていた。
彼は大柄で筋肉質な格闘家体型で、実際にキックボクシングやボクシングをやって居たので戦闘能力は歴代最強で実際に歴代の中で高い検挙数をあげている位だった。勿論理彩を含む今までの人が敵と闘って敗れたとかいう事では無く、正体を知られてはならないという鉄の掟を守る為に、自分からは仕掛けずピエロに任せる作戦を立てたり、また、わかっていながら闘いに持ち込まないようにする為に態と見逃すしか無かったという事もあったのである―――。理彩の場合は見逃すなどという事はしなかったが。
しかし、それだけの戦闘能力を持ちながら彼は、典子からの引き継ぎの時は殆んどずっと左手で股間を押さえて前屈みになりながら勃起していたのを見られない様にしていた。勿論典子は彼がそういう状態になっていたのには気付いていたが特に突っ込んだりはしなかった、いや―――出来なかった。彼を男として意識してしまうから。また彼が性欲に任せて典子を襲ったら典子は犯されていたかもしれなかったが、彼はそうしなかった―――。
「ホック、これじゃ拷問だよ」
彼が股間を押さえながら言った。サイドが殆ど紐でしかないビキニパンツははち切れんばかりに完全にテント状態になっていた。葵はその声を聞いて逞しい声だと思った。かつて葵に色々指導してくれた空手部の部長の様にそれほど低くは無いが太くて良く響く声―――。
「だって、これが私達のルールだから」
典子は答えた。しかし、この時は何時もとは違いニコニコではなく、腕を背中で組んで彼から顔を背けて下を向いて恥じらいながら―――何処か残念そうと言えばいいのか、寂しそうと言えばいいのか―――そんな感じだった。彼が典子を襲わなかったのも、今の典子の言い方も、二人共もしかしたらお互いに、と葵は思ったがそれ以上憶測で考えるのはやめることにした。


「アレを渡さないと」
その空気を破るかの様にピエロが理彩に声を掛けた。理彩は葵に、
「そうだったわね。貴方はここで待ってなさい」
と言って、ちらっと典子とブラックを見てからピエロのもとに行き、あるものを受け取った。そして葵の所に戻り、
「これで引き継ぎは終わりよ。その証として受取りなさい」
と言って手を差し出した。その手に持っていた物を見て葵は、
「マスク……私の?」
と言った。理彩は、
「貴方の望み通りのものかしら」
と言った。葵はマスクを両手で受取り、その少し黄色が掛ったマスクを眺めた。カラスマスクの様な個性はなく、由紀子の白いマスクの様な純粋な感じは無いが、必要最小限の模様が描かれているマスクを見つめ、
「あ、ありがとうございます」
と言ってカラスマスクを外した。理彩はその葵の表情を見て、
「いい表情ね」
と言った。葵は少し、ブラックと典子に視線をやった。典子は嬉しそうに笑顔を返し、ブラックは葵にマスク越しながら見惚れていた感じだった―――そして両手で股間を覆った。
「ホック、うっ。……見るな……よ」
と小声で言った。典子はクスッと笑い、
「幾等クロッチが可愛いからって」
と小声で返した。とうとう我慢できなくなってイッてしまった様だった。彼は両手でパンツ越しにチ○ポを握って隠していたがテント以上になっていて傍まで来ればもうパンツが浮き上がって横からチ○ポが覗ける位になっていたので当然隠し切れる筈がなく、腰をビクビク震わせがら大量に射精していた。その間、典子は気を利かせて葵からはあまり見えないように前に立っていた。

葵はそんな2人の様子が気になり、恥かしそうにチラチラと見た後マスクをゆっくりと着けた。そして、
「ありがとうございます、これから頑張ります」
と言い、鏡の前に移動して映る自分の姿を眺めた。刺繍の地に赤いリボンが付いた可愛いピンクのブラジャーと同じく刺繍の地に赤いリボンが付いたサイドは刺繍は無く、幅が細くやや布も薄目の可愛いピンクのフルバックのパンティ姿には微妙に合わない色合わせだったが、後ろで縛った後上に上げている髪形にはとても合ってると思った。
「これが……私?ミッドナイトハンターの―――」
葵は呟き、人指し指でパンティを直した。自分であるが自分でない様な、勿論自分である事には間違いないのだが何処か違う世界にいる自分がクイッとパンティを直す姿を見てマスク越しに赤面した。
「ふふっ、似合ってるわよ」
理彩が言うと葵は小屋の入り口に出てからマスクで覆われた顔を向け、
「ありがとうございます。―――後半の見回り、行って来ます」
と力強く言って気合を入れ、マスクを触り、その後ブラジャーとパンティを直してから小屋から出た―――。自分のマスクを着けた葵はこれからは自分がピエロと協力して夜の学園を守る第11代目のミッドナイトハンターである―――。
「実はもっとやっていたかった?リボン―――」
典子が聞いた。理彩はマスクを外してから、赤い艶のあるパンティに指を通して直した。彼女の癖なのか、それとも穿いてるパンティを触るのが好きなのか、パンティを直しながら、
「いいえ。充分に"楽しんだ"わ―――。私はあと半年で卒業ですし、これからはクロッチが楽しむべきよ。勿論簡単ではないけれど。そうでしょ?ホック」
と言った。典子もサングラスを外して、
「そうだね、まあ私は―――サポートするけどさ。ブラック、ストラップやリボンの時みたいにね。下着姿になりたくなったら遊びにおいでよ」
と可愛らしい笑顔を見せた―――。

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