右手の中指
田蛇bTack:作

■ 6

≪第5話≫

「ねぇ、どうしてシナの爪って中指だけ短いの?」
マキが訪ねてきた。マキとは結局同じ高校にあがって、クラスも一緒なのだ。

「え?」
それは、愛液が溶かしているからなのだが、そんなの言えるわけがない。

「あー…ふ、深爪しちゃってさ。」
あわててごまかしたが、再びマキが中指について聞いてくることはなかった。

しかし学校の問題といえば、タケシである。私が逃げ出した一件以来、タケシやしょげるかと思いきや、恨めしい目つきでこちらを見てくるようになっていたのだ。

決して話しかけてこない。総務の仕事は普段通りやる。けれどふとした瞬間に殺気を感じるのだ。タケシは一体何を考えているのだろう。背も高く、そこそこかっこいい。女子にもモテているだろう。けれどそこに初めて私というタケシの意志に反したオンナがでてきた。
どうせそれは今まで苦労せずに何でも与えられていた子供が、初めて与えられないという不快感を覚えたような感情だろう。くだらない。

けれどタケシの感情は、私の予想していない方向に行っていた。私はまだこの男の本当の怖さを知っていなかった。

「シナ、5限、化学だろ? 実験の準備は総務が担当することになったから昼休み弁当食う前に化学室に来いよ。」
タケシの声がいつもより気味悪いぐらい優しい。なんだか嫌な予感がしたが、こんな時にかぎってアソコがきゅーんと切ない声をあげる。

「いいよ。わかった」
私は即答していた。

「タケシ君? もういるの?」
化学室は遮光カーテンに覆われてしかも電気はついていなかったため、真っ暗だった。

「タケ……ヴッ……」
ガターン!! 何者かにねじふせられ、床に頭が押し付けられたとおもったら、
――ガッチャン。
ドアが閉まり、闇に閉じ込められた。

私はこの暗闇にいち早く目を慣らし、何か手掛かりをつかもうとしたが、目が慣れる前に、化学室の電気がパチパチとつけられた。

「実験タイムでぇーっす!」
タケシとつるんでいる隣のクラスの悪ガキが机の上に乗りながらおどけた声で言った。

ガラガラガラガラ…
どこから持ってきたのだろう。丁度中学校にあるような給食ワゴンにビーカー、フラスコ、アルコールランプ、薬品が乗ったものをタケシが準備室から押して入ってきた。

とっさに時計を見た。12時40分。5限は1時20分に開始、教室移動可能が10分前だから……
私はこんなときでもすばやく計算してしまう。
私が凌辱されるであろう時間は、30分。きっと恐ろしく長い時間となることだろう…。

私の乳房とおなかと股間がさらされるのに時間は要さなかった。私は別に抵抗しなかった。してもどうにもならないことぐらいわかっていた。それに毎晩のように右手に犯されているので、妙に冷静になれてしまっていたのだ。

…大丈夫、大丈夫、きっと生きて帰れる。
…だからお願い、跡を残さないで…。

眼隠しがかけられた。もうどこに何をされるのかわからない。その時初めて全身が恐怖に震えだした。

「大丈夫。ってか眼隠ししたほうがオンナは感じやすくなるんだろ? よかったじゃん」

私の右腕と右足を抑える男が楽しそうに囁いた。
感じるも何も…それは信頼できる人とエッチするときだけだよ。今、私は怖くてしょうがないんだから…!!
私は悔しさのあまり、唇を強く噛んだ。やっとマ●コも冷静になったらしい。熱くなる感覚は治まってくれた。

ギュッ!!
左の乳頭が何かに挟まれた。痛さに顔がゆがむ。けれど声があがらない。
いつものオナニーで声を抑える癖をつけてしまったせいだろうか。
しかしこの挟んでいるものは何だろう。ペンチ…? ペンチだったら潰される…!! どうしよう!!

やがて膣口に指っぽいのが入ったのがわかった。なぜなら切っていない爪が膣壁をこすって痛いから…。
――この…童貞どもめ…。爪ぐらい切っておけよ!!!!
頭が空回りしてわけのわからないことを心の中だけで叫んでいた。

「濡れないぜ?」
指の主だろうか。残念そうに言う。
――当たり前だ。所詮童貞テクニッ……

シュワーーーー…
その瞬間何かが股間にかかった。なにこれ? 冷たい、てか痛い…え?
ブチブチとした妙な感覚のあと、それは膣に侵入してきた。

「おまえ、ばかだなーそれは避妊手段だろ? あ、でも少しは滑りがよくなった」
――あ、コーラね。なるほど。
コーラが避妊の手段になると信じられているのは昔の話ではないらしい。
まったく、どこの情報だろう。中学で習わなかったっけ? コーラは避妊手段にまったくなりませんよ、って。

「きもちいいか? …黙ってないで答えろよ。」
「…べつに。」
思わず本音がでてしまった。「しまった」と思ったがもう遅い。男たちはいやにはりきりだした。

シュッ…
…マッチの擦る音。アルコールのつんとしたイヤな匂い…きっとアルコールランプがともされたのだろう。私は何かを焼かれるのだろうか。

恐怖で体が一瞬強張ったが、もうどうにもならない。諦めた。
サヨナラ、私。サヨナラ、右手に犯される日々。サヨナラ、サヨナラ…。

「なんだよコイツ、おとなしいな」
私の想いも知らず間抜けな男がつぶやく。

「いいじゃん、やっちゃえ」
その声を合図に、焦げくさい匂いがした。

チリチリ…チリチリ…
決して痛くはない。だけどなにかおかしい。

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