悪魔のメール
木暮香瑠:作
■ 新たな要求1
美樹は、結局ノーパンにはならなかった。しかし、何事も起こることなく、その日は過ぎた。その日から、不安を抱いたままの数日が続いた。
次のIT授業の日がきた。パソコンルームは、先日よりも騒がしくなっていた。また、いたずらメールが届いていたのだ。クラス中のパソコンに届いたメールには、新たな画像が追加されていた。まだ、新たな写真があることを匂わせている。一枚は、パンティーを膝まで下げ、今まさにしゃがみ込もうとするところを捕らえたものだ。胸から下が写っていて、スカートの奥に、陰になった秘部が写っている。暗くて鮮明ではないが、そこに亀裂が隠れていることを伺わせる。男子たちの想像力を掻きたてるには十分なものだった。もう一枚の画像は、前回と同じものだが、今回は美樹の顎先までが写っていた。ローアングルで捕らえられた画像は、首元から背中に流れる黒髪まで写し出されている。
「髪の長い娘か? これでだいぶ絞られるな」
「女子の中で髪の長い娘ってなると、半分くらいに絞れますね」
「でも、うちのクラスの娘なのかな? こんな危険を冒すとも思えないし……」
「ああ、でも、こいつ、相当の変態だな。こんな写真を配って喜んでるんだぜ」
「世の中、変わった趣味の人間いますからね。露出狂かも知れませんね。自分の恥ずかしい写真を見られて、みんなが騒ぐのを影で見て喜んでるのかも……」
普段はまじめな男子生徒や女子生徒まで会話に入っている。推理ごっこを楽しむように、クラス中がメールの話題で持ちきりになっていた。写真のしゃがんだ格好は、体形を判り難くしている。背中に流れた髪も、前から写した写真では、どれくらいの長さかは判らない。ただ、髪の長い娘であることだけは明確だった。
「先生には、メールが来たこと、内緒だぞ。ばれると、また、削除させられちゃうからな」
(ばれちゃうわ。これ以上の写真を見られたら……)
美樹は、急いで自分宛てのメールをチェックした。
忠告!
この前は、我々の指示を無視したな。
こんど、命令を無視すると本当に顔付き写真を公開するぞ。
我々は怒っている。
今回の命令は、午後の体育の授業のとき、下着を着けずに
授業を受けろ。裸に直接、体操着とブルマを着ろ!
身に付けていいのは、体操着とブルマだけだ。
いいな、このことを誰かに話したり、指示に従わない場合は
お前の顔の判る画像を、学校の全員に配る。
インターネットで、全世界の誰もが見れるように
投稿サイトに配ってやる。写真は他にも沢山あるからな。
俺たちは本気だ。
美樹の顔から、血の気が引いていく。
(ただのいたずらじゃないんだ。本当に写真を配られちゃう)
メールを削除するが、文面が頭の中を巡っている。
こんど、命令を無視すると本当に写真を公開するぞ。
我々は怒っている。
……………
俺たちは本気だ。
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