売られた少女
横尾茂明:作

■ ケモノたちの宴1

 黒塀町の家から中学までは以前の家からすると倍は遠い。
学区は隣町だから本来なら北中に編入換えをしないといけないのだが・・・。

 美由紀はまさか囲い者になって隣町に引っ越したなんて言える筈もなく、学校には以前と同様に叔母さんの家から通っていることにした。

 政夫からの月々のお手当はもう3回貰った、使い道もなく貯まる一方である。
先週美由紀は思い切って自転車を買った、美由紀には考えられない贅沢な行為であったが・・いざ行使してみると暗く荒んだ心が氷解して行くのが感じられた。

 朝の通学距離が気重になってたおり、自転車通学は美由紀にはすごい魅力である。
しかし中学から3km以上の通学距離者にしか許されないため、美由紀は近鉄桑名駅までの2kmの道のりを自転車で走り、駐輪場に停めて学校に通うことにした。

 美由紀は歩きながら昨日の出来事を反芻してみる・・。

 夕方・・学校の帰り道、桑名駅の駐輪場でクラスの光男君に会う・・。
自分を待ち伏せしてた様子・・ニヤニヤ笑いながら私に近づく・・。
私は内緒で自転車通学してたことを見つけられたと直感し暗い気持ちになる。

 光男君は私の歩く速度に歩調を合わせ・・私の顔を覗き込み・・そして私の肩を乱暴に押しやった。

「美由紀・・お前・・すごい女なんだなー、ククク」

「なんのこと?」

「またーしばらくれてー」
「お前の叔母さんが俺のお袋に喋ったっと言えば何のことか分かるだろー」

「・・・・・・・・・」

 私は背筋の凍る想いにその場に佇んで光男を見つめた。

 光男は去年頃から私に何度もモーションをかけてきている。

 学校の何人もの男子生徒が私に想いを寄せていることは感じていた・・
しかし今の私の状況は恋とは無縁の状況と思い、全て切り捨ててきている。

「美由紀・・なんとか言ってみろや、フン綺麗な顔してやることはスゲーじゃないか!」

「・・・・・・・・」

「おまえ・・今してることバレたらもう学校には来れんわなー」

 私は光男の言葉に脚が震え、顔が上げられなくなってしまった。

(あんな破廉恥なこと・・皆に知れたら・・私・・生きて行けない)

 このとき・・政夫さんの股間に顔を埋める自分の姿を想像していた・・。

「ククク・・中学生の愛人かよー・・信じれんなー」
「でっ・・どうよ、若旦那は?・・毎晩気持ちいいことしてくれるのかい」

 瞬間・・目から涙が溢れた・・止めどなく大粒の涙が頬をつたう。
悔しい思いと、知られたという羞恥・・その屈辱の中、泣きじゃくりたい思いに必死に耐えた。

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