瑞希と悠希の放課後
木暮香瑠:作

■ 姉は妹のために肌を晒す4

 瑞希が脱ぐという噂は、あっと言う間に男子生徒に間に広がった。休み時間ごとに噂の輪は広がっていく。
「嘘だろ? 今日のショーは瑞希先生? そんなこと無いよな……」
 一人の生徒が期待も込めて噂すると、他の男子生徒も噂の輪に加わった。
「本当らしいぜ。何せ、今日の入場料は一万円だってよ。一万円ってことは、相当の女が出演するってことだろ。一万円出してもいい女って言ったら、瑞希先生か悠希ちゃんくらいしかいないぜ」
 今日のショーの金額設定を聞き入れた男子生徒が自信たっぷりに言う。
「悠希ちゃんは、ミニじゃなかったもんな」
「じゃあ、やっぱり瑞希先生か……。これは見なきゃ!」
 男子生徒たちは、半信半疑ながらも目を輝かせ噂話に興じた。
「えぇーー! 俺、今日金持ってねえよ。金、貸してくんねえか?」
「やだよ。貸すほど余裕ねえよ」
 一万円お金を持っていない生徒は、表情に落胆の色を隠せない。小遣いに余裕のあるものは、ウキウキと瞳を輝かせた。

 昼休みになり教室から出た悠希は、授業を終え職員室に戻る瑞希を目にした。職員棟に向かう渡り廊下を、頭を俯かせた瑞希が太腿も露に急ぎ足で歩いていた。教師でもある姉の姿を見た悠希の瞳が、大きく見開かされる。
(おねえちゃん……、どうしたの? あんなミニスカート、持ってなかった筈……)
 悠希の目には、瑞希の頬が赤く染まっているように思えた。教師を神聖な職業と思っている姉が、あのようなファッションを学園内でするはずがない。普段から膝丈のスカート姿しか見たことの無い姉のミニスカート姿に、悠希は驚きを隠せなかった。悠希は、嫌な胸騒ぎがした。再び渡り廊下に悠希が視線を向けた時には、姉の姿はすでにそこには無かった。

 今日最後の授業になった。六時限は、高田裕司のいるスポーツ特化コースのクラスだ。ほとんどが男子生徒のクラスでの授業だ。教室の中は、噂話で熱気を帯びていた。瑞希の生脚を拝める期待と、二時間後に行なわれる校内秘密ストリップショーに瑞希が出演するのかを確かめる為だ。

 朝から男たちの好奇の視線を浴びていた瑞希は、疲れた精神に鞭を入れ、今日最後の授業に臨んだ。教室の扉を開けた瞬間、瑞希を待ちかねていた男子生徒たちの熱い視線が一斉に肢体に纏わりついてくる。
「いやっ、……」
 瑞希は、一歩教室に脚を入れた途端、肢体を強張らせた。一際鋭い視線を投げかけている生徒がいる。それは、教室の一番後ろから突き刺さるような視線を投げかけている高田裕司だった。

 今日一日、授業のたび浴びせられる視線に晒されてきた。緊張と恥辱に苛まれた神経は、今にも切れそうなくらいに張り詰めていた。一瞬の眩暈が瑞希を襲う。このまま倒れ、気絶できればどれほど幸せだろう。この授業が終われば、もっと恥ずかしい目に遭わなければいけないのだ。

 その時、眩暈を我慢するように瞳を閉じ立ち竦む瑞希に声が掛けられた。
「先生、早く授業を始めてくれよ」
 教室の最後尾からの裕司の声だ。いつもと変わらぬ低い声だった。自分はこんなに緊張しているのに、冷静でいられる裕司に瑞希は恐怖さえ感じる。
「そっ、そうね……。授業……、始めなくちゃね……」
 緊張を悟られまいと、上ずる声を必死で押さえ込み平静を装う。瑞希は、躊躇いがちに教壇に上がった。

 教壇は、机が横に避けられ生徒たちの視線を遮るものは無かった。きっと裕司の差金だろう。それを察した瑞希は、机を元に戻すようには言わなかった。言えば、悠希の恥ずかしい写真をばら撒かれる恐れがある。

 ギラギラと輝く淫猥な数十の瞳が、瑞希に向けられている。大きく開いたブラウスの胸元に、素肌を晒した太腿にと視線が浴びせられる。正面から、一斉に全員の視線を受けるのは辛い。熱の篭った視線に、瑞希の顔が火照る。瑞希は、教壇を降り生徒の間を歩くことにした。そうすれば、全員の視線を一度に浴びることはないだろうと思ったのだ。

 瑞希は教科書を胸元の前で隠すように持ち、机の間を歩きながら授業を進めた。

 一番後ろまで行き、裕司の横を通り過ぎる時、お尻をスッと撫でられた。
「ひっ!!」
 瑞希は、漏れそうになる悲鳴を飲み込んだ。裕司を睨みつけると、裕司は笑みを浮かべながら机を指差す。そこには、悠希の恥ずかしい写真とメモが置かれていた。

『胸を隠すな! 教壇で授業をしろ。脚が良く見えるようにな』

(ああ、ここでも私を辱めるつもりなのね……。悠希の為だもの……、逆らえないのね)
 瑞希がメモを読み終わるのを見計らって、裕司は写真とメモを机の中にしまった。瑞希は、恥辱に頬を染め教壇に戻りしかなかった。

 俯きながら授業をする瑞希に、熱い視線が注がれる。瑞希が恥辱の表情を浮かべれば浮かべるほど、生徒たちは瑞希が校内秘密ストリップに出演することを確信していった。そして、淫猥な妄想を駆り立てた。放課後に行なわれるショーを妄想しながら、瑞希の肢体に視線を這わせる。大きく開いたブラウスの胸元から覗く胸の深い谷間に、チラチラと見えるブラジャーのレースに、ミニスカートからスラリと伸びた生脚に視線を浴びせかけた。

 瑞希は、身体が熱くなってくるのを感じていた。生徒たちの視線の熱を吸収したかのように、どんどん熱を帯びてくる。
(負けちゃいけない! 放課後は、もっと恥ずかしい目に遭うんだから……)
 時間の過ぎるのさえ判らない。永遠に続くのではないかと思われる視姦の中、恥辱授業は進んでいった。

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