瑞希と悠希の放課後
木暮香瑠:作

■ 姉は妹のために肌を晒す5

 放課後、瑞希は指定された時間に少し遅れてラグビー部の部室を訪れた。ドアの前で、高田裕司が待っていた。
「来ないかと思ったぜ。みんな、お待ちかねだぜ」
「秘密は守ってくれるのね? 誰にもばれないんでしょうね」
 これ以上、辱めに遭いたくなかった。瑞希は、不安な気持ちを訊ねた。
「ああ、誰が出演したかは秘密にすることになってる。出演する理由も詮索しない。それがルールなんだ。秘密をばらしたヤツは、二度と誘われないからみんな秘密は守るぜ。また来たいってヤツばかりだから……」
 裕司は、自信有り気に答える。
「今までに何人も出演してるが、誰が出演したかばれていないだろ? 出演するって噂にはなっても、出演したってばれたことは無いぜ。みんな、次も見たいからさ。もしばれたら、二度と行なえなくなるから。秘密をばらしたやつがいたら、全員からリンチに合わされるぜ」
 確かに、教師たちの間で校内秘密ストリップショーが話題になったことは無い。自分が出演することになって初めて、ミニスカートの秘密を知ったし男子生徒たちの視線が出演者を値踏みするものだと気付いた。
 瑞希は出演する決断が付いたと、小さく頷いた。

 裕司がドアを開くと、中では圧し掛かるような重い熱気が立ち込めていた。出演者に対する期待と興奮が渦巻いている。
「さあ、入れよ」
 裕司に背中を押され、瑞希は俯いたまま足を踏み入れた。
「ひゅーーー、やっぱり瑞希先生だ」
「やったあーーー、一万円出した甲斐があったぜ」
 部室の中では、男子生徒たちの歓喜の声が上がる。
「いやっ!! こんなに沢山いるの?」
 瑞希は、部室内の生徒の多さに驚きを隠せなかった。部員の多いラグビー部は、一番大きな部室を宛がわれていた。それでも部室の中は、五十人近い男子生徒で芋を洗うような状態だった。それも、瑞希が授業を受け持っている三年生の男子生徒達が大挙して押し掛けていた。

 戸惑う瑞希に、裕司は語りかけた。
「先生の人気の証さ。今日のミニスカートのいやらしさに誘われてこんなに集まったぜ」
「そ、そんな……」
 瑞希の恥辱は高まる一方だった。

 部屋の中には、机四つを合わせ二畳ほどのステージが作られていた。
(あの上で、脱がなくちゃいけないんだわ。晒し者になるんだわ……)
 瑞希は、両の掌を重ね胸の上に置いた。そして、瞳を硬く閉じ紅く染まった顔を俯かせる。
「早く始めろよ! 焦らしはもういいよ」
 一人の生徒が、じれったそうに言う。瑞希は振り返り、裕司の目を見詰めたた。
「ど、どうしても……やらなくちゃいけないの?」
 小さな声で訊ねた。
「それは先生の勝手さ。……でも、やらなかったらどうなるかは、先生が一番知ってんじゃないのか?」
 裕司の返事は、そっけないものだった。代わりはいるんだからと言いたげに言い放った。瑞希の脳裏に、沈み込んだ悠希の顔が浮かぶ。
(やらなくちゃ……、悠希のためだもの……。悠希を助けられるのは……私だけ……)
 今は唯、姉として悠希を救えるのは自分だけという責任感だけが支えになっていた。

 机に手を掛ける瑞希を、裕司はお尻に手を沿え押し上げた。緊張している瑞希は、お尻を押されることにも気付かずステージの上に登った。ガタガタと震える膝を伸ばし、ステージの上で立ち上がった。
「いやっ、そんな目で見ないで……」
 男子たちは、授業中でも見せることの無い真剣な視線を瑞希に向けている。瑞希の仕草の一つも見逃すまいと見詰めている。

 机の上に上がった瑞希の肢体は、見上げることによってよりいっそうすらりと伸びた脚が強調される。細すぎることも無く適度に脂の乗った脚が、大人の女の色香を漂わせる。そして、その上には教師が穿くには短すぎるミニスカートは股間を覆っている。
「パンツ! 見えた!!」
 前列から見上げている生徒が、興奮に上ずった声を上げた。
「いやっ!!」
 瑞希はとっさに、ミニスカートと太腿で出来た三角地帯を手で覆い隠した。
「なに恥ずかしがってんだよ。これから全部脱ぐんだぜ。パンツ見られたぐらいで恥ずかしがってどうするんだい?」
 裕司が冷たく言い放つ。
「でも……、恥ずかしい……」
 瑞希は、朱に染まった顔を俯かせる。手でブラウスの胸元と股間を隠したまま、細い肩を振るわせた。

「まずは自己紹介からだ。名前とサイズを言ってから脱ぐんだ」
 部屋に入る前に、裕司から脱ぐ前に口上を述べるように言われていた。瑞希は唇を震わせながら、教えられた台詞を口にする。
「く、黒川瑞希です。渋山学園の教師・・・三年生を担任しています」
 みんなが知っていることを、あえて口にさせられる。告げた相手は、明日からも顔を合わせ授業をしなければならない生徒達なのだ。そのことが、よりいっそう瑞希の羞恥心を煽る。
「サイズは……、上から89・Gカップ、58、84……」
 Gカップと聞き、ヒューヒューと冷やかしの口笛が飛ぶ。瑞希は、打ち合わせどうりの台詞を続けた。
「……です。み、瑞希の身体、い、いえっ、は、はだか……ご覧になってください」
 震える声で、やっと言い終える。

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