瑞希と悠希の放課後
木暮香瑠:作

■ 濡れた肢体は凌辱を……1

「うっ、ううん……」
 瑞希が目を覚ますと、観客たちはすでに、部屋には居なかった。そして、瑞希は全裸のまま裕司に抱きかかえられていた。驚いたことに、裕司も全裸だった。
「いやっ、服を着て! 高田君! どうして裸なの?」
 抱きかかえられたまま瑞希は、窮屈に後ろ手に手錠を掛けられたままの身を捩った。
「俺の服が汚れるだろう」
 裕司の言葉を聞いて、瑞希は自分の身体がヌルヌルの液体まみれであることに気付いた。生臭い臭いが鼻を突く。裕司に悠希の事情を聞こうと、始めてこの部室に入った時に気付いた臭いそのものだった。
「いやっ、どうして? どうしてこんなに……?」
 肌に纏わり付いているザーメンに驚きを隠せない瑞希に、裕司は呆れたように言う。
「なに言ってやがる。自分から顔を向けて浴びてたぜ……、嬉しそうに……」
「うっ、嘘よ、そんなこと……」
 瑞希が顔を強張らせると、乾きかけたザーメンがバリバリと音を立てた。

 がっしりとした巨体が、軽々と瑞希を抱きかかえ部室を出ようとする。
「ど、どこ行くの? 外はいや!!」
「シャワールームだよ。洗い流さないと臭くて堪らねえ!」
 裕司は、瑞希を覗きこむ顔を笑顔にし言う。
「ひ、酷い……、そんな言い方……」
 瑞希は、紅色に昂揚した顔を横に背けた。



 その頃、悠希は、真莉亜たちに捉まっていた。真莉亜とその取り巻き三人組、潮崎澪、新谷美帆、瀬川麻貴の四人が悠希を取り囲んでいた。下校時間はとうに過ぎており、校内は静まり返っている。生徒会の引継ぎのための打ち合わせが長引き、遅くなったところを真莉亜たちに引き止められた。遅くまで練習に明け暮れている運動部員達も、家路を急ぎ校門付近に数人いるだけだ。校内には、ほとんど人影は見られなかった。

 美帆たちは、悠希にお金をせびっていた。お金は持っていないという悠希に、美帆たちが話を持ちかける。
「ねえ、知ってる? 校内ストリップショー……。噂は聞いたことあるでしょ?」
「えっ?」
 美帆の話に、悠希は知らないとばかりに驚きの顔を作る。噂は聞いたことがある。しかし、信じてるわけではなかった。Hな話題が好きな男子たちの願望が篭った作り話だと思っていた。
「かなりのお金、稼げるみたいよ。生徒会長さんなら、みんな見に来るんじゃない?」
 ニヤニヤと薄笑いを浮かべながら美帆たちは言う。
「あっ、そうそう。ミニスカートが出演の合図なんだって。突然、ミニスカートを穿いた子が出演するって噂よ」
 潮崎澪の言葉に、悠希は動揺した。悠希は、姉が今日、ミニスカートを穿いていたことを思い出したのだ。
(えっ? うそよ……、お姉さんに限ってそんなこと……)
 悠希は、軽々しく姉のミニスカート姿を思い出したことを恥じた。ストリップショーの噂だって、事実かどうかは定かでない。しかし、不安を拭い去ることは出来なかった。
「今日、開かれてるみたいだから見に行かない? もう終わってるかもしれないけど……」
 悠希には、真莉亜たちの誘いを断る勇気がなかった。ミニスカートの姉の姿が頭から離れない。美帆たちの言葉が気になって、確かめずにはいられなかった。



 部室棟に入ると体育部の部室がずらりと並んでいる。ほとんどの部室の明かりは消えているが、ラグビー部だけが窓から光が漏れている。また、一番奥のシャワールームの明かりが点いていた。シャワールームのドアの前に人影があった。
「お、お姉ちゃん!!」
 悠希が見たのは、裸の女性を抱きかかえシャワールームに消えていく裸の裕司の後姿だった。遠めから見ても、姉である瑞希を見間違うわけは無かった。
 悠希には、姉がストリップショーに出演しなければならない理由は思い当たらなかった。しいて考えるならば、それは自分が原因ではないかということだ。

「裕司が抱えてたの、瑞希先生?」
「そうね、変な臭いするよね。精子よね、この臭い……」
「あらら……、瑞希先生の身体、変に光ってなかった? あれ、ザーメンなの? 瑞希先生の身体に掛かってたの」
 美帆たち三人の興味本位の会話も、悠希には耳に入らなかった。悠希たち五人の視線にも気付かずシャワールームに消えていく瑞希と裕司を、悠希は呆然と見詰めていた。

「まずい時に来ちゃったみたいね。瑞希先生と高田君、これから良いとこみたいだし……」
「そうだね、邪魔しちゃマズイから帰ろうか」
 全裸の二人がシャワールームに消えていくのを見た美帆たちは、気まずそうに部室棟を後にする。

 悠希は、驚きに無言のまま全裸の二人を見詰めていた。全裸で裕司に抱きかかえられた姉を見たこともそうだが、もう一つ目を引き付けるものがあった。それは、瑞希のお尻の下に垣間見える裕司の男のシンボルだ。遠めから見てもその大きさが尋常なものではないと判った。大人の男性の性器を見るのは初めてである。悠希は愕然としていた。
(あんなに大きいの!? お姉ちゃん、これから……、大きすぎるわ……)
 二人を止めなくてはと思うが声が出ない。それほどの衝撃が悠希を襲っていた。女子高生の好奇心が、頭の中で危うい妄想を巡らせた。
 悠希と同じく、真莉亜も鋭い視線をシャワールームに消えていく二人に投げかけていた。その瞳の奥には、嫉妬の炎が燃えていた。真莉亜は、「ふんっ!」と不機嫌な顔を翻し部室棟を出て行った。


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