瑞希と悠希の放課後
木暮香瑠:作

■ 白昼の恥辱2

 瑞希は、昨日の恥辱を思い出していた。日常では味わうことの無い恥辱に苛まれ、平常心を失った中での官能だった。普段のセックスでは感じることも出来ないほどの激しいアクメを迎えた。恋人の飯山隆とのセックスで、今まで感じていた絶頂が子供騙しに思えるほどのオルガスムスを味わってしまった。瑞希は、そんな自分を恥じていた。

 裕司と瑞希は、人目につかないよう庭の奥に場所を移した。そこには、トイレがある。共学になったときにリニューアルされた校舎と違い、それ以前から存在する古い建物だ。大きな樹木の影になるトイレは、存在は知っていてもその古いトイレを使う人の少ない。トイレの入口の前で瑞希は、俯き裕司に懇願した。
「昨日のことは、誰にも言わないで。秘密にしておいて……」
 瑞希の顔はすでに真っ赤である。昨日の自分の痴態を思い出し恥じているのだろう。
「判るでしょう? 恥ずかしいの、生徒の君と……したことが……」
 レイプに近い凌辱であっても、感じてしまったことも事実なのだ。瑞希の言葉には、感じたことを認める響きが含まれていた。

 裕司は、俯き地面を見詰める瑞希の顎を掴み正面を向かせた。
「ちゃんと言えよ、何をしたのか。はっきり言わないと判らないぜ、バカの俺には……。オマ○コして感じましたってよ」
 教師の自分が生徒に叱られている。瑞希は唇を振るわせた。『ちゃんとした言葉で喋りなさい。自分の思いが伝わる言葉で語りなさい』、いつも瑞希が生徒に言っている教えである。裕司はその言葉を使って瑞希を責めた。
「いやっ! い、言わないで……。そんな言い方……。ね? 誰にも言わないわよね、昨日のことは……」
 白昼の中、隠語を聞かされ瑞希は頬を染めた。恥辱をあからさまにされ、弱気になる。教師の威厳も失った、誰にも知られたくない秘密を必死で守る一人の少女でしかなかった。

「ふふっ、昨日のことだけ秘密にすればいいのかい?」
「えっ? 昨日のことだけ……?」
 瑞希は、後退るが太い幹が行く手を阻む。裕司は、手を大木に寄りかからせた。
「そう、今日のことは喋っても言いのかい?」
 大木と裕司に挟まれた瑞希は、完全に行く手を阻まれていた。大木に寄りかかるように着いた裕司の太い腕が、瑞希の顔を挟んでいる。
「今日のことって?」
 瑞希は弱々しく脅えた表情で、裕司の真意を問いただした。
「そうさ、きょうもオマ○コするんだぜ、先生と俺は……。昨日のこと、秘密にしたいんだろう?」
 裕司の言葉には、拒むことを拒絶する語気が含まれていた。
(わたし、逃れることは出来ないんだわ。断れば……、昨日のことも、悠希のことも……みんなばらされてしまう……)
 瑞希はそっと瞳を閉じ、頭を項垂れることしか出来なかった。

「昨日も言っただろう? 先生の身体は、男を誘ってるんだ。先生を見るとムラムラするんだよ。昨夜もみんな、先生を思ってオナニーしてるはずだぜ」
 裕司の言葉に、昨日の記憶が鮮明に蘇る。瑞希の裸体を見詰め男根を摩っていた生徒たち。その先端から、瑞希を目掛け吐き出された白濁液。その記憶は、学園内での男子生徒たちが思う瑞希の立場を改めて思い知らせた。

 裕司は、瑞希の肩を抱きトイレの中に誘った。裕司の手が触れただけで瑞希は、子宮の奥に疼きが芽生えた。昨日味わったアクメを、膣が記憶の糸を手繰るように思い出していく。
 木漏れ日の中、俯き裕司に肩を抱かれ俯いた瑞希と、これから始まる至福の時に胸を膨らませた裕司。二人は静まり返ったトイレの中へと消えていった。



 悠希はぼんやりと教室の窓から外を見ていた。昨日のことが頭から離れない。全裸でシャワーロームに消えていった瑞希と高田……、その後に聞こえてきた姉の声……。ここ数日、姉との会話はない。自分が姉との交流を拒んでいたのだ。姉に訊ねることも出来ず、昨夜も会話を交わさない状態が続いている。拗れた関係を修復するきっかけを掴めないままでいた。

 あれはレイプに違いないと今でも思っている。それも自分のことが凌辱のネタのなったに違いない。高田は悠希が虐めに遭い撮られた恥辱写真を持っている。しかし、シャワールームから聞こえてきた声には、甘媚な響きが混じっているように思えた。そのことが姉に問いただすことを躊躇させていた。

 悠希は、視線を落とした。二階にある悠希のクラスの教室からは、手入れされた中庭の緑が目に入ってくる。池の噴水は飛沫を挙げ、生徒たちの心を和ませている。よく茂った大きな木、その向うにトイレの屋根が見える。
(なんだったんだろう……、昨日のお姉ちゃんと高田さん……)
 その時、目前の木の茂みを二つの影が過ぎった。
「ん?」
 木の茂みとトイレの建物の僅かに作る隙間を二人の影が過ぎった。悠希が見間違うはずもなかった。それは、肩を抱かれ俯きトイレに入っていく瑞希と高田だった。

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