夢魔
MIN:作

■ 第1章 淫夢3

 朝食を採って支度を終えた美紀は、学校に向かう。
 学校までは1q程、徒歩で10分掛からない道程。
 時間と天候により、美紀は通学手段を変えている。

「ん〜っ…。今日は天気が良いから、歩いて行くかな…。この時間だと、会えそうな気もするし…」
 玄関を出て大きく背伸びを一つして、携帯電話の時計で時刻を確認し、美紀は呟いた。
 通学路を歩いていると、同じクラスの友人や中学時代の知り合いと、擦れ違い挨拶を交わす。
 美紀に声を掛ける者は、かなりいた。
 美紀はその容姿と飾らない性格で、小さな頃から友人の多い方だったからだ。
 ニコニコと微笑みながら、歩く美紀の足がピタリと止まり、一本の電信柱を見詰める。
(あ、ここも…わたしの…おトイレ…。お外の散歩…ここで…するの…)
 美紀の頭の中に、また甘い痺れにも似た感覚が走り、美紀は身体を震わせる。
 立ち止まった美紀の後ろから、小走りに駆け寄り肩を叩く者が居た。
 美紀は肩を叩かれた瞬間、自分が何を考えていたか、忘れてしまった。

 美紀の肩を叩いたのは、同じクラスの親友・前田沙希(まえだ さき)だった。
 沙希はテニス部に所属していて、こんな時間に会うのは珍しかった。
「あれ、沙希どうしたの? 朝練は?」
 美紀の質問に、ニッコリ笑って沙希が答える。
「えへへへっ…寝坊…しちゃった…」
 頭を掻いて、舌をペロリと出しながら、沙希が答える。
「それより、美紀こそどうしたのよ、こんな所で立ち止まって、ボーッとするなんて」
 沙希が美紀に質問を、投げ掛ける。
「えっ? 私そんな事してた?」
 美紀が驚いたように、沙希に答えると
「うん、確実に30秒は固まってたと思う…」
 沙希は美紀の顔を見詰め、形の良い顎を引きながら答える。

 お互い肩を並べて歩き始める。
 1ヶ月ほど前に2年に上がったばかりの、2人は1年の時からのクラスメートで、入学して直ぐにうち解け合い、親友になった。
 美紀は1年の時には、一度も学年4位を譲る事の無い才媛で、沙希は中学の頃から、全国大会に出場する程の実力者だった。
 そして、この2人の最大の特徴は、その美貌とスタイルの素晴らしさだった。
 美紀は身長155pと小柄だが、均整の取れた8頭身でサイズは42sB80W59H75で、幼さが残る笑顔がとても魅力的だ。
 対する沙希は、身長165p体重53sB92W61H87とかなりのボリュームを備え、その身体はスポーツで、鍛え上げられ引き締まっている。
 どちらも違うタイプの相手を羨ましがり、お互いを尊重している関係だった。
 学校に2人並んで歩いていると、誰もが振り返り声を掛ける。
 そんなアイドル的存在の2人。

 しかし、この2人には、お互いに言えない悩みが有る。
 そう、お互いが同じ夢の悩みだった。
 そして、同じ悩みを持つ者がこの町に、後3人居る。
 彼女達は、一様に毎夜のように、淫夢に悩まされていた。

「今日のデーターは、フン…マウスNo.2は、反応が鈍いな…δ波とγ波の混在時間が短すぎる…。やはり、経験の差か…No.3も同じようなモノだな…反応が良いのは、やはりNo.1か…こいつはもうすぐ、次の3段階目に進めるな…。No.5は始めたばかりだが、データーをフィードバックしただけの事は有る、伸び率が格段だ…。問題は…No.4か…こいつは、中々手強いな…意志の強さか…」
 パソコンのモニターに向かって、ブツブツと囁く白衣の男。
 モニターには、No.が書かれた横に4色の折れ線グラフが、伸びていた。
 キーボードを叩き、何かを打ち込んでは、消去しまた打ち込む。
 男は作業を終えると、リターンキーを押し、何かのプログラムを作動させ、パソコンの電源を落とす。

 場所は変わって、学校の保健室。
 保健医の上郷弥生(かみさと やよい)は、白衣を羽織りながら、気怠い身体をさすって居る。
「ふぅ…この頃寝が浅いわね…やっぱり、あの夢のせいかしら…。確かに今は彼氏も居ないし…満たされて無いけど…あんなのって…」
 一人呟きながら、乳房に触れると、自然と指先がうごめき出す。
(ああぁ…白衣を着て…保健室にいると…つい…手が動くわ…)
 弥生は夜毎、繰り広げられる、夢の中で決まって、保健室でオナニーをして、大切な方を待つのである。
(ああ…こうしてると…扉が開いて…私の首にリードを掛けてくれる…大切な方…ああぁ…本当に…私を…)
 弥生の指が白衣の中に忍び込み、スカートをたくし上げ股間に指が伸びる。

 その時、保健室の扉をノックする音に、弥生は我に返る。
 着衣の乱れを、慌てて直し扉に向かって、声を掛ける。
「は、はいどうぞ…開いてるわよ…」
 ややうわずった声で、弥生が答えると
「失礼します。上郷先生…お腹の具合が悪いんで…薬をもらえませんか…」
 一人の男子生徒が、扉を開けて入ってくる。

 メガネを掛けた長身で線の細い生徒を見詰め、弥生は記憶を探る。
(あれ…この子…確かどこかで見た事有る…どこだっけ…なんかの本に載ってた?…)
 この学校は2年前まで女子校で有ったため、男子生徒の数が極端に少ない。
 全校合わせても40人を切る程度だが、その分優秀な成績を修める者が多い。
 生徒の一人が、どこかの雑誌で賞を取っているのも、何人もいた。

 少年はそんな中の一人かもしれないが、妙に記憶が曖昧で判然としなかった。
 弥生はその少年がとても気に成ったが、授業の時間も迫った生徒に、手早く整腸剤を与えた。
 男子生徒は、一言礼を言うと直ぐに薬を飲み込み、保健室を出て行った。
 後に残された弥生は、またも記憶を探り出すが、一向にその記憶を見つけられず、仕事に戻った。
 身体の気怠さを耐えながら、日誌を書いて事務仕事をこなす。

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