夢魔
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■ 第3章 浸食(梓)1

 梓は身体の気怠さで、目が覚める。
 今朝の目覚めは、いつにも増して、身体が重い。
 連日のように、淫夢にうなされ、眠りが浅いのも原因の一つだが、目が覚めた世界では、何一つ満たされない事が、梓のストレスと成り、睡眠を浅くし体力の回復を阻害する、最大の要因だった。
(ふう…だめ…こんなんじゃ…眠る事も出来ない…。身体の疲れも…溜まる一方だわ…)
 梓は時計を見て、溜息を吐く。
(まだ、こんな時間…少しはちゃんと眠らなくちゃ…)
 梓はベッドから降り、キッチンに向かった。
 水道の蛇口を開き、コップに水を溜め、それを口元に持って来た時、昨日の慶一郎の電話を思い出す。
 慶一郎の都合による、一方的な別れ話だった。
「慶一郎さんにとって…私は、都合の良い女でしか無かったのね…馬鹿みたい…不倫なんて…こんな物ね…」
 梓は誰もいないキッチンで、軽く鼻で笑うような口調で呟いた。
 しかし、そんな言葉とは裏腹に、コップを持つ梓の手は、カタカタと震え、頬を涙が伝う。
 梓はコップの水を、シンクに放り投げるように空けると、コップを置き踵を返して冷蔵庫に向かう。

 冷蔵庫を開けた梓は、缶ビールを取り出しプルトップを開けて、一気に煽る。
 唇の端から、溢れるビールを気にする事も無く、梓は350mlの缶を空にすると、もう一本取り出してリビングに向かう。
 リビングのソファーに座り、梓は2本目の缶ビールを開けると、俯きながら宙の一点を見詰め、一口煽る。
(私も…解っていたわ…こんなの…良く無いって…でも…でも…子供を持った女は、夢も見ちゃいけないの…女として生きちゃ…いけないの…。好きに成った人に…たまたま…奥さんがいただけ…)
 梓はビールをまた一口煽る。
(解ってるわ…そんなの…自分を騙す…言い訳だって…)
 梓はビールを煽っては考え込み、考えてはビールを煽る。
(この1年…楽しかった…女の幸せを実感出来た…あの人が、居なく成って…がむしゃらに働いて…気付いたら…もう35歳だったわ…。でも彼が、あの人しか知らなかった、この身体に…女の喜びを、教えてくれた…)
 梓は自分の身体を抱き締め、溜息を吐く。
(でも…もうそれも、終わり…私は、これからどうすれば良いの…)
 梓は缶ビールを煽るが、その中身は既に空けられていた。
 拗ねたような表情を浮かべ、缶ビールの空き缶を、部屋の隅に向かって投げつける。

 梓は深い溜息を吐くと、両手で顔を覆い、身体を丸める。
(あんな夢を見るのも…きっと、罰が当たったんだわ…不倫なんてするから…。あんな…快感を覚えてしまったから…。そう、だからこんな事も…覚えてしまった…)
 梓は顔を覆っていた手を、ユックリと乳房にあてがう。
 手が乳房に触れた瞬間、熾り火のように燻っていた快感が、炎に変わる。
(あふぅ…気持ち良い…ああぁ…これなら…イケるかも…この感じなら…大丈夫かもしれない…)
 梓の肉体は此処1週間程、快楽を極められないで居た。
 いつも絶頂が近づくと、快感が蓋をされ、それ以上昇り詰める事が出来なかった。
 そして、その快感はブスブスと燻り、常に梓の肉体の奥を、内側から焦がしていた。
 梓は慶一郎に絶頂を教えられ、余り会えない時の発散方法として、オナニーを身に付けた。
 回数は少なくても、今の自分の状態が異状だと梓も感じていて、それは淫夢が原因だと思っていた。
(大丈夫…この感じなら…イケるわ…そうすれば…あんな夢…もう見ない…あんな異常な夢…)
 梓の息が熱を帯び、肌が紅潮を始め、快感が大きく育つ。

 梓の手が、パジャマの合わせ目から中に入り、直に乳房に触れ始める。
 片方の手はお腹を滑るように這い、股間へと真っ直ぐに進む。
(はうぅ…いい…凄く…気持ちいい…あああ〜っ…はぁーっ…オ○ンコ…ビショビショになってる…今日は…今日こそは…)
 梓の手が激しさを増し、自分の身体に快感を送り込む。
 指は大淫唇を撫で、膣口を刺激しクリトリスを掠める。
 途端に大きな快感が梓を襲い、乳首が興奮で堅くなる。
(くぅう〜…気持ちいい…気持ちいいわ…そう、これよ…これなの…ああ〜っ…もっと…もっとよ…)
 梓は、大淫唇に触れていた指を、オ○ンコの中に差し込み、激しく掻き回し出し入れをする。
(はぁ、はぁ…そう、来て…来て…もう少し…ああ〜…も、もう少しーっ…)
 しかし、梓の快感はそこで、見えない壁に阻まれ、超える事が出来ない。
 今日のオナニーは、急速に快感を上げたため、その止まり方も梓に強いショックを与えた。
(な、何で…どうして…どうしてなの…何でイケ無いのよーっ…)
 梓はオ○ンコの指を、乱暴に動かし、乳房を激しく揉みしだいて、乳首を強く摘む。
 だが、そんな動きも、梓の身体には、快感の圧力を高めるだけで、一向に突き抜ける気配が無かった。

 そんな時梓の耳に、どこからともなくアラーム音が届く。
 梓の瞳からフッと意識の色が消え、霞が掛かったように眼の力が無くなる。
 梓はボンヤリとした表情になり、身体の力を抜いて、肩を落とす。
(イケない…ゆめでは…イケるのに…どうして…)
 意識が薄れた半覚醒状態の頭で、梓は考える。
(そう…ゆめでは…イケるの…ゆめでは…)
 梓はソファーからユックリと立ち上がり、フラフラと自分の寝室に向かう。
(じゃぁ…ゆめと…おなじことを…すれば…いい…そうよ…きっと…そう…)
 梓は寝室に着くと、パジャマの上着のボタンを外してゆく。
(ゆめでのことを…おなじように…おなじばしょで…する…)
 梓はボタンを外し終わると、軽く前をはだけて肩を抜くと、スルリとパジャマの上着が床に落ちる。
 ブラジャーを着けずに、パジャマを着ていた梓の、大きくて艶が乗った、形の良い乳房が現れる。
 梓の手がパジャマのズボンに掛かると、身体をくねらせスルスルと脱ぎ、ショーツ一枚の姿に成る。
 そして、梓はその唯一残った着衣も、躊躇無くその身体から外した。

 梓はドレッサーの前に行き、おもむろに瓶類を引っかき回し始める。
(わたし…ゆめのなかの…あんな…バイブ…もってない…なにか…かわりに…なるもの…)
 梓はドレッサーに置いて有った、油性のマジックの極太を持ち、ニンマリと笑い、アナルにねじ込む。
(ああああ…ちょうどいい…こんな…ふとさ…あとは…あれ…)
 梓が手に取ったのは、制汗剤のスプレー缶だった。
(これ…これぐらい…すこし…みじかいけど…ふとさは…あうかも…)
 梓はそれを握ると、オ○ンコに持って行き、ビショビショに濡れた膣口に、差し込む。
(くふぅ〜…いいわ…これに…しよう…)
 梓はその二つを、黒い鞄に入れて、ベッドに置く。
 そして、洋服ダンスに行くと、ベージュのスプリングコートを取り出し、身に纏う。
 スプリングコートは、膝上20pほどの丈で、少しでも身体を屈めれば、股間が丸見えに成る、長さだった。
 梓はスプリングコートの前を合わせると、ボタンを留めずに腰のベルトを軽く縛って、ベッドに戻る。
 ベッドの横に着くと、梓は身体を屈め、床に置いて有った黒い鞄を持ち、玄関に向かった。
 玄関に着いた梓は、お気に入りの赤いピンヒールを素足に履くと、扉を開けて外に出る。

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