夢魔
MIN:作

■ 第4章 主人3

 真がリビングを横切り、梓の横に来ると
「ところで、どう言った経緯でこの人は牝豚に成ったんですか?」
 稔に向かって質問する。
 稔は梓を拾った所から、今に至るまでを掻い摘んで、真に説明した。
「それは、また乱暴なやり方で…。それでは、稔君は一度もこの方を使わないで、牝豚にしたのですね…」
 真が稔に念を押すと、稔は平然と[そうですよ]と答える。
 真は稔の答えに、頭を抱える。
(まったく…感情が無いと言うのも困りものですね…これでは責められる、女性は堪ったモノじゃありません…)
 真は稔の顔を見詰めると、一つ溜息を吐いた。

 柳井稔は、赤ん坊の頃から、某国の有る製薬会社のラボで育った。
 その製薬会社は、人体の能力を、飛躍的に上げるための新薬を開発する目的で、人工授精した胎児を使い、実験を行っていた。
 稔はそんな中の一人で、数十万人いた胎児の生き残りだった。
 稔の脳は実験の結果、一般人の3倍程の記憶野を持ち、それを殆どタイムラグ無しで、自在に引き出す能力を得た。
 しかし、実験体だったために、人の感情、愛情や思いやりは元より、喜怒哀楽驚全てが欠落している。
 そんな状態の稔は、7歳の時に当局の捜査で救助され、養父である脳性理学の権威・柳井教授に引き取られても、感情を手に入れる事は無かった。
 稔は社会生活に入り表情を学習して、心理学を学び、その時々に対応した、表情を浮かべる術は覚えたが、何故その変化が必要なのかを理解出来なかった。
 そして、稔はSMの世界に触れ、人間の本質をその中で見つけてしまった。
 深い信頼と愛情、愛するが故に支配し服従する世界。
 稔はその世界の中で、自分の感情を探し求めるようになり、サディストとなった。

 真は梓に向き直り、静かに語りかける。
「今の話をお聞きした限りでは、貴女が今の境遇に成ったのは、貴女が自分の名前すら、言わなかった事が原因のようです。どうですか? 今のままSEXも出来ず、只牝豚として虐められるのが好みなら、私は何も言いません…ですが、基本は奴隷として扱われた方が、貴女にとっても良いのでは無いですか…」
 梓は突然現れた、白豚のような男にいきなり身分を明かせと言われ、鼻白んだ。
 真はそんな梓の反応は、既に慣れ切っていたから、気にも止めず
「何も具体的な言い方をする必要は、有りません。呼ばれたい名前を言って、どんな仕事をしているか、自分のサイズや経験などを自己紹介すれば良いんです…。その上で奴隷に志願すれば、何も問題なく奴隷に成れたんですよ」
 諭すように、梓に言った。
 梓は真の言葉に、打ちのめされたような表情で稔を見ると、稔は大きく頷いて、真の言葉を肯定する。
 梓はガックリと肩を落とし、自分の保身を悔やんだ。

 すると、真が稔に向かって
「どうです、充分に反省もしているようなので、これで罰を受けたと言う事にしませんか?」
 真の言葉に、稔は頷いて
「真さんがそう言うなら、私は受けるしかないですよ…。構いません、そうしましょう…」
 真の意見を受け入れた。
 梓は真に感謝するも、まだ立場を理解出来ず、真が近寄って肩に手を置く動作をした時に、思わず避けてしまった。
 真はそんな梓の行動に、気づかない振りをしながら
(ふ〜ん…そう来ますか…、なら私も少し本気を出しましょうかね…)
 笑った形の目の奥で不気味な光を輝かせ、自分の持つ技術の解禁を決意した。
 梓は知らず知らずに、開けては成らない扉を開いてしまった。

 稔に促されると、梓は立ち上がり
「私は梓36歳です。身体のサイズは162p51sでB90W63H85カップはEかFです。仕事は医者をしています、経験は2人で、結婚はしましたが、夫とは16年前に死別して現在は独身です。どうか私を奴隷として躾けて下さい…」
 ペコリと頭を下げて、稔に平伏する。
「独身ですか、SEXの処理はどうして居るんです? 特定の相手が、居るんですか?」
 稔が平伏する梓に声を掛けると、梓はビクリと震え
「い、今は居りません…つい先日…付き合っていた、同じ病院の医師に…別れ話を持ち出されました…」
 呟くような小声で、稔に答えた。
「そうですか…、今はフリーと言う事ですね? それなら、身体に傷が付いても構いませんね」
 稔が梓に静かに告げると、梓は平伏したままコクリと頭を下げた。
 稔は真に顔を向けると、真の表情を読み取り、梓に告げる。
「僕の奴隷に成るつもりなら、覚えておいてください。この人も同等な主だと言う事を、梓は僕たちの共有奴隷に成るんですよ…」
 稔の言葉に、梓はビクリと震える。
(や、やっぱり…だけど、この人に触れられるのは…嫌…病院長を思い浮かべてしまう…)
 梓は、今勤めている病院の、病院長にセクハラを受けていた。
 そして、その病院長の容姿が、真に酷似しているのだった。
 梓はそのせいも有って、先程の真の行動をかわしてしまったのだった。

 そんな主人達の会話を、弥生は訓練下着姿で首輪を持って聞いていた。
 稔達がそれに気づき弥生を手招きすると、弥生はその足下に一目散に這い寄ってゆく。
 そして、稔に首輪を差し出し渡すと、白い首を伸ばして首輪を待った。
 稔はその首輪を、弥生の首に巻くと金具を締めて、リードを掛ける。
 弥生の顔はその一連の行動で、既にウットリと蕩けていた。
 2匹の奴隷がソファーの前に平伏すると、稔と真が話を始め、調教を決める。
 二人はソファーから立ち上がり、アタッシュケースに進むと、調教道具を取り出し、準備に掛かった。
 二人は隣の居間に移動し、道具を設置すると、2匹の奴隷を呼んだ。
 奴隷達は2匹並んでイソイソと、隣の居間に移動する。
 そして、太い梁から垂らされた縄と、途中に有る鉄パイプ、先端に付けられた、錨のような双頭のバイブに目を奪われた。

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