夢魔
MIN:作

■ 第4章 主人10

 稔は沙希の口から、とうとうキーワードを引きずり出した。
([謝罪]と[何でもする]が出てきたね…良いでしょ、充分です…)
 稔は沙希に向かって、その言葉を反芻させる。
「謝罪とはどういう形で、行うつもりですか…、何でもするとは、どういう意味ですか…」
 稔の言葉に沙希が、ドキリと驚きを表情に浮かべ、上目遣いに見詰め抱え込んだ腕を、乳房に押しつけ
「私が…出来る事なら…柳井…君が望む事を…します…」
 頬を赤く染め、目を固く閉じ小声で決意を伝える。
 稔はまた、冷たい表情に戻り
「ならば、僕のお願いは、文字通り何でも聞いてくれるんですね…喩えどんな事でも…」
 見下ろしながら、沙希に聞き返した。
 沙希は震えながら、コクンと頭を下げる。
 稔は沙希に向かって、優しく声を掛ける。
「それでは、僕からのお願いです…」
 沙希は稔の声を聞き、何を言われるのかドキドキと、胸を高鳴らせる。
 充分にタメを作って、発した稔の言葉は
「その手を放して頂けますか…」
 沙希を呆気にさせるには、充分な願いだった。

 自分の予想外の願いに、沙希は驚き心に隙が出来る。
 稔はその心の隙間に、次の言葉を滑り込ませる。
「そして、貴女の出来る最大限の礼を尽くして、私に詫びて下さい…」
 稔の言葉に沙希は、弾かれたように手を放すと、モジモジと胸の前で手を摺り合わせる。
 稔が促す言葉に、沙希が深々と頭を下げて
「今まで生意気な事を言って、柳井君を不愉快な気持ちにさせた事は、お詫びします…どうか、この通り謝りますから、許して下さい…」
 稔に精一杯、謝った。
 しかし、稔はフッと鼻で笑うと
「その程度が貴女の精一杯の謝罪ですか…僕に今まで、取ってきた態度を、それで水に流せと…馬鹿にしてますか…?」
 氷のように冷たい言葉が、沙希の頭から降り注ぐ。
(だ、駄目なの…これで許して貰えないなら…土下座しろって言うの…。こ、こんな奴に…でも、…く、悔しいけど…やるしかないのね…)
 沙希が屈辱を震えながら、膝を折って階段室の床に、正座をする。
 正座して稔の顔を見上げ、おもむろに頭を下げて
「本当に悪いと思っています…だから、許して下さい…」
 涙声に成りながら、稔に謝罪した。

 だが、稔はそれでも沙希を許さなかった。
「どうして、最初からそうしなかったんですか? 僕の事をまだ、馬鹿にしていた証拠ですね…」
 そう言って、沙希の心を揺さぶる。
 沙希は必死になって、抗弁しようと頭を上げかけた時、稔の足が沙希の後頭部に乗った。
 沙希はその時、身体の奥でドクンと何かが跳ねる音を聞き、自分の身体に起きた変化が理解できなかった。
「誰が、謝罪を途中で止めて良いと言いました…。それに、まだ少し頭が高いようですね…」
 稔が足に少し荷重をかけると、沙希の頭が自然と下がって、床に額を擦りつける。
(く、悔しい…でも、何…この感じ…あたまの奥が…痺れて…身体が熱い…)
 沙希は学校の階段室で土下座して、頭を踏まれ謝罪すると言う屈辱に、身体が反応し始めた。
 身体の奥からゾワゾワと這い上がってくる、感覚に戸惑う沙希に、稔は優しく声を掛ける。
「さあ…良い格好に成った所で、貴女の言葉を聞かせて貰いましょうか…貴女の、最大の謝罪をね…」
 稔の声は、沙希の頭を更に、痺れさせ陶酔させると、沙希の身体の奥でスイッチが入る。
「申し訳御座いませんでした。私の愚かな振る舞いが…柳井君のお気持ちを不快にさせた事を、心からお詫びいたします。どのような事でも、償わせていただきますので、お申し付け下さい。お心に叶いましたら、お許しを頂きたいです」
 沙希は自分の思いつく、最大の謝罪をスラスラと並べ、稔に詫びる。
 詫びの口上を言い切った時、沙希の子宮から大量の愛液が溢れ始める。
(はぁ…はぁ…なに…なんで…どうして…こんなに…からだが…あついの…)
 沙希は自分の身体が、興奮で染まっているのが、不思議で仕方なかった。

 稔は沙希の頭の上から足をどけ
「そう、最初からそう言えば、良かったんですよ…、さあ顔を上げなさい…」
 稔が許可を出すと、沙希が顔を上げた。
 顔を上げた沙希の表情は、頬をピンクに染め、瞳はトロリと欲情に濡れ光っている。
 稔は沙希の顔をのぞき込み、沙希の意識が混濁し、淫夢による記憶が顔をもたげ出したのを確認すると
「今まで私に無礼を働いた、その生意気な舌を差し出しなさい…」
 沙希に命令すると、沙希はピンクの舌を出来る限り伸ばし、稔に差し出した。
 稔はその舌を右手で摘むと
「この舌が僕の手から、許可無く離れるような事が有れば、話は全て無かった事に成ります。良いですね…」
 沙希に静かに告げると、沙希はユックリと顎を引き頷いた。
 稔はそのまま、舌を持って沙希を立ち上がらせると
「腕を後ろで組んで、着いてきなさい…こんな所で、誰かに見られでもしたら、貴女も困るでしょ…」
 そのまま沙希の舌を引っ張って、階段を昇り始める。
 沙希は稔の命令に従い後ろ手に手を組み、舌を引かれるまま、稔の後を一生懸命着いて行く。
(この舌がはなれたら…わたしはおわり…ついていかなくちゃ…どんなことをしても…ついていかなくちゃ…)
 沙希の頭の中には、既に稔の命令に従う事しか無く成っていた。

 稔は階段室を出て3Fの廊下を歩きながら、ポケットから携帯電話を取り出し、電話を始める。
「あ、もしもし…うん言ったとおりだったよ…これから、そっちに行く…」
 稔は携帯を閉じるとポケットに直し、目的地に向かって歩き始める。
「これから誰も来ない所で…君の誠意をタップリ見せて貰いますよ…」
 稔は沙希にそう告げると、沙希の理性が警鐘を鳴らす。
(や、やばい…こいつ…なにか…いつもと…ちがう…にげなきゃ…)
 しかし、沙希の身体は意識とは裏腹に、コクリと頷き稔の後ろに従った。
 沙希はその声が、自分と下界を切り離す合図のように聞こえ、意識を霧の中に押し込んでしまった。
 今の沙希に残ったのは、倒錯の淫夢の記憶だけだった。

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