夢魔
MIN:作

■ 第6章 陥落(弥生・梓・沙希)9

 梓が固まったままで居るのを見て、稔がマイクを素早く取り、指示を出す。
「何してる、カウンターの下に移動して!」
 稔の鋭い声に、梓の身体が反応し、急いでカウンターの下に滑り込む。
 看護婦が振り向いた時には、梓は間一髪カウンターの影に隠れた。
 看護婦は首を傾げて、ナースセンターの方を向くと、奥に引っ込んで行った。
 梓は床に横たわり、胸に手を当てて荒い息を吐いている。
 おそらく、相当驚いたのだろう、中々その場から動けないでいた。
「ひゃひゃひゃ…。驚いた? 今のが3点分の誤情報だ。減点が増えると、誤情報はもっと酷くなるぜ」
 狂が稔からマイクを引き取ると、嬉しそうに梓に向かって告げる。
 梓はその声を聞き、ガタガタと身体を震わせた。
 稔は嬉しそうに梓に告げる狂を、ジッと感情のない視線で見詰める。

「さあ、牝豚ちゃん、減点がリセットされた所で、次の階に進んで貰おうか…。それとも、みんなに見つかるまで、そこで踞ってるのか? どっちでも良いぜ」
 狂が梓に再開を促せると、梓はモソモソと身体を起こし、中央階段室に向かって、這い始めた。
 ブウブウと豚の鳴き真似をしながら、大きくお尻を振って、階段へ進む。
「所で…梓に浣腸をしたと言いましたが…、彼女は今日の日中にも、大量の浣腸をされて居るんですよ…。何故、今回もそんな事をしたんですか?」
 稔は自分に黙って、梓に浣腸をした事を、狂に問い質した。
「知ったこっちゃねえよ。俺は、今必要だと思ったから、やっただけだ。奴隷の体調まで、管理する気はねぇよ」
 狂は不機嫌な声で、稔に告げるとキーボードを操作して、カメラを切り変える。
 3階のカメラは、2階と同じような造りのホールを、映しだしている。
「梓、伏せ!」
 稔の鋭い声が、梓の耳に届くと、梓は階段の上に身体を投げ出す。
 数秒後、梓の前を看護婦2人が、にこやかに談笑しながら、横切って行く。

 マイクを奪われた狂が、ムッとした表情で、稔からマイクを奪い返すと
「お前は口出ししなくて良いんだよ! じゃなかったら、俺の誤情報の意味が、無くなるだろ!」
 稔を睨み付けながら、言葉を荒げる。
「しかし、この罰は僕の担当です、狂がメインでする理由は、有りませんよ…」
 稔が静かに、狂に言うと
「俺も、メインの罰をお前に手伝わせたろ。これは、当然の権利だぜ。お前はこっちでも、監視してろ」
 狂はそう怒鳴りながら、隣のパソコンを操作すると、別のモニターに沙希が映りだした。
 足を大きく拡げ、青痣だらけの乳房をこね回しながら、バイブを激しく出し入れする姿の下で、グラフが3っつ伸び縮している。
 沙希の血圧と脈拍、体温の変化、下腹部の筋肉運動量が、そのグラフに現れ、沙希が絶頂に達した事を、数値で知らせる仕組みなのだ。
 沙希のバイブを持つ、手の動きが速くなると、グラフの数値がドンドン上がり、一定のラインを越える。
 映像に映った沙希は、身体をビクビクと震わせ、オ○ンコから大量の愛液を吐きだした。
 その時、画面の端にある数字が、2から3に変わり、沙希の絶頂回数を記録する。
 沙希の痴態の様は、無音で繰り広げられ、稔はそれを無表情に見詰める。
 メインの音声を狂が使用しているため、沙希の分はヘッドホンから聴くしか無いが、稔は自分の耳を塞いで、狂の暴走に気付かなくなる事を恐れ、無音でモニターを見詰めるしか無かったのだった。

 一方狂が見詰める梓の方は、淡々と廊下を這い回り、露出調教をこなしていた。
 3階の建物の両端で、それぞれディルドーオナニーをした、梓は何事も無く4階に進もうと、階段に向かった。
 しかし、狂がそんな事を許す筈もなく、難癖を付けて減点を増やし始める。
 余りにも理不尽な、狂の言葉に
『そ、そんな…あんまりです…』
 梓は堪らず、小声で人語を呟いてしまう。
 狂はニヤリと笑い
「へへへ…、ヘビーペナルティーだ…。お前は今、人の言葉を喋ったな…減点5だ。これで、10点分の誤情報が溜まったぜ。楽しみにしてろよ…」
 狂は静かに、梓に向かって宣言する。
 梓は項垂れて、肩を振るわせた。

 梓は項垂れながら、ナースセンターの前を横切り、中央階段室まで這って行き、階段を上った。
 4階は外科の入院患者が入っていて、比較的年齢層も若かった。
 その為、深夜でも起きている者が多く、人目が一番多い階に成っている。
 梓は嫌な予感に、頭を支配されながらも、4階のエレベーターホールに身体を進めた。
 梓は右側を向いて、這い進み始めると
「止まれ、階段室の影に隠れろ」
 狂が指示を出す。
 比較的ユックリな声だったため、梓はそれ程、逼迫した状態だと考えもせず、ユックリと身体を動かした。
 その途端に、パタパタと廊下を走る足音が、自分に近付いてくる。
 梓は慌てて、階段室の影に身を隠すと、梓が数秒前まで居た空間を、看護婦が走って行った。
「減点1分の誤情報だ…。気をつけろよ…どんなモノが間違えてるか、解らないぜ…」
 狂が静かに、梓に告げる。
 梓は階段室の壁に張り付き、暫く動けなかった。

「ジッとしてて良いのかな? 耳を澄まして階段の方に、注意してみろよ…」
 狂がそう言うと、誰かが階段を駆け下りてくる気配に、梓は慌ててブウブウと進み始める。
 梓が這い出して、角を曲がった瞬間、階段室から白衣を着た男性が、ナースセンターに向かう。
 梓がその姿を見ると、おそらく凍り付いたで有ろう、男性の左胸には柏木のネームプレートが揺れていた。
 そう、その男性医師は梓の不倫相手、柏木慶一郎医師だった。
 稔はその事に、直ぐに気が付いた様子だったが、狂は其処まで気付いては居なかった。
(この情報を与えたら…多分、狂は暴走してしまうだろうな…)
 稔は黙って、狂とモニターを見詰める。

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