夢魔
MIN:作

■ 第7章 隷属(弥生・梓・沙希)9

 旧生徒会室のパソコンのモニターの前に稔は陣取り、静かに沙希のオナニー姿を見詰める。
 沙希は新しいバイブを与えられ2時間半程で9回の絶頂を迎え、その合計を17回にしていた。
 沙希は絶頂がもたらす強い快感と疲労に、瞳に涙を浮かべ朦朧とした顔を、カメラに向けている。
「良いペースに成りましたね…このままなら、ギリギリ授業に間に合うかも知れません」
 稔がモニターに向かって呟いた時、にわかに廊下が騒がしくなった。
 稔はモニターの電源を落とすと、スッと扉に近付き耳をそばだてる。
「お前達がしたんだろ! この学校でこんな下らない、悪戯をするのはお前達しか考えられん」
 老用務員の声が、少し遠い所で、誰かを怒鳴りつけていた。
「知らね〜えよ! 俺達じゃねぇ〜って!」
 稔は記憶の中に有る、声の主を思い出す。
(確かこの声は…田中? …。名前までは、覚えていなかったか…確か、竹内の取り巻きだった筈)
 コンマ数秒でそこまでの情報を、頭の中から引き出した稔は、耳に入った用務員の言葉に慌てた。
「このトイレを汚したのは、お前達しか居ないんだよ。ここで、煙草を吸ったり悪さしてるのを、知らないとでも思ってるのか」
 老用務員の追求に田中の声が、聞こえなくなる。
(何だか、妖しい雰囲気に成って来た…庵達に連絡を取って、スタンバイさせるか)
 旧生徒会室は、現在は使用が禁止されていて、本来ここに人が居ること自体、知られてはいけない。
 必然人目の有る今の時間帯は、この部屋から出る事も、ままならなかった。
 稔は携帯を取りだし、電話を掛け始めた。

「庵? 今何処ですか…そう、教室…。直ぐに3階のトイレに上がって下さい。ええ…トラブルです」
 稔が素早くそう告げると、庵との会話を終わらせ、直ぐに次の相手に電話を掛ける。
「あ、弥生…今何処ですか? 出勤してる…保健室ですね。純を起こして下さい、そして直ぐに庵と合流するように言って下さい…。それと確か、弥生は用務員と仲が良かったですね? はい、じゃあ、直ぐに湿布を用意して置いて下さい、庵に呼んで行かせます」
 弥生に短く段取りを話すと、携帯を切る。
 切った瞬間、庵から連絡が入る。
『もしもし、どうやら竹内の取り巻き3人組が、トイレを汚した犯人にされてる見たいですね…このままだと、話が大きくなりそうです…』
「そうですか、庵はそのまま用務員に接触して、弥生が探してたと言って下さい。その後は、今そちらに純が向かっている筈ですから、合流して僕が出られるタイミングを、イヤホンマイクで教えて下さい」
『はい、解りました。純さんにも同じ事を伝えればいいですね…はい』
 庵の連絡が切れた後、稔はイヤホンマイクを耳に取り付け、扉の前でスタンバイした。

 一方男子便所の中の個室にいる沙希は、にわかに騒がしくなったトイレの前の声を、身体を震わせながら聞いていた。
(どうしよう、このままじゃ…人が集ちゃう…)
 用務員と男子生徒のやり取りは、扉を越えて沙希の耳に全て入ってくる。
「だから、俺達じゃねぇって…」
 煙草の件を持ち出され、少しトーンダウンした男子生徒達の声が、否定していた。
「じゃぁ、誰がこんな事するんだ! わざと、トイレの床に小便をするなんて、子供じみた悪戯を」
 老用務員の言葉に、沙希はビクリと震え
(ご主人様…怒られてるよ〜…だから、おトイレでもあんな事しちゃ、駄目なんです…)
 自分が怒られているような錯覚に、陥っている。
 すると、そこに低く響く声で、老用務員を呼ぶ者が現れた。
「用務員さん…今しがた、保健の上郷先生が探していましたよ…。何かを渡さなきゃいけないって、言ってました」
 庵の低く響く声を聞いた時、沙希の身体に安心が拡がる。
(垣内君だ…彼が居たら、間違い無く守って貰えるわ…。この学校で彼に勝てる人なんて、絶対にいないモン…)
 庵の登場に、沙希がホッと胸を撫で下ろしていると
「あ、ああ…解ったよ、有り難う。今すぐ行きますよ」
 用務員が返事をすると、足音が一人分離れて行く。

(えっ、え〜っ! もしかして…今…垣内君行っちゃった…。沙希を置いて、行っちゃったの?)
 驚きを隠せない沙希を、用務員が更に追いつめる。
「とにかく、ここの掃除をしないと、煙草の件を生徒指導の先生に、バラすからな! どっちが良いんだ」
 用務員の一言に、男子生徒は渋々頷いたようだった。
 少しの間をおいて、男子便所の扉が開き、不満を漏らしながらと男子生徒が入ってくる
「まったくあの爺ムカ付くぜ! 今度シメてやろうか」
 男子生徒の一人が、苛立ちながら何処かを蹴った。
「止めとけって。壊れたら、又俺達のせいだぜ…」
 もう一人が、制止する。
「ほら、ちゃちゃとやっちまわないと、ロングホーム始まっちまうぜ。俺、今日でないと親呼び出しなんだ」
 ブツブツとふて腐れるように、別の声がする。
 3人の男子生徒は、文句を言いながらも掃除道具入れの中から、ホースとデッキブラシを取り出し、掃除を始めた。

(さ、3人も居る…どうしよう…見つかっちゃうよ…沙希の裸…見られちゃうよ…)
 沙希は蒼白な顔で、ガクガクと震える。
 男子生徒は、ワイワイ騒ぎながら、乱暴に水を撒き、ブラシをぶつけ大きな音を立てる。
 その度に、沙希はビクッと首を竦め、身体を強ばらせる。
 昨夜の用務員の訪れで、学習していた沙希はクリトリスの鈴をしっかり握り、バイブを片手に持って身を竦ませている。
(もう、良いでしょ…早く行って…終わらせてよ…)
 沙希は目を固く閉じ、必死に願っていた。
 すると、突然頭の上から大量の水が撒かれ、沙希の居る個室の中をビショビショにする。
「ひっ!」
 あまりに突然に降り注いだ水に、沙希は思わず小さな悲鳴を上げてしまう。
 慌てて口を押さえるが、後の祭りであった。
「おい、今変な声しなかったか?」
 男子生徒の声に、沙希が震え上がる。
「ああ、個室の方から聞こえた」
 別の生徒の声と同時に、隣の個室の扉が開き
「ここには、誰もいないぜ。じゃぁ奥だな…」
 3人目の声が聞こえ、扉の前に立ちノブを回す。
(もう駄目! 絶対に見つかる!)
 沙希は恐怖に目を見開き、扉を見詰める。
 扉が開き、目の前に同じ学年の田中と言う生徒の姿を、沙希は認め凍り付いた。
 しかし、田中は沙希の方を見ておらず、入り口を見ている。

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