夢魔
MIN:作

■ 第8章 隷属(美紀)4

「どうぞ、入って下さい…」
 美紀が門を開け、玄関を開いて稔達を誘うと
「あら、お帰り…美紀、お友達?」
 リビングの方から、母親の声が響き
「うん、沙希と、同じクラスの男の子」
 美紀が母親に元気に答える。
「あらあら、初めてじゃない…美紀が男の子を連れてくるなんて」
 そう言いながら、リビングの出入り口から、イソイソと出てくる梓が、稔の姿を認め一瞬動きを止めた。
 しかし、次の瞬間梓は口を開くと
「あら、凄く大きな方なのね…お名前をお聞きしても良いかしら?」
 まったく見知らぬ者のように振る舞って、名前を問い掛ける。
「初めまして、柳井稔と申します。以後お見知りおきを…」
 稔は姿勢を正すと、深々と頭を下げた。
 梓も稔と同じタイミングで、軽く頭を下げると、戻る時も同じタイミングで戻り
「美紀お部屋大丈夫? それと、制服は着替えてから、お持て成ししなさい」
 梓が美紀に告げると
「は〜い、解ってますよ〜。柳井君、着替えてくるから少し待っててね」
 そう言うと、階段をスタスタと上がって行った。

「どうぞ、こっちへ来てゆっくりして下さい…」
 梓がニッコリ笑って、リビングを指し示すと
「おばさま、おじゃまします」
 沙希が微笑みを返し、挨拶をして梓の後に続くと、稔もその後を追う。
 リビングに入った稔は、無表情に変わり、スタスタとソファーに座る。
 あまりの、不躾さに沙希が呆気にとられると
「梓…大丈夫です、沙希も貴女と同類ですよ…。沙希、梓は貴女より先に僕の奴隷に成って居るんです、言ってみれば先輩ですよ」
 稔の言葉に、梓と沙希は驚きながら、お互いの顔を見つめ合う。
「何をして居るんですか、こっちへ来て下さい」
 稔が呼び付けると、2人は並んでソファーの前に正座した。
「梓、挨拶をして上げなさい。沙希貴女もです」
 稔の言葉に、梓は沙希に向き直ると、深々と頭を下げ
「稔様に、飼って頂いて居ります梓です。立場は最下層の奴隷ですので、沙希様達の下僕としてお仕えします、何なりとお使い下さいませ」
 梓の挨拶に、沙希は目を剥いて、口をパクパクとさせ、稔に目線を向ける。
 稔は沙希に大きく頷き、顎で示して沙希に挨拶を促す。
 沙希は稔の仕草に、梓に向き直ると
「き、昨日、奴隷に加わりました、沙希です。よ、よろしくお願いします」
 上擦った声で、挨拶をすると、梓に頭を下げた。

 稔が頷いて、頭を上げさせると、2人は改めて稔に向き直り、平伏する。
「梓、僕が今日、ここに来た理由は解りますか?」
 稔が梓に質問をすると
「はいご主人様…美紀をご所望で御座いますね」
 梓は平伏したまま、稔に答える。
 その答えを聞き、沙希はドキリとして、平伏した姿勢のまま梓を見詰めた。
「構いませんね?」
 稔が更に問いかけると
「ご主人様の、お心のままに…私に何かお役目が御座いましたら、何なりとお申し付け下さいませ」
 梓は何の躊躇いも無く、稔に答える。
 その言葉を聞いて、沙希自身も親友を、奴隷に引きずり込む、手伝いをしなければ成らない事を感じ、平伏したまま項垂れた。
「沙希。貴女はこれから、僕が声を掛けるまでは、何もせずただ黙って見ていなさい。僕が声を掛けたら、僕の命令に従って下さい」
 名前を呼ばれた沙希は、ビクリと震え
「は、はい。ご主人様…わ、解りました」
 命令に従う事を、承諾し返事を返す。
 すると、2階から扉が閉じる音が伝わってくる。
「二人共立って、散りなさい」
 稔の小さな声の命令に、2人は素早く動いて、梓はキッチンに、沙希は1人掛けのソファーに移動した。

 2階から、美紀が私服に着替えて降りてくると、リビングに入り声を掛けてくる。
「お待たせしました…柳井君、沙希ちゃんも2階に上がって」
 少し、はにかんだ笑顔を見せると、スカートの裾をひらめかせ、踵を返す美紀。
 稔はその言葉と同時に立ち上がるが、沙希はソファーに腰掛け躊躇っている。
「沙希…、それで構わないの?」
 稔が質問すると、沙希はビクリと震え、ノソノソと立ち上がった。
 そんな、沙希の姿に
「もう良いですよ、貴女は帰りなさい」
 稔が冷たく告げると、沙希は顔を恐怖に引きつらせ
「申し訳御座いません、ご主人様」
 小さな声で必死に詫びて、縋り付きかける。
 沙希の動きを視線で制した稔は
「沙希には後で、罰を与えます。覚悟しておきなさい」
 小声で鋭く伝え、顎をしゃくって2階へ上がらせた。
 項垂れながら、稔の後に付き従う沙希は
(ごめんね美紀…私ご主人様の命令の方が、大事なの…恨まれても構わない…。だって、稔様の命令だもん)
 心の中で、美紀に謝りながらも、稔に隷属する快感に意志を蕩かせていった。

 美紀の部屋に入った3人は、8畳の部屋でそれぞれ、思い思いの場所に腰を掛ける。
 部屋の主の美紀はベッドに腰掛け、親友の沙希は専用のクッションに座り、稔は美紀の机の前に有る椅子に足を組む。
 それぞれが、一定の距離を保ちながら、お互いの顔を見詰めると、美紀が口を開く。
「柳井君…この間教えて貰った事なんだけど…、あの続きをどうしても聞きたいの…」
 美紀が稔に今の状態を、ポツリポツリと話し始めた。
 稔はその間、黙って美紀を見詰め、一言も話さず美紀の話が終わるのを待った。
「どうかな…、柳井君…。私本当に恐いの…、この間言われたように…病院にまで行かなくちゃ治らないように成ったら、ママに何て言えば良いのか、解らないの…」
 美紀は顔を両手で覆い、肩を振るわせ小さく嗚咽を漏らし始める。
 美紀が話し終えた後、稔は組んでいた足を解き、姿勢を変えるとユックリと口を開く。
 しかし、その口から出た言葉は、美紀に取ってとても耐えられる物では無かった。

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