夢魔
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■ 第8章 隷属(美紀)7

 目の前に正座する2匹の奴隷の、それぞれの処女を受け取る約束をした稔は
「沙希に説明して置きますが、美紀は沙希が僕に告白した時は、既に僕の奴隷で、記憶を無くした後だったんです。だから、美紀は僕と沙希の関係を知りませんし、淫夢で悩んでいたのも本当の事です」
 沙希に向かい美紀の今までの状態を話し始める。
「只少し違うのは、沙希の場合より、美紀の方がリアルな夢を見ていたという事だけです。美紀は1ヶ月程、僕の調教を受けていたんですから」
 その話を聞いて、沙希は驚きの表情を美紀に向けた。
 美佳は済まなさそうに、俯くと
「沙希ちゃんゴメンね…ご主人様の事、沙希ちゃんに話さなくて…。だって、沙希ちゃんに軽蔑されるのが、怖かったの…」
 小さな声で、沙希に呟く。
「僕がこんな事を話すのは、この事で沙希と美紀の関係がギクシャクするのは、不本意だからです。今まで通り…、いやそれ以上の仲の良い関係を、作って下さい」
 稔が静かに2人に告げると
「はい、解りました…。今なら、多分解ります…その時の、美紀ちゃんの気持ち…だって、私もさっきまで、同じ気持ちだったんですもの…。美紀ちゃん、これからも宜しくね…」
 沙希は明るく微笑んで、美紀に答える。
「あ、有り難う沙希ちゃん…」
 美紀も嬉しそうに笑って、沙希に感謝した。
「それじゃ、暫く2人でお互いの状況を、話し合って仲良くなっていて下さい。僕は少し用事を済ませて来ます」
 そう言って、稔は立ち上がると白衣を脱いで、鞄に詰め込み部屋を出て行った。

 部屋に取り残された2人は、お互い向き直り、自分の状況を話し始める。
「私ね…ご主人様の事が好きで、何か話し掛ける方法を考えてたら…、ママが同じ病院のお医者様と、デートしてる所を見ちゃったの…。それで、悩んでる振りして相談に乗って貰ったの…」
 そこまで話すと、美紀は沙希を上目遣いに見て、反応を伺う。
 沙希は、美紀がそんな行動を取る程、積極的だとは思っておらず、呆気にとられていた。
 美紀はそんな沙希の反応に、恥ずかしくなり次の言葉を出せ無くなる。
 沙希は自分のせいで、美紀が黙り込んでしまった事に気付き
「あ、ごめん美紀。続きを話して」
 慌てて美紀に謝り、話の続きを促した。
「う、うん…その後、ご主人様に[ママさんは、まだ若いんですよ…、立派な大人の女性なんですから、貴女が束縛してはいけませんよ]って怒られちゃって…[そんな事で悩むぐらいなら、貴女も恋をしなさい]って言われて…」
 美紀は赤くなって、モジモジとし始め、言葉を句切る。
「[恋をしなさい]って言われて…? 美紀肝心なとこ〜」
 沙希が我慢出来ず、美紀の話を促す。
「う、うん…[誰か好きな人は居ないの? 居るなら告白してみたら]って言われて…私…ご主人様を指さしたの…そうしたら…」
「そうしたら…? …ねぇ、続き続き」
 美紀の話が止まる度に、沙希が身を乗り出して、話を促す。
 2人の格好がパジャマや私服ならほのぼのとした、恋愛話の暴露会のようだが、当事者2人は全裸に首輪の姿なのだ。

 美紀は沙希を上目遣いで見ると
「[僕は特殊な人間だから、お付き合いする事は出来ませんよ]って断られたの…」
 小さな声で、呟いた。
 途端に沙希が大声で
「あ〜っ! それぇ〜っ!」
 美紀の話に割り込む。
 沙希の声に驚いた美紀が、キョトンとした顔で沙希を見詰める。
 沙希は身を乗り出しながら
「ねえねえ、その後…どうして、美紀は奴隷に成れたの? ねえ、教えて?」
 美紀を問いつめる。
 美紀は沙希の余りの勢いに、驚きながら後ずさり
「えっ、えっ、ち、ちょっと沙希ちゃん待って、待ってよ。ど、どうしたの?」
 驚いた顔で、沙希に問い返す。
 沙希は、グッと息を呑んで、[しまった]と言う表情を浮かべ、墓穴を掘った事に気付く。
「えへへへへっ、実は私も告白して、同じ事言われたの…。で、どうして美紀は奴隷になれて、私は成れなかったのか、知りたくて…」
 沙希は、モジモジと自分の手指を絡めながら、美紀に答えた。

 美紀は沙希の言葉に驚き、ニッコリ笑いかけると
「多分…私が、どんな特殊でも構いません…って、泣きながら縋り付いたからだと思う…」
 沙希にその時の行動を、はにかみながら答える。
 沙希は美紀の答えを聞いて[ほー]と感心した表情になり
(そうか、その可愛らしさが私には、足りなかったのね…でも、私の性格じゃ出来ないなぁ〜…)
 腕組みをして、考え込む。
 美紀は沙希の変化に、次は自分の番だと、言葉を返した。
「ねえ、沙希ちゃん。私は、話したわよ…次は沙希ちゃんね」
 美紀はニヤリと笑い、沙希に詰め寄る。
 今度は沙希が、後ずさりする番だった。
 沙希は引きつった笑みを浮かべながら、後ずさり。
「わ、解ったわよ…言う、ちゃんと言うから…ちょっと待ってよ。話を整理させて…」
 追いすがる美紀の動きを止める。
 そして、沙希は昨夜あった出来事の全てを美紀に語った。

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