夢魔
MIN:作

■ 第9章 虫(バグ)4

 待ち合わせ場所に着いた美香は、時計を見て辺りを見渡す。
(あら、少し早く来過ぎちゃった…まだ、30分も時間が有る)
 待ち合わせ場所に、約束の時間より早く着き過ぎた美香は、手持ちぶさたに佇んだ。
(嫌だな〜…こんな所で一人で立ってると、必ず来るのよね…)
 美香がそう思いながら、時計を見て視線を戻すと
「ねぇねぇ…彼女一人? 僕達と何処か行こうよ…」
 見知らぬ男が、美香に声を掛けて来る。
 美香は俯いて
「人を待ってるんです…」
 か細い声で、男に伝えた。
 美香はその美貌と雰囲気から、待ち合わせ場所に立って居ると、必ずと言っていい程ナンパされてしまう。
 男はツレに目配せすると、ニヤリと笑って、美香の腕を取り
「良いじゃん、俺達と行こうぜ!」
 口調を強い物に変え、強引に連れ出そうとする。

 美香は驚いて抵抗しようとするが、男達の強引さに押し切られそうになる。
 美香は元々おとなしく、人に逆らい辛い性格だったが、最近ではそれが酷くなっていた。
 男達はそれを敏感に察知したのか、美香を囲んで離さなかった。
「その子どうするつもり? 僕のツレなんだけど…」
 美香が連れ去られそうに成った時、一人の男が声を掛けて来た。
 身長176p程で、ガッシリと迄は行かないが、そこそこ鍛えた身体をした顔立ちの整った、青年だった。
 青年の名前は、坂木健二、美香の彼氏で有った。
 男達は健二を見ると、値踏みするように睨み付ける。
 一人の男が健二に近付き
「なんだ〜お前は!」
 胸ぐらに手を伸ばそうとすると、もう一人の男が何かに気付き、その男の動きを止めた。
 耳元で何かを囁くと、掴み掛かろうとした男が、驚きの表情に変わり、ペコペコと米つきバッタのように頭を下げて、逃げて行った。
(ちっ…馬鹿な反応しやがって…女がビビッちまうだろうが!この女に逃げられたら、探し出して袋にしてやる…)
 男達を酷薄な目で見送り、後ろで震える美香に向き直る。

「美香…駄目だよ。君は、こんな所で立ってちゃ…、あんな奴らが、ウヨウヨ寄ってくるんだから」
 先程の酷薄な目線を微塵も感じさせない、優しい笑顔で美香をたしなめる。
「ごめんなさい、健二さん…待ち遠しくて、少し早く来ちゃった…」
 美香は健二の胸の前で俯いて、謝った。
(く〜…マジでそそられる…こんな女が、手に入ったんだ、あのおっさんなら100は出すだろう…)
 健二はニヤニヤと嫌な笑いを浮かべて、美香を見下ろした。
 美香の身体から震えが取れると、美香は顔を持ち上げて、健二の顔を下から覗き込む。
「本当にごめんなさい…でも、恐かった…。健二さんが来てくれなかったら…」
 美香が言いかけると
「僕が来ない訳無いじゃないか…大事な彼女との待ち合わせなんだから…」
 健二は笑って、美香の横に移動し
「さぁ行こう…」
 背中を押しながら、美香を促して
「今日も可愛がってあげるね…」
 美香の耳元に囁いた。

 美香は真っ赤に頬を染めると、コクリと頷いて健二に付いて行く。
(へへへっ…こいつも、こんな顔して本当に好き者だぜ…拾いモンだ…)
 健二は美香を見詰めて、心の中で喜んだ。
 美香は既に3度健二に抱かれ、SEXの快感を感じるように成っていた。
 最初こそ苦痛を訴えたが、2度目からは健二の命ずるままに、あらゆる要求に応えた。
 健二はこの何でも言う事を聞く、美少女が気に入っている。
(今日はどんな事をさせてやろうか…精々楽しんで、飽きたらおっさんに売りつけよう)
 美香の背中を押しながら、健二はラブホテルに入って行った。
 美香は本来、SEXに恐怖感を持っていたが、稔達が見させた淫夢のため、急速にそれが失われた。
 そして、純が行った操作のため、より強力な処理が施され、今では深層心理にまで、深くマゾ性が開花させられたのである。
 そのため、元々逆らい辛い性格が、全く逆らえない性格に変わり、求められるままに、自分を捧げるように成ってしまった。
 それも無意識の、うちにである。
 人の形をしたリモコン人形が、今の美香だった。

 ホテルに入ると健二はスタスタと奥に進み、ソファーに座る。
 美香はモジモジと、入り口で立ちつくしていると
「さあ、美香こっちへおいで…」
 健二が美香を呼んだ。
 美香はコクンと頷くと、トコトコと健二の元に駆け寄ってくる。
(何かが違う…でも…何なのか解らない…)
 美香は自分の中に産まれる、違和感のような物を感じていた。
 それは、薄い靄の中で、周りが見えないが、確かにそこに存在を感じる。
 そんなもどかしさと、ボタンを掛け違えているような、心地悪さが合わさったような、感じがして成らなかった。
(健二さんに、何かを言われると…とても、気持ちいい…落ち着くような気がする…)
 美香は健二を見詰め、視線が合うと頬を染めて、俯いて
(でも、これも違うような気がする…)
 沸き上がる感覚に、戸惑いながら自問自答する。

 健二はそんな美香の疑問などには、一切気付かずに美香に命じた。
「さあ、いつものように、綺麗な美香を見せて」
 健二がそう言うと、美香は頷いて鞄を下に置き、ブラウスのボタンに手を掛ける。
 健二はジッと美香を見詰めると、美香はブラウスのボタンを一つづつ外して行く。
(ああぁ〜…見られてる…美香が服を脱ぐところ…ジッと見られてる…)
 美香はボタンを外し、白い肌を少しづつ晒す事に、興奮を覚え始めた。
 健二は美香のストリップを見ながら、ポケットに手を突っ込み、煙草を取り出す。
 すると、ポケットの中から、ピンク色の錠剤が入った袋が出てきた。
 健二はその錠剤を見詰め、少し驚いた後ニヤリと笑う。
(おほぉ〜…これ、こんな所に入れてたのか…。この間の女に使ったら、笑える程淫乱に成ったけど…こいつに使ったら、どう成るんだ…)
 健二は、幻覚効果の有る催淫剤を見つけて、小躍りしそうに成った。
 何も知らない美香は、恋人の前で、命じられるまま服を脱ぎ、その美しい肢体を晒した。
 美香の白く透き通るような、滑らかな肢体は、とても繊細で美しかった。

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