夢魔
MIN:作

■ 第9章 虫(バグ)5

 健二の前で着衣を全て脱ぎ、全裸を晒した美香は、両手を後ろで組んで、恥ずかしそうに俯いて、身体を揺すっている。
 健二は美香に視線を戻すと、手招きして自分の側に呼び、美香の肢体に手を伸ばして、その感触を楽しむ。
(たまんねぇ…この白い肌に、シットリと吸い付くような感触…柔らかいけど、張りが有って…最高…)
 思わず鼻の下が伸び、下卑た本性が仮面の下から現れる。
(おっと…あぶねぇ、あぶねぇ…。俺は、あくまでピアニストの恋人だからな、下品な面を晒して良いのは、薬を飲ませてからだ)
 健二は気を引き締めて、表情を元に戻すと
「さぁ…今度は僕の番だ…」
 美香に告げた。
 美香は嬉しそうに微笑むと
「はい」
 鈴の音のような美声で答え、健二の足の間に膝を付いて、甲斐甲斐しく健二の服を脱がせ始める。

 健二はこの行為が、大好きだった。
 特に美香のような美少女にかしずかれ、自分の世話をさせるのが、とても興奮するのだった。
 そんな自分を、健二はサディストだと認識する事で納得し、また、悦に入ってもいた。
[自分は悪で、それ位が丁度良い]と、自分でそんな風に思ってもいた。
 健二は知らなかった、それはSMの入り口にも達していない、ごく普通の行為である事を。
 自分の相手をしている美少女の中には、SMの深淵に達する程の情報が、刷り込まれている事を。
 そして、開けてはならない禁断の小箱を、開く鍵が自分の手の中にある事を。

 健二は美香を伴い、一緒にシャワーを浴びる。
 ベッドに向かうと、美香を押し倒し、足を抱え込んで1ラウンド目を開始した。
 まだ濡れても居ない美香のオ○ンコに、チ○ポを押し当てると、強引に侵入する。
「い、痛い…」
 眉根に皺を寄せると、美香は小さく声を上げた。
(この顔…へへへっ…何とも言えない、色っぽさが有る…。まぁ、この一瞬だけなんだがな…直ぐに濡れて感じだす…)
 健二は、美香の苦痛に顔を歪める、表情が好きだった。
 征服感と加虐感を満たす、その表情を見ながら、犯すのがお気に入りだったのだが、それも最初だけだった。
 美香の身体は、直ぐに快感に染まって、女の反応を見せる。
 オ○ンコからは、大量の愛液が流れ、苦痛を快感に変えて行くのだ。
(まぁ、良いや…これはこれで、気持ちいし…しかし、この女凄いな…肌といい、スタイルといい、感度といい…申し分ない…良い拾いもんしたぜ…最初は手なずけるのに、苦労するかと思ったけど…会って5回目で股開きやがったからな…処女じゃないのも驚いたが、ホントラッキーだぜ…)
 健二は、美香との出会いからを、思い出しながら、腰を振る。
 はぁはぁと鼻に掛かった、甘い声を吐きながら、美香はもどかしさに襲われていた。
(ち、違う…そうじゃない…そんなんじゃないの…。何が違うかは解らないけど…何かが違う事は解る…)
 自分の上にのし掛かり、腰を振る恋人に、美香は感じる事が出来無かった。
 美香は4度目のSEXで、もう通常のSEXに、快感を感じ無く成ってしまったのだ

 しかし、美香にはそれがどう言う事か、解らなかった。
 美香は淫夢でマゾ性を目覚めさせられていたが、純の妨害のため、それを発散させる方法の段階に達していなかった。
 パソコンにより映像を見せ、より自分の嗜好に合ったプレイを選ぶように、プログラムされた心理誘導を受けて、初めて自分の中に淫夢が記憶され、それを嗜好として認識する。
 つまり今の美香は、自分が感じる被虐の快感は有っても、それをSMに繋げる事が出来ない、その正体にすら気付いていないのである。
 組み敷かれた美香の快感は、急速に萎えていった。
 薄いピンクに染まっていた肌は、陶器のような白さに戻り。
 分泌されていた愛液は、その量と粘りを無くす。
 それでも、美香は恋人を感じさせようと、甘い吐息を吐き、快感を得ている振りをした。
 健二は美香の変化を微塵も感じず、自分勝手な抽出を繰り返し、美香の中に精を放った。
(へへへっ、中に出しちまった…まぁ、出来ちまったら、堕ろさせるだけだけどな…)
 健二はハァハァと荒い息を吐き、美香を見下ろした。
 美香は顔を背けて、荒い息を吐いている。
(こんな顔見せられない…こんな、平然とした顔…)
 健二が果てたのを感じながらも、美香は自分が全く感じ無かった事に、罪悪感を感じて恋人の顔を正面から見られなかった。

 健二はチ○ポを美香から引き抜くと、ベッドを降りてソファーに向かう。
 ソファーに座ると、テーブルの上に置いていた煙草の箱を掴み、煙草を吸い始める。
 煙草の箱をテーブルに戻す時、セロハンと箱の間に挟んでいた、ピンクの錠剤を一錠取り出すと
「美香、こっちへおいで…」
 ベッドで健二の精の後始末をしていた美香を呼び付けた。
 美香はトコトコとソファーまで来ると、健二の足下にチョコンと正座する。
 別に健二が命じている訳ではないが、美香は健二が呼ぶまでは、同じソファーに決して座ろうとはせず、必ず床に正座した。
 健二はそんな美香に、微笑みを向けると
「これ、飲んでごらん…気持ちよくなる薬だから…心配しないで良いよ、危ない薬じゃないし…」
 健二が差し出し、説明を始めようとすると、美香は無防備にその薬を口に含んだ。
 健二は慌てて
「まだ飲み込むな!」
 美香に注意する。
 健二の慌て振りに、美香はキョトンとした顔で、健二を見ると
「まだ飲み込んで無いな…見せてみろ」
 健二が美香に命令する。
 美香はその途端込み上げてくる、ゾクリとする感じに身体を震わせ、恐る恐る口を開け、舌を差し出しその上に乗った錠剤を見せた。
 しかし、健二はその美香の反応を勘違いする。
(やばい、やばい…慌てて、地が出ちまった…ビビらせたか…)
 健二は作り笑いを浮かべ
「ごめん、びっくりした? それ、飲み込み方が有るんだ…舌の下に置いて、唾で溶かして飲み込むんだ」
 健二はそう言って、自分の舌を持ち上げ、錠剤を置く場所を教えた。
「時間は掛かるけど、その方が良く効くしね…」
 説明が終わると、美香に向かってニッコリ微笑んだ。

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