夢魔
MIN:作
■ 第9章 虫(バグ)8
健二は美香を抱きかかえると、急いで駅を突っ切り、裏手にあるいつものカラオケボックスに急いだ。
カラオケボックスに着いた健二に、若い店員が美香を見て
「今日の相手は、その子ですか? まだ、高校生でしょ…。へへへっ、今度俺も誘って下さいよ」
好色そうな顔で、健二にすり寄った。
「どけ! 急いでるんだ。今日は貸し切りにしとけ」
そう言って、店員を押しのけると、奥に向かって急いだ。
若い店員は、健二の姿が見えなくなると
「けっ、女引っかけるしか能が無い癖しやがって! 偉そうに」
顔をしかめて、吐き捨てる。
一番奥の部屋に入った健二は、そこにたむろするメンバーを見て
(やばい奴らばっかだぜ…こいつ、今日で終わりかも…)
息を呑んで、愛想笑いを浮かべた。
一人は伸也だが、後の二人はどう見ても、まともな職業に就けそうも無かった。
伸也の右手にいるのは、髪の毛どころか、首から上の毛が一本も無い男で、目尻と鼻に大きなリングピアスを付けて、右耳は耳たぶが見えなくなる程のピアスが付いている。
この男は、スカウトした女の、肉体改造担当で、自分のチ○ポにまでピアスを付けている。
左側にいる男は、健二と同じ[スカウト]の一人だが、方法はまるで違う。
この男のスカウト方法は、単純に[力による恐怖]を植え付けるやり方だった。
どれだけの女が、この二人のために壊され、行方不明になったか解らない、そんな噂が絶えない組み合わせだった。
健二が美香を部屋に入れると、その男2人が揃って[ほう]と小さく声を上げる。
「よう…お前親父のリスト見てないって言ったよな…それがどう言う意味か、解ってんのかよ…。埋められても、文句言えないんだぜ…」
伸也が健二に向かって、脅すように言った。
「す、すいません…この事は内密にお願いします」
ペコペコと頭を下げる健二に、スカウトの男が
「この女…薬飲ましたろ…何飲ませたんだ?」
低い声で、健二に質問すると
「こ、これです…」
健二が残りの催淫剤を一歩進んで、テーブルの上に置き、直ぐに元の位置に戻る。
スカウトの男が、それに一瞥をくれると、鼻で笑って
「つまんねぇな…これ飲んでるんだったら、泣き叫ぶなんてしねぇだろ…」
ぼそりと呟いた。
「東さん、こいつは顔の形も、身体に傷も付けちゃ駄目なんですよ…親父にばれたら、大事ですから」
伸也が敬語で話す所を見ると、余程伸也もこの男を恐れてるんだろう。
「坊ちゃん…解ってますよ…今日は犯すだけで我慢しますから…」
伸也に向かってニヤリと笑った。
「飽きたら…払い下げ…してもらえば…良い…」
スキンヘッドの男が妙に聞き取りにくい声で、美香を見詰めながら言った。
「この子…だったら…ピアス…似合う…」
ニンマリと唇の端を上げ笑うと、その舌にも無数のピアスが付いていた。
「谷さんも、解禁が出るまでは、本気で我慢して下さいよ、前の女みたいに切り刻まれたら、困るんです」
伸也がスキンヘッドを谷と呼び、敬語で念を押す。
「我慢…する…」
カチャカチャと耳障りな音を立て、谷が答えた。
「で、どんな状態なんだ、森川の姉ちゃんは…」
伸也が健二に向かって質問すると
「は、はい…僕の言う事は何でも聞くように成ってます」
健二は完全に雰囲気に飲まれて、上ずった声で返事をする。
「じゃあ、早く命令しろよ…気がきかねぇな」
東が言うと、健二は慌てて美香に、服を脱ぐように言った。
美香は命令に従い、服を脱いで全裸になる。
ピンクに染まった美香の裸身を見て、3人は嫌らしい笑いを浮かべ、顔を見合わせた。
一方その頃、主人の出て行った森下家では、去り際の命令を実行すべく、バタバタと奴隷達が走り回っていた。
梓は急ぎ階下に降りると、お風呂の準備を始め、美紀はオ○ンコにティッシュをあてがって、部屋の床に広がった血を拭き取っていた。
「ご主人様…どうしたんだろう…」
美紀は血で汚れたティッシュを、丸めて屑籠に放り込みながら、ポツリと呟く。
稔が突然飛び出して言った事を、美紀は気にしていた。
「大丈夫よ…稔様は、美紀に怒って出て行った訳じゃないわ」
美紀の落とした肩に、ソッと手を添え沙希が慰める。
「どうして沙希ちゃんに、そんな事解るの…」
美紀は親友に顔を向けると、泣きそうな目で問いかけた。
「うん? へへへっ。あのね、私はご主人様達にスッゴク怒られた所から、奴隷になったのね…。だから、あの…雰囲気で解るの…」
(本当は、あの無表情が、稔様の標準だって知ったら…驚くんだろうなぁ…理由も含めてね…)
沙希は美紀を見詰めて、本当の理由は伏せながら、美紀を慰める。
するとそこに、お風呂の準備を終えて上がって来た、梓が同意した。
「私も大丈夫だと思います。ご主人様がお怒りに成られた時は、もっとこう…独特の雰囲気をお出しに成られます…」
扉の方に目を向けて、美紀は泣きそうな顔を少し明るくすると
「本当ママ? ご主人様怒ってない?」
縋り付くようににじり寄り、全裸で正座する母親に問い掛けた。
梓は縋り付く愛娘を優しく撫でながら
「私もご主人様には、何度も怒られてしまいました。今思えば、先程のご主人様には、その時の雰囲気が有りませんでした。そう、何か別の用件を思い出したような、感じでしたわ」
顎に指を添え、考え込むように宙に視線を漂わせて、美紀に答える。
「そうそう、おばさまも感じました? 私も何です…実際稔様が怒ったら、あれの10倍はおっかないですモンね…」
(本当は怒れないんだけど…怒ってるように感じるのよね…、稔様の無表情…)
沙希が梓に同意しながら、稔の怖さを美紀に吹聴する。
ゴクリと唾を飲み込み、大きく頷くと
「確かに、その通りで御座います」
梓も、沙希の言葉を認めた。
美紀は2人を交互に見詰め、ブルブルと震えると
(絶対に稔様に怒られないようにしなくちゃ…さっきので、怒ってないなら…多分耐えられない…)
固く自分の心に誓った。
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