夢魔
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■ 第10章 朧夜7
その夜は、とりわけ明るい夜だった。
儂のお抱えの病院から、一本の電話が入る。
『と、とうさん僕だけど…い、今東さんが大変なんだ…』
一人息子の伸也からの電話だった。
「ん? どうしたんだ…何があった?」
儂は慌てる伸也に、いつものように穏やかな声で、問いかける。
『うん…今日、健二が新しい女を連れてきたんだけど、父さんのリストに載ってた奴で、俺達がヤバイから止めようとしてたんだ…』
伸也が夕方に有った出来事を、話し始める。
儂は電話口で、頷きながら伸也の話を、聞いていた。
『そしたら、柳井達が女を取り返しに来て、僕に襲いかかろうとしたんだ…。それを、止めに入った東さんは垣内に殴られて、腎臓が破裂して、谷さんは両耳を切り落とされたんだ。父さん何とかしてよあいつら…何で黙ってなきゃいけないの…』
伸也が必死に電話で訴える。
「まあ、待ちなさい…彼らは、今ある計画を実行中だ。それぞれ特殊な力を持っているから、誰一人外せないんだ…。時期が来たらお前の気の済むようにすれば良い…」
食い下がる伸也の電話を、なだめながら切る。
儂は大きく溜息を吐いて、電話を横に突っ立っている女に叩き付け
「戻してきなさい…」
表情を変えて、言いつける。
女はその電話を自分の額で受け、急いで両手に持ったグラスとつまみをテーブルに置き、電話を拾って台に戻しに行く。
儂の周りには、今日は5人の女が世話をしていた。
今走っていった女は、中々長く保っていて3年ほど儂に仕えている。
周りの女も儂の表情が変わったのを見て、怯えの色を強くし始めた。
儂は、この状態がとても好きだ、女達が緊張感を持たなくては、面白くないからだ。
唯一態度の変わらないのは、儂の股間でチ○ポをしゃぶっている女だけだった。
仕方なかろう、この女はもう正面に有る物が見えて無い。
儂が、丁寧に瞳孔に針をさしてやったから、その視界の真ん中は、大きく傷が入り視界を妨げている。
完全に視力を奪わずに、自分の見たい物だけ奪う、実に愉快な行為じゃないか。
ルポライターか何か知らないが、儂の周りをコソコソと嗅ぎ回るから、こんな目に合う。
この女が最後に見た物は、むろん儂の刺す針の先端だが、その前に見た物は、恋人とか言うカメラマンが、液体窒素で凍り粉々に砕けて行く姿だ。
特殊な薬物で、チ○ポが萎えないようにしてから、10人の女に犯させて、2周目に入る前、腎虚で死んだ。
その一部始終を、目に焼き付けて直ぐに、針で突いてやったのだ。
それが3日前の事だ、この女は憎い恋人の敵に命乞いをして、今こうして生きている。
まぁ、五体満足とは行かないが、取り敢えず生きている。
この手の女は、儂が抱えている30人の女達に、儂という人間を教え込むのに、丁度良いからだ。
人の形をした玩具、儂に逆らうとどう言う目に合うかを教える、絶好のデモンストレーター。
人の形をしている内に、気が触れればまだ救いがあるが、こういう気の強い女は中々そうならない。
長々と儂を楽しませ、そして朽ち果てるように、死んで行く。
その様の全てを、儂は抱えている女全員に見せ、感想を言わせる。
これは、中々に人の心を縛ってくれる。
儂は恐怖と生活を盾に、30人の女達を常時縛り付けておる。
儂は縛り付けた女には、逃げ場を与えずに飼っていて、常に4〜5人のストックも持っておる。
恐怖で心を縛り、雇用で環境を縛り、搾取で生活を縛り、お互い監視する事で、信頼関係も縛った。
このシステムは儂が考えたモノで、女達は儂の所有する2Kの部屋が15室あるマンションに2人1組で生活させ、貯金を強制し、一切の現金を持たせない。
そして逃げ出さないように、規則を破らないように、バディを組ませお互いを監視させる。
逃げた場合は当然、厳重な罰がバディにも加えられ、逃げた当人も絶対に見つけ出し、家族も処分する。
報告は義務で有り、儂の歓心を引く手段で、多くの現金を手にするチャンスだ。
現金が女達に手渡されるのは、儂に使われた時、儂を楽しませた分与えられるか、密告した時だけだ。
従って、女達は生きてゆくためには、儂に使われ楽しませるか、バディの規則違反を密告しなければ、風呂にはいる事も、電気を付ける事も、食事を取る事すら出来ない、そしてそれ以外にも金が必要なのだ。
この生活無いのバディと言っても、対等では無い、そこには、主従関係が存在する。
主従関係は、金で決まるのだ、主に成りたい方が儂から権利を買う。
当然双方の示した金額は儂の物だ、儂は多く金額を出した方に主を任せ、絶対服従を強いる。
いつまで続くかは、儂次第の主従関係は、反抗心を根こそぎ奪う。
このシステムを使う前は、儂は金を払って愛人契約をしていたが、儂の望むプレイはできんし、維持費がかかりすぎる。
掠ってきた女を監禁して壊すのは、リスクが高いし従順さに欠ける。
だが、このシステムを完成させ、儂は全ての事で満足した。
女達は儂を楽しませる玩具であり、商品であり、儂に金を運ぶ働き蜂のような物だ。
女達に高い給料を払う事で、儂の会社は税金を逃れ、払った給料は全て回収し、買い手が付けば、大金も入る。
それら全てを、裏金で運用し、儂の影響を確固たる物にする。
一石二鳥どころでは無く、三鳥も四鳥ものシステムだ。
儂にはそれが、出来る力があった。
この市の雇用は儂の企業群が50%で、下請け等の関連企業を入れると70%を越え、息の掛かった物も合わせると80%を越える、これがどう言う事かというと、儂がその気になれば、個人経営だろうが公務員だろうが、簡単に叩きつぶせるのだ。
親類縁者の雇用も、生活も全てが儂の掌の中。
儂から逃げ出せば、この市では何処にも生活の場は無い。
儂の会社や工場以外、特に産業の無いこの市では、儂に逆らう事は死に繋がる。
現に冬場に儂に1週間使われずに、放置した女は部屋の片隅で、餓えと寒さで死んでいる。
その女は、儂には直接何もしていない。
ただ、バディを組んでいた女が、儂の元から逃げたのだ。
もし、自分の監視する相手が、逃げた場合この女のように、無期限で放置される。
儂に許しを請い、儂に許されなければ、儂に使われない。
それが女達の、立場なのだ。
たまにこの立場を忘れる輩が出てくると、その女のように誰かが、身をもって教えなければ成らなくなる。
全員に死んで行くさまを見せ[こんな風に、成りたくないでしょ]と儂の変わりに女達に教えて呉れる。
当然逃げた女も、女の家族も全て処分し、その様子を女達に見せる。
すると女達は、羊のように従順に変わる。
女達は自分がどちらの立場で、マンションを出て行くか、それだけを考えるように成る。
死体で出て行くか、奴隷として売られて行くか、その2つに1つの選択だけが、頭を占めるようになる。
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