夢魔
MIN:作

■ 第10章 朧夜10

 一人話の見えない弥生が、堪らず2人に質問する。
「あ、あの…美香ちゃんどうなってるんですか?」
 弥生の質問に、狂が
「自分の意志が…消えてんだ…。人形、ロボット…そんな状態だ…」
 稔に変わって、答えた。
 弥生が、益々訳が分からない、と言った表情を浮かべると
「美香、目覚めて座りなさい」
 稔が、美香に命令する。
 美香の目が開き、身体を起こした。
「弥生…何でも良い、質問してみて下さい」
 稔が弥生に言うと、弥生はおずおずと美香に質問を始める。
「美香ちゃん…好きな食べ物何?」
 美香は弥生の質問に、全く反応しない。
「美香ちゃんの、好きな事って何?」
 再度別の質問をしても、全く反応がなかった。
 弥生が訝しんだ表情で、稔を見詰めると
「美香、得意な事は何だ、答えなさい」
 稔が美香に質問する。
「はい、ピアノです」
 美香は、稔に即答する。

 弥生は自分の質問と、稔の質問の違いを考え、その答えに驚いた。
「ま、まさか…美香ちゃんって…」
 自分の出した答えに、震えながら稔と狂を交互に見詰める。
 2人は黙って、大きく顎を引き頷いて、弥生の考えが正しい事を告げる。
「これ…前、小父さんの所に、来たのに似てるな…」
 狂がポツリと呟く。
「ええ…脳波の脈動パターンも酷似しています…」
 稔が、ガックリと肩を落として、狂に答える。
 弥生が2人の会話に、治療例がある事を知り
「その人は、治るまでにどれくらい掛かったんですか?」
 稔達に質問した。
 狂は左右に首を振り、溜息を吐いた。
「2年前に、義父の所に連れて来られて…治った話は、聞いていません…」
 ボソリと呟く稔の答えを聞いて、弥生の頬が引きつった。

 狂はブツブツと何か呟いて、考え込み
「よう稔、でもよあの女のパターンと、美香のパターンは違うぜ…。美香は今日、普通に学校にも通ってた筈だ…。あの女の場合は、2年間薬と暗示漬けで、ああ、なっちまったんだ…期間が違う!」
 思い出したように、稔に言うと
「確かに…彼女の場合は、自我が消えてからの時間が長く成り過ぎて、上手く行かなかったのかも知れません。狂サポートお願いします、急ぎましょう」
 稔は美香に向き直り診察を始め、狂はモニターの前に座り、英語で稔にモニター状態を伝える。
 弥生はそんな2人を見詰め
(この2人…高校生よね…私なんかより、ずっと凄いわ…。あれ? この2人って、仲悪いんじゃ無かったっけ? 息ピッタリ何ですけど…)
 その能力に驚嘆し、2人の関係に頭をひねった。
 2人のやりとりは加速し、端から見ている弥生には、最早何をしているか理解出来なかった。
 ただ呆然と2人を見詰め、事の成り行きを見守った。

 その頃2階に上がった真は、気絶している梓の枕元で、全裸になり結跏趺坐を組んで、真言を唱えていた。
 ビッシリと額に汗を浮かべ、全身がピンク色に染まり、身体が一回り膨れたように見える。
 真の緩やかな真言の音に、梓の呼吸が同調を始め、ユッタリと大きな呼吸に変わって行った。
 梓の瞼が、ピクピクと痙攣すると、ユックリと開き始める。
 うっすらと目が覚めた梓は、枕元から聞こえて来る、不思議な音律に耳を馴染ませ
「ここは…」
 小さく呟いた。
「2階の客間ですよ…」
 真言を止めた真が、梓に優しく語りかける。
 梓は驚いて、声のした方を向くと
「つぅ…」
 自分の身体に走る痛みに、声を上げた。
「まだ、回復してないんです…ユックリと動いて下さい…」
 真は梓に手を差しのばして、優しく抱え起こす。
「あ、あの…美香はどう成ったんでしょう…大丈夫でしょうか…」
 梓は真に縋り付いて、娘の安否を問いかけた。
「今は、稔さんと狂さんと弥生さんの3人で、看病中です。貴女は、それよりも自分の事を心配して下さい」
 真の柔らかい優しい目が、梓を正面から見詰め、梓の心を落ち着かせる。

 この時、梓は初めて、真が全裸に成っている事に、気が付いた。
 梓は顔を反らせると
「い、今はお許し頂けないでしょうか…」
 真に向かって、許しを請うた。
「あ、いや…これは、目的が違うんです。私の気を梓に送り込んで、自己治癒力を高めるんです…」
 真がバツが悪そうに、梓に答える。
 梓は以前、真に施された事を思い出し、自分が勘違いした事に、恥ずかしくなって
「も、申し訳ございません…。私の思い違いでした…」
 小さくなって、平伏しようとする。
「ほら、駄目ですって。そんなに早く動くと、傷に障りますよ…」
 真の手が素早く、梓の脇に伸びて、その動きを押さえ、優しく抱え起こす。

「あ、有り難うございます…お気遣い頂いて。本当に情けないです…」
 梓が口惜しそうに顔を歪め、真に謝罪した。
「構いません…さあ、こちらに来て下さい。練った気をお分けしますから」
 真がツイッと梓の手を引くと、梓は引かれるまま、真の身体に抱き留められる。
「あ、真様…私まだ準備が…」
 梓が頬を染め、真に訴えると
「大丈夫です、私に任せて下さい…」
 真は、梓の耳元に優しく囁き、下腹部に両手を当て軽く押した。
「あはん…」
 梓の身体を、電流が流れるように快感が走り、オ○ンコから愛液が溢れ出す。
「普段は、味気ないので使いませんが、今は非常時です。準備出来たでしょ?」
 悪戯っぽく笑う真に、梓はリラックスと恥ずかしさの両方を表情に浮かべ、コクリと頷き抱きついた。
「いきますよ…。最後まで、気を確かに持って、失神しないで下さい」
 真はそう言うと、一気に対面座位で梓を貫いた。

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