夢魔
MIN:作

■ 第11章 計画1

 トラブル続きの夜が明け、全員が弥生の家のリビングに集まった。
 稔と狂と真は昨夜から働きづめで、だいぶ疲労が溜まっている。
 稔は美紀に引き続き、美香の心の絡まった糸を丁寧に解き、何とか自我を認識出来る状態まで戻した。
 真は梓の体力回復のため、かなりの気を送り込み、まだフラフラの状態だった。
 そんな中、稔が口火を切る。
「先ずは奴隷の立場は、忘れて下さい。これから、僕達4人がここに集まった経緯と、これからの計画内容について、話したいと思います。これから先は、計画が完了するまで、質問や要望には答えない積もりなので、今の内に聞いて下さい」
 稔がそう言うと、女達5人は居住まいを正し始めた。
「僕を含めた4人は、有る計画の元、理事長に集められました。その計画はハッキリ言って合法とは呼べません…しかし、現在の法律上非合法とも言い切れないんです」
 稔はそこまでを静かに告げると、全員の顔を見渡し
「この計画は、僕があるSMのサイトで、理事長と接触したのが始まりです。僕の理論に理事長が感銘して、[儂ならば、その実験を行う場所を提供できる]と誘われ、僕は理論を実践すべく、この学校にやって来ました」
 理事長との出会いから、学校に入るまでの経緯を、みんなに話した。
「この計画は、音響を使ったプログラムで、抑圧している性癖を解放して、自分にとってより良いパートナーを探すのが目的です。その為に、貴女達には不本意ながら、強引な手段を用いて覚醒していただきました。この話を聞いて、僕達に賛同していただけないなら、私が責任を持ってその記憶を封印し、目覚める前の状態に戻します」
 稔が一度言葉を句切ると、沙希が手を挙げて質問してくる。

「えっと…それって、今嫌だって言ったら、私は稔様との出来事を全部忘れて、元に戻るって事ですか?」
 沙希の質問に稔は大きく頷くと
「はい。一切の記憶は固く封印し、貴女の場合は処女膜を再生して、何も無かった状態にお戻しします」
 沙希に向かって、断言する。
 沙希が眉根に皺を寄せ唇を尖らせながら、何か考え始めると、弥生が手を挙げ質問する。
「あ、あの…賛同するとどう成るんですか?」
 弥生の質問に、稔が
「貴女に相応しいパートナーが見つかるまで、僕達がフォローします。貴女の希望を満たし、相手の希望が合うような、お互いにとってのパートナーを、全力で探します」
 稔が言い終えると、沙希がハイハイと手を挙げ、再度質問をする。
「あ、あの…もし、ご主人様達の中の誰かを希望する場合は、どう成るんですか?」
 沙希の質問に、他の奴隷達が、一斉に色めき出す。
「構いませんよ…僕達がパートナーに求める条件を貴女達が満たし、尚かつ貴女達が求めるなら、それこそ理想のパートナーです」
 稔の解答に、女達はそれぞれに思考を巡らせ、次の質問を考え始める。

 すると、梓が怖ず怖ずと手を挙げ
「あ、あの…年齢的な問題とか有りますか…」
 包帯だらけの、身体を小さくして稔に質問すると
「ええ…、ここに居る4人で年齢的なタブーが有るのは、庵だけです。後は、特にありませんよ」
 稔は何ら気に掛けずに答えを返す。
 稔の言葉を聞いて、梓と弥生の表情が明るくなる。
 その一方で、美紀と沙希が顔を曇らせた。
 美香はただ普通に、微笑を浮かべ全員の話に聞き入っている。
 未だ美香の心は、服従の世界から抜け出せないでいた。
 元々強い従属心を持っていた美香には、稔達のプログラムが強すぎ、その従属性が昨日の薬物により、爆発的に拡がってしまい、美香の心を覆っている。
 稔はそんな美香に視線を向けると、心の奥でモヤモヤと暗い気持ちが拡がった。
 それが、稔の後悔の念だと言うことは、誰も知る事は無かった。

 稔の思考を遮るように、沙希が手を挙げ、昨夜の稔の言った事を確かめる。
「昨日稔様が仰ってたんですが、今の学校に居る人全員が…その…対象なんですか…?」
 沙希の質問に、稔が頷き
「そうです、今学校にいる500人を越える人間は、全てマゾの資質を持っているか、サドの兆候の強い人間です。サディストの場合、認識しないで目覚めさせると、ただの粗暴な人間に成ってしまいますので、かなり厳選しています。ですから対比としては9:1位の割合です」
 稔の解答に、沙希が不満を顕わにし、質問する。
「え〜…それじゃ、マゾの人が多すぎませんか…」
 沙希の質問に、稔は軽く首を振り
「仕方ないんですよ…どうしても、受け身になるマゾの数が減ると、サディストは食い荒らしてしまいます。ですから、数的優位は受け身の側には絶対的に必要なんです。私の考えでは、これでも多いくらいなんですよ…」
 割合の理由を丁寧に説明した。
 稔の答えに、納得が行かない顔の沙希は
「でも、それじゃ…サディストの数が、絶対的に足りなくなりません?」
 首をかしげながら質問する。
「そうですね、その通りです。ですから、僕達はその人に会うパートナーを世界規模で、探すんです。その為のシステムは、狂が既に準備に入ってます」
 稔が狂を指さし、沙希達に答えると
「それって、私達みたいな性癖の為の、カップル斡旋所みたい…」
 弥生がポツリと呟いた。
「そう、その通りです」
 稔が大きく頷き、弥生を指さした。

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