夢魔
MIN:作

■ 第11章 計画3

 庵の機転により、女達は口を閉じたが、完全に納得した訳でも無かった。
 中でも梓は有る事が気掛かりで、その事を稔に質問する。
「ご主人様…あのトイレでの出会いは、計算尽くだったんですか…。その後の、あの調教も…本当は私の全てを知っていたのに…」
 梓が震える声で、稔に問いかけると
「私もです。保健室に入って来て稔様が、言った言葉は私を騙してたんですね…」
 弥生も稔に詰め寄る。
「あの場合は、仕方が無かったんです。それでは、聞きますがあなた方は、突然現れた僕に[貴女は変態ですから、僕が調教して上げましょう]と言われて、[解りました]と言えますか?」
 稔が答えると、弥生と梓は言葉に詰まる。
「僕は、それでも構わなかったんですが、狂がそう勧めるモノですから、仕方なくシュチュエーションを考えたんです。それに、梓はあの調教が有ったから、僕に心の底から服従を誓えたんじゃないですか?」
 稔の問いかけに梓はドキリとし、胸に手を当て考えると
「誠に持ってその通りでございます…どうか、分を過ぎた質問をした事をお許し下さい」
 サッと平伏し稔に平謝りをした。
「構いませんよ、今はそう言う時ですから…僕は、今までの事を、納得してくれれば良いだけです」
 稔が答えると、梓が顔を上げ再度頭を下げて、元の場所に戻っていった。
 その顔は、既に自分の中で決着が付いたのか、落ち着き払った奴隷の顔に戻っている。
 一人取り残された形に成った弥生は、バツが悪そうに身体を縮めると
「い、いえ…私も気になっただけで、意見が有った訳じゃありませんから…」
 口の中でブツブツ呟きながら、そそくさと元の位置に戻った。

 弥生が元に戻ると、暫く沈黙が流れたが、沙希がハッと何かに気付いて質問する。
「あの〜、どうしてこの5人が、選ばれたんですか?」
 沙希の質問に、他の女達も大きく肯き、その答えに興味津々に成った。
「それぞれ、理由が有ったんですが第1の選考理由は、皆美人でスタイルが良いという事です。次に、それぞれの性格が、多彩だと言う事です。あと、梓と弥生には他の理由も有るんですが…これは後にしましょう」
 稔がそう言うと、言葉を句切って一同を指さし
「最初の理由は見ただけで解りますよね…。次に性格なんですが、これは学校全体を相手にする訳ですから、様々なサンプルデーターが必要になります。性格で、脳波のパターンが違う事も解りました」
 そこまで言うと、次にそれぞれを指さしながら
「勝ち気…、穏和…、根暗…、自立…、従順…」
 沙希、美紀、弥生、梓、美香とそれぞれの性格を、稔が示した。
 稔に性格を指摘され、沙希は頬を脹らませ、美紀は照れ、弥生はいじけ、梓と美香は無反応だった。
「あなた方のお陰で、より素晴らしいシステムが完成したんです。まぁ、欠点も解りましたが…運用前に解って、助かりました」
 稔が女達にペコリと頭を下げた。
 途端に女達は、驚き顔を上げるように懇願する。
 一通り話し終えた感の稔は、暫く黙って女達の質問を待った。

 すると美紀が手を小さく挙げて、質問する。
「あ、あの〜…さっきから気に成ってたんですが…。沙希ちゃんだけが知ってる事って、何ですか…?」
 美紀の質問に、稔が頷くと
「僕達の秘密と目的です…まぁ、秘密と言っても大した事では、無いんですけどね…」
 そう言って、自分達の生い立ちから、それぞれの目的を女達に話した。
 稔が話し出すと、女達の表情は驚き一色に染まる。
 常人の理解の範疇に収まらない話しに、途中で何度か質問が出るが、それにもスラスラと答え、嘘ではない事を証明しながら話を進めた。
 稔が話し終えた時には、皆開いた口が塞がらないでいる。
 一度この話を聞いている、沙希ですら稔の詳しい話しに、驚きを隠せなかった。
「じゃぁご主人様…感情が無いって言うと、今までの笑顔は…作り物なんですか…?」
 美紀がショックを隠せずに、質問すると
「そうです…怒りも、微笑みも、涙も僕の中には有りません…。それを僕は、16年間捜しているんです…」
 静かに美紀に告げる。
 ショッキングな稔の告白を余所に
「真様、生涯の伴侶を求められているって事は…結婚相手ですか…?」
 弥生が真に恐る恐る問いかけると
「はい…、私のような容貌の者が、出す条件としては、かなり厳しいんです、それをクリアして頂かないと、どうにも一族の手前…。でも、伴侶になって頂く方には、私の全霊を注がせて頂きます」
 真は身体を縮めながら、ボリボリと頭を掻いて答えた。

 そんな中、梓が稔に質問する。
「大まかな目的は解りました…。その中で、私たちの役割はどう言ったモノに成るんでしょうか?」
 梓の質問に、それぞれの考えに夢中だった、女達が顔を稔に向けた。
 稔は一つ頷くと
「貴女達はこれから、更に奴隷となる調教を受けて貰い、ある人達を籠絡して貰いたいんです」
 梓達に計画の役割を話す。
「籠絡…!? それって、色仕掛けって事ですか」
 沙希が素っ頓狂な声で、聞き返してくると
「そうです、誘惑してこちらのサイドに引き込む」
 稔が大きく頷いて答える。
(あ〜ぁ…身も蓋も無い言い方…そんな言い方すると、絶対反発するって…)
 狂が大きく溜息を吐いて、口を挟もうとすると、美紀が何かを言いかけた。
 しかし、その誰よりも早く
「ビックリ致しました…その程度の事で宜しければ、何なりとご命じ下さい…。必ずご期待にお応え致しますわ」
 梓がニッコリと稔に笑いかける。
 梓の言葉に、美紀と沙希が驚き、弥生は少し考えると、大きく頷いて
「ご主人様のお客様だと思えば、それは接待の一つですモノ…私も大丈夫です。こんな程度で、躊躇っていたら、もう奴隷としての生活が無くなっちゃうんですモノね」
 稔に微笑みながら答えた。
 稔は弥生の言葉に頷くと、この日初めて美香の名前を呼んだ。
「美香。貴女はどうしますか?」
 稔の質問に、美香はニッコリ笑って
「はい、全てご主人様のご指示に従います」
 スラスラと、まるで決められた、台詞のように答えて頭を下げた。

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