夢魔
MIN:作

■ 第11章 計画6

 梓が元に戻ると、稔は5匹の奴隷を見渡し
「梓も治ったようだし、参加させます。沙希はまだ休養が必要ですね」
 告げると、沙希が進み出て
「私も大丈夫です。参加させて下さい」
 稔に向かって、願い出た。
 すると、庵が低い声で
「沙希、稔さんの決定に逆らうんじゃない…お前は休んでろ」
 鋭く叱責する。
 沙希は、ビクリと震えスゴスゴと後ろに下がり
「申し訳御座いませんでした」
 泣きそうな顔で、謝罪した。
 狂はそんな、庵と沙希のやり取りをニヤニヤ笑いながら、見ていた。
(へへへっ、庵の奴…あんな言い方だったけど、間違い無く沙希を心配したな…)
 狂は庵の無骨な横顔を見て、その心中を推察して一人楽しんでいた。
 そんな中、稔に向かって、真が質問する。
「稔君、美香はどうするんですか? 薬物の影響を抜くのに、私の陽気が必要なら、私は補給しないといけませんが…」
 真の言葉を聞いた、稔が
「昨日はそんなに使ったんですか? それは、大変です。じゃあまず、真さんの陽気の補給から始めましょう。美香の治療には、どれくらい必要ですか」
 驚きながら、真に質問を返した。
「そうですね、弥生と美紀からは貰うとして、梓からも少し返していただく必要が有りますね。練る時間が有れば別ですが、それで足りるかどうかですね」
 真が考え込みながら、稔に返事を返すと
「練る時間は、どれくらい有れば可能です?」
 稔は更に真に質問した。

 真は暫く考え込んでいたが、ポンと手を叩き
「こうしましょう、まず私が、弥生から陽気を補給し、美香に与え。美紀の陽気を受けて、それを練りまた美香に与える。こうすれば、梓の気は必要ないし、弥生も休む事が出来、美紀にも余り負担が掛からない」
 真が稔に説明した。
 すると、そこに庵が珍しく口を挟み
「済みません真さん…沙希にも与える訳にはいきませんか…。傷の治りも少し遅いので…」
 真に依頼する。
 この庵の発言に、沙希と真が驚いたが、一番驚いたのは稔であった。
(庵が頼み事をするなんて…珍しいですね。何があったんでしょう)
 稔は驚きながら、真に向かって
「済みません真さん…庵の意見も、出来れば聞いていただけますか?」
 無理を言い出した。
 真はこの稔の行動にも驚いたが、稔がそこまで言うので有れば、快く承諾する。
「解りました、最後に量を見ながらで構いませんね…」
 真が庵に答えると、庵は本当に済まなさそうに、頭を下げた。
 沙希は、このやり取りの意味が、全く解らず
(え? 結局私は、真様とSEXするんだ…。何でそれで、庵様が頭を下げたんだろ? 何か変なの…)
 一人不満顔になっている。
 全体を一部始終見ていた狂が、背中を見せ、一人腹を抱えて笑う姿を、見ている者は誰もいなかった。

 それぞれの役割分担を、割り振った稔が、狂に向き直り
「こういう事に決まりました、狂は僕をまた手伝って下さいね」
 稔が狂に向かって、依頼すると
「俺は今日は駄目…、それに俺が居なくても、大丈夫なレベルに戻ってるだろ。あんま、当てにすんなよ」
 狂は立ち上がって、稔に背中を向けて片手をヒラヒラと振る。
 稔は無表情に戻ると
「じゃぁ、何をするんですか? 奴隷は今日は使えませんよ」
 狂に向かって質問した。
 すると、狂は顔だけ振り返って、ニヤリと笑い
「悪巧み…」
 稔に告げる。
 稔が訝しそうにしていると、狂は顔を戻して
「もう1匹の目覚めさせる方法、考えなきゃいけないんだろ? 任しとけ、俺に当てがある。庵も借りてくぜ…」
 そう言うと、庵に合図してリビングを出て行った。
 稔は庵に頷いて、送り出すと
(珍しいですね…狂があんな風に、動き出すなんて…。ろくでもない事を考えてなければ良いんですが…)
 狂の態度の変化に、一抹の不安を抱えた。

 狂が出て行ったリビングで、稔は暫く考えていたが
「さあ、始めましょう真さんお願いします」
 気を取り直して、作業を進め出す。
 真は弥生を連れて、2階へ上がり、稔は美香を布団に寝かせ、器具を準備し始める。
 梓・美紀・沙希の3人は、何もする事が無く手持ち無沙汰に、稔の動きを見ていると
「ねえ、沙希…稔様大学出てるって、先生言ってたけど…何処か知ってる?」
 美紀がポツリと、沙希に問い掛けて来た。
「ううん…知らない…。でも、確かお義父様と同じ大学ですって…」
 沙希が稔達の会話の中から、記憶していた事を、美紀に話す。
 その言葉に梓が、小声で話し掛ける。
「美紀様、沙希様…。稔様のご卒業されている大学は、ハーバードです。雑誌に書かれておりました。それと、こう言う治療の時は、私語は厳禁で御座います、お気をつけ下さい…」
 梓の小声の注意と、稔の出身校に、美紀と沙希は口に両手をあて、目を見開いて驚いた。
(ハーバード! ってスッゴク頭の良い学校じゃないの? そこを、飛び級で卒業!)
(私でも知ってる超有名校! 何、じゃあ、稔様ってやっぱりスンゴク頭良いんだ!)
 2人は両手で口を塞いだまま、顔を見合わせ、意味もなくコクコクと頷き合った。

 暫くすると、2階から足音が聞こえ、リビングの扉が開き真が現れる。
 真の腕の中には、弥生がグッタリとしていた。
「誰か机の上のピルケースを取って下さい、それと水もお願いします」
 指示を受けた、梓は素早く立ち上がり台所に駆け出し、テーブルに一番近かった美紀が、ケースを差し出す。
 真は弥生を布団の上に寝かせると、弥生を抱え起こした。
 沙希と美紀はその弥生の姿を見て、悲鳴を上げる。
 美しい艶やかだった髪は、光を失ってボサボサに絡み合い、張りの有った瑞々しい素肌は、老人のように萎れ、明晰な印象の端正な顔は、一挙に老けていた。
 真は受け取ったピルケースから、黒っぽい独特の匂いのする整腸剤に似た薬を取り出し、弥生の口に押し込むと、自分の口に水を含んで、口移しに与えた。
 弥生が薬を飲み込んだのを確認すると、優しく抱え上げリビングを出て行った。

■つづき

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