夢魔
MIN:作

■ 第11章 計画10

 そこにリビングの扉を開けて、真・弥生・沙希・美紀が現れた。
「稔君、取り敢えずは終わりました。美紀と沙希は小一時間の休憩で、身体も馴染むでしょ」
 真はそう言うと、リビングのソファーに座り、弥生を自分の膝の上に載せ、労をねぎらっている。
 沙希はピューと台所に走り込み、真に冷たい水を差しだし、その前に正座する。
 美紀は梓を包む、稔と美香の事が気に掛かり、ソワソワとしていた。
「今日はもう、私と弥生は休養します」
 真は沙希の持って来た、水を半分ほど飲み干して稔に宣言し、残りの半分を弥生に飲ませる。
「ご苦労様でした。ユックリ休んでください」
 稔は頷くと、真に向かって了承した。
 真は稔の了承を受けると、大きく1つ溜息を吐き、弥生をそのまま抱きかかえ、リビングを後にする。
 真が出て行くのを、ジッと沙希が目で追い、リビングの扉が閉まった瞬間
「み、稔様! 源先生って、何なんですか? 地球人?」
 稔に向かって、飛びかかりそうな勢いで、質問した。
 沙希が質問すると、美紀がブンブンと頭を縦に振り
「私も知りたいです…先生の身体の構造って、どう考えても、理解できません」
 にじり寄りながら、稔に答を求める。
 稔は2人の勢いを受け、困った顔で薄く笑うと
「僕も解りません…ただ、あの先生の秘術は、まだまだ有るみたいですよ…ねえ、梓…」
 涙を拭う梓に、話を振った。
 急に話を振られた梓は、何の事だか解らない様子だったが
「ほら、梓が初日に真さんを、経験した話ですよ。あれを、教えて上げて下さい」
 稔が説明すると、途端に納得し、思い出して生唾を飲み込んだ。

 美紀と沙希の興味の対象は、稔から梓に変わり、稔は立ち上がって美香の治療に使った、器材類を片付け始める。
 稔が片付けを始めると、美香がソッと近付き
「稔様、私にもお手伝いさせて下さい…」
 稔に囁くように申し出た。
 稔は少し考え
「デリケートな物が多いですから、丁寧にお願いしますね」
 ニッコリ笑って、了承する。
 美香は嬉しそうに微笑むと、ソッと器材類に手を伸ばし、稔の注意に従って、片付けを始めた。
 美紀がそれに気付いて、大声で
「あ〜っ! お姉ちゃんだけずるい〜! 稔様を独占したら駄目なのに〜」
 美香を指さし、猛抗議を始める。
 稔が苦笑を漏らし、美紀を止めようとすると
「美紀はママの話が気になったんでしょ、こちらは、私だけで充分だし、美紀は不器用でしょ。それと、そんな大声を出すと、奥でお休み中の真様に、迷惑が掛かるわよ…もっと気をつけて」
 美香がピシャリと言い放ち、美紀の抗議を跳ね返した。
 美香の言葉で、美紀は二の句が全く継げないで黙り込み、梓は美香の言葉に固まった。
(美香ちゃん…あんなに、ストレートに物を言うなんて…初めて聞いたわ…)
(お姉ちゃん…パワーアップしてる…。これじゃ、絶対に勝てない…)
 美香はスッと美紀から視線を外すと、しずしずと稔の片付けの手伝いを再開する。
 稔は、梓と美紀のリアクションを見て、やはり美香にも変化があった事を知った。
(まあ、トラウマが小さく成ったんです。悪いようには変わらないでしょ…)
 稔は心の中で、そう考え片付けを続けた。

 片付けが終わった稔が、戻ってくると美紀が、嬉しそうに擦り寄ってくる。
 まるで、愛玩犬が主人の足下にじゃれつくようだった。
 美香はスタスタと、梓の横に進んで、静かに並んで正座する。
 美紀にとっては、それがとても嫌味な態度に映ったのか
「お姉ちゃん、何でそんなに冷静なのよ…。昨日でしょ、ご主人様に拾われたの…」
 美香に対して、攻撃の糸口を探す。
 すると、美香は美紀に対して
「時間は関係無いわ。私は稔様が、自分のご主人様だって言う事を、一目見た時確信したの。だから、仕えさせて頂くの。美紀のように恋人気分じゃ務まらないわよ…」
 またも、ピシャリと言い放ち、攻撃をカウンターで返す。
「私は、ママのように成りたい…稔様達に心から、服従して仕える…。そんなママのように…」
 美香は梓を見て、静かに自分の思いを美紀に告げた。
 梓は、美紀を見てワナワナと震える。
(こんな…駄目な母親のように成りたいなんて…美香ちゃん…)
 梓は涙を堪え、俯いた。

 しかし、そんな言い争いを、主人は許さなかった。
「美紀…まだ解っていないようですね。貴女の、敵愾心から昨日大変な事が起きたと言う事を…」
 稔は無表情になり、美紀の前に立ちふさがって、叱責すると
「美香…貴女もです。今、わざと美紀の敵愾心を煽りましたね…そんな事で、梓のようになれると本気で思って居るんですか?」
 美香に振り返り、同じく叱責した。
 2人は震え上がって、平伏し謝罪を始める。
「稔様お許し下さい! 反省します」
「稔様、どうかお許し下さい。今後このような事は致しません」
 美紀と美香の謝罪は、稔には届かなかった。
「いいえ許しません…お仕置きです」
 稔の言葉は、冷たく2人に降り注ぎ、2人を萎縮させる。
「2人で仲良くできるまで、僕は許しませんからね…覚悟しなさい」
 稔はそう宣言すると、全員を居間に連れて行った。
 稔のお仕置きが、2人に加えられる。

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