夢魔
MIN:作

■ 第12章 幕間6

 2人になった親子は、お互いの顔を見合わせクスリと笑い合い、自宅に向かって歩き始める。
「ねぇママ…」
 美香が梓を呼びながら、梓の腕に自分の腕を絡めて、身体をすり寄せた。
「はい、美香様…何で御座います?」
 梓が美香に聞き返すと、美香は少し膨れっ面になり
「もう、それ止めて欲しい…だって、私はママの娘なんだし、それに今まで見たいに喋れないもん…」
 梓に不満をぶつける。
「すみません…ですが、これは稔様の命令ですから、守らない訳にはいきません」
 梓は美香に、否定できない答えを返す。
「それは、解ってるけど…何て命令されたの?」
 美香が質問すると、梓が病院のクアルームでの命令を答えた。
 美香は梓の答えを聞いて、何か考えると
「じゃぁ、私からの命令…稔様が居ない時は、私には敬語を使わないで、今迄のように話す事」
 梓に笑いながら命令した。
「解ったわ美香ちゃん…これで良い?」
 梓は困った顔を、ニッコリ微笑ませ、美香に問い掛ける。
 美香は笑い返しながら
「うん! それでOK」
 梓の手にじゃれついた。

 美香は梓の腕にしがみついて、ニコニコ笑いながら、話を続ける。
「ねぇ、ママ…私達のしてる事って、他の人から見たらとんでも無い事よね…」
「そうね、多分普通の人は、理解しないで、[変態]の一言で括られちゃうわね…」
「そうよねぇ〜…でも、今更私戻れないし…戻ろうとも思わない…。ママは?」
「あら、ママが戻れると思う?」
「あははは、私以上に無理そう…。でも、私今のママ…好きよ…。だって、そんなに綺麗なのに、女を捨てる何て勿体無いし、憧れにも成るモン」
「ふふふっ…有り難う美香ちゃん…。でも、親子で好きな方が同じなのに、嫉妬しないのも変な話よね…」
「あ〜っ! それ有る! 今日ママが稔様に、Hされてる時、羨ましいと思ったけど、悔しいとか思わなかったモン…どちらかって言うと、自分が不甲斐なかったわ」
「それは、多分稔様に対する従属の気持ちが強くて、あの方のする事に間違いが無いって、信じているからよ」
「そうか〜…そう言えばそうかも知れない…稔様の言葉って、何かこう、心の中まで染み込んで、従わずには居られなくなる…そんな感じだもの…」
「それが強くなったら、驚くわよ…今日のママみたいにね…。あれは、凄かった…あんな幸福感を感じたの、生まれて初めてよ…」
 梓は立ち止まり、胸に手を当て、余韻を思い出すようにジッと目を閉じた。
 美香にはその梓の姿が、とても妖しげで美しく感じ、ホウと溜息を吐いて見とれる。
 奴隷の親子は、その後も仲睦まじく腕を組み、まるで恋人のように、家路に付いた。

 家にたどり着いた梓と美香は玄関先で、踞った美紀と沙希を見つけ
「3回目? どうだった?」
 美香が問い掛ける。
 沙希と美紀は、親指を立てて、ガッツポーズを取ると
「危なかった〜危うく、玄関の外で、動くところだった…これで、2回成功ね。お姉ちゃんは?」
 美紀が荒い息を吐きながら、美香に聞いてくると
「うん、私はあと1回。ハンバーガーショップのカウンターに並んでる時に1回有ったから」
 ケロリとして答える。
 それを聞いた梓が、驚きながら
「美香ちゃん…そんな素振り、少しも見せなかったわね…」
 言うと、美香はニッコリ笑って
「私多分、こんなの得意かも知れない…。我慢しきれた時の方が、ちょっと危ないし…こう、[従いました!]みたいな感じが堪らないの…」
 自分の肩を抱きながら、ブルブルと震えてみせる。
 そこには引っ込み思案で清楚な美香は、もう居なかった、そこに居るのは、服従する事に感じる、奴隷が一匹いるだけだった。
 梓はそんな美香を見て、クスクスと笑い、美香と沙希は、呆気に取られる。

 リビングに着くと、美紀は3人掛けのソファーにダイビングし、美香は1人掛けのソファーに座り、沙希はクッションにお尻を降ろした。
 梓は早々にキッチンに向かうと、コップを3つと2リットルの清涼飲料水をトレイに乗せて、テーブルに置き、正座すると3人に飲み物を差し出した。
「ママ…まだ、続けるの…」
 美香が呆れ顔で、梓に問い掛けると
「ええ、美香ちゃんの命令は、ちゃんと聞いてるわよ…、美紀様と沙希様には、ご命令を頂いてませんから」
 梓は美香にニッコリ笑って、答える。
 美香が溜息を吐いて、美紀と沙希に事情を話すと
「私も命令します、おば様私もご主人様達の居ない所では、以前のように話して下さい」
 沙希が梓に向かって命令した。
「ママ、私も命令する。前の話し方に、戻って…それと、昨日は本当にごめんなさい。まだ、ちゃんと謝ってなかったし、今謝ります」
 美紀がソファーから飛び起き、床に正座して命令した後、深々と頭を下げる。
「ふぅ…解ったわ…、稔様達の前以外では、いつものように喋るわ…。それと美紀ちゃん、貴女の事も怒って無いわ、稔様が精神的に不安定だったって仰ってたから、美紀ちゃんのせいじゃない」
 梓がそう言うと、美紀は梓に飛びつき
「本当にごめんなさい…ごめんなさい…」
 梓の膝に縋り付き、わんわん泣き始めた。
 梓は泣き続ける、美紀の頭をいつまでも微笑んで撫でいた。

 しかしそんなアットホームな雰囲気を、美紀のオ○ンコに仕掛けられたバイブが、現実に引き戻す。
「きゃふん」
 美紀は一声上げ、お尻に手を回しバネ仕掛けのように身体を引き起こすと、暴れ始める快感に身をさらす。
「んくぅ〜〜…どうして、これ、狙ったように動くの〜〜…」
 美紀は頬を真っ赤に染め、誰とは無しに訴える。
 実際、美紀だけでなく、美香と沙希もバイブに襲われていた。
「んも〜〜っ、良い雰囲気台無しー!」
 沙希が文句を言いながら、快感に耐えると
「稔様達の道具だから、ひょっとして、何かのセンサーが付いてるのかも、知れないわ…」
 美香が眉を動かしただけで、平然と分析する。
 狂が側で聞いていたら[ピンポ〜ン]と思わず言いそうな答えを、美香が出した。
 そのとおり稔がランダムと言った機動間隔は、実際は心拍数や脈拍を元に、一番リラックスした時に作動するように成っていた。
 つまり、バイブの動きは、油断した時を狙って動き始めるという、極めて悪質な造りだったのだ。

■つづき

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