夢魔
MIN:作

■ 第12章 幕間12

 一端出て行こうとした狂は、何かを思い出し、振り返ると
「そうそう、今日俺が話した事は、全部内緒な! 稔に知られたら、俺がグエッだぜ」
 自分の首を絞める真似をしながら、おどけて釘を刺す。
 沙希はそんな狂の首に、腕を巻き付けながら飛びつくと、頬にキスして
「は〜い、絶対に言いませーん。狂様、お話有り難うございました〜」
 狂に満面の笑顔で、感謝を告げる。
 すると、美香と美紀も立ち上がり、沙希と同じように抱きついて、口々に感謝しながらキスをした。
 狂は3人の美少女に揉みくちゃにされながら、真っ赤になり照れ始める。
「や、止めろ! 止めろってー!」
 狂は奴隷達を振りほどいて、急いで扉を開けて逃げ出す。
 閉まった扉の向こうから[馬鹿野郎〜]と狂の声が響いてきた。
 3人の奴隷達は、クスクスと笑い合い、次第に声を上げおなかを抱えて笑い有った
「ねえ、ねえ…狂様ってあんな物言いだけど、本当は優しい人何じゃない? 悪戯好きだけど…」
 沙希が顎に右手の人差し指を当て、首を傾げながら口にすると
「優しい人は頷けないけど、悪戯好きは認めるわ…どちらかと言うと、子供っぽい?」
 美香がクスクス笑いながら告げる。
「本当…まんまと騙されちゃった…。でも、沙希ちゃん本当に感じてたの?」
 美紀が沙希に興味津々で、身を乗り出して聞いてくると
 沙希は顔を真っ赤にして、コクリと頷いた。
 美紀は沙希の素直な反応に、驚きながら言葉を続けようとするが
「何時までも、こんな格好で居るのは、どうかと思うんだけど…。お風呂入ってみんなで消しましょ…」
 美香がその間に割って入り、落ち着いた声で、2人に提案する。
 2人は揃って頷くと、美香を押しながら風呂場に向かった。

 3人はお風呂を沸かすと、仲良く一緒に入った。
 狂に書き込まれた落書きは、とても一人で消せる場所と量では無かったからだ。
 湯船に浸かっていた美紀が、美香の裸を身ながら
「お姉ちゃんて本当に細いわね…今体重いくつ?」
 羨ましそうに呟くと、美香は身体を隠しながら
「別に良いじゃない…そんな事聞いて、どうするの?」
 美紀に言葉を返す。
 美香が身体を隠すと、沙希が
「美香さん動かないで下さい…この腰の奴なかなか消えない…」
 美香の腰を擦りながら、文句を言った。
「痛い、痛いわ沙希ちゃん…そんなに力を入れないで…お願い…」
 美香は顔を歪めて、沙希に訴えると
「ごめんなさい美香さん…でも、これしつこくて…」
 腰の落書きを指さして、言い訳する。
「そうだ、除光液使おうよ…あれなら、直ぐに落ちるはずよ。私取ってくるね〜」
 美紀は湯船を飛び出すと、身体を拭きもせず、全裸のまま梓の部屋に飛び込んで行った。
 美香が注意をする間も無く、美香は飛び出していくと、直ぐに戻ってくる。
「えへへへっ、廊下ビチョビチョに成っちゃった…」
 赤い舌をペロリと出して、美香と沙希に言うと、除光液とコットンを差し出した。
 3人はそれぞれ相手を変え、身体中の落書きを消し、身体を洗い合う。
 その光景は、とても綺麗で心温まる雰囲気だった。
 キャーキャーとふざけながら3人は、泡まみれに成りお互いの身体を綺麗にする。
 身体を綺麗に洗った後、3人は風呂から上がり、狂達のおすすめサイトを見ながら、勉強会を再開した。
 3人は貪るように、それらのサイトを覗き、お互いの感想を述べ、それぞれ感じ方が違う事を知る。
 夕食を軽く取った3人は、ベッドに寝そべり雑談していたが、疲れていたのか、いつの間にか寝入ってしまった。

 美紀の携帯から着信を知らせる、メロディーが流れてくると、美香がそれに気付いて、携帯のサブディスプレーを見る。
(あら? ママからだわ…どうしたのかしら…)
 不思議に思いながら、何の気なしに美香の枕元に有る、時計に目をやり凍り付いた。
 時計の時刻は11時を回り、梓との約束の時間をとうに過ぎていたのだ。
『あっ、もしもし…美紀ちゃん…今どこ? 美香ちゃん側にいる?』
 電話の梓の声は、どこかせっぱ詰まった様子だった。
「ごめんなさいママ、美香です」
 美香が携帯に向かって、謝ると電話の向こうからホッとした声で
『良かった〜…。何度電話しても、美香ちゃんが出ないし、凄く心配したの…』
 梓が告げる。
(ママ…私こんなにママに、心配を掛けてたのね。ごめんなさい…)
 美香は梓の母心を感じ、目頭が熱くなった。
「ママ、私は大丈夫よ。稔様のお陰で、もう本当に大丈夫だから…そんなに心配しないで…」
『そうね、あの方には感謝しても仕切れないわ…。家族全員の心をケアして頂いたんだもの…』
 梓がしみじみと、稔の感謝を口にして
『それは、そうと…どうする? 準備は出来てるわよ…』
 美香達の永久脱毛の話に、切り替える。
 打って変わった、梓の言葉に美香は直ぐに返事をした。
「あ、うん…美紀と沙希ちゃん寝ちゃってるから、直ぐに起こして、ママの所行くね」
 美香の答えに、梓が携帯を切る。

 美香は美紀と沙希の寝顔を見詰め、フゥと溜息を吐くと起こしに掛かる。
「美紀、沙希ちゃん…もう、11時回ったわよ。ママが病院で、お待ちかねよ」
 美香は2人を起こすと、2人は目を擦りながら、身体を起こす。
「さあ、そんなボサボサ頭で、人前には出られないでしょ…寝ぼけてないで、早く準備なさい」
 美香の言葉に2人は、モソモソと準備を始めた。
 美香は寝ぼける2人を尻目に、タクシーを呼び身なりを整え、いそいそと準備を終える。
 3人は美香の呼んだタクシーに乗り、病院へ向かい梓に出迎えられ、処置室へ向かった。
 処置室のベッドに横たわり、3人は次々に梓の手によって、陰毛を永久脱毛する。
 美紀と沙希はキャーキャーと喜んでいたが、美香は今日の夕方、狂が行った言葉が甦っていた。
[お前らの内、誰かはあぶれる事になる]その言葉が、トゲのように美香の心に突き刺さる。
(私は、稔様より年上…選ばれない事の方が、きっと確率が高い…。でも、良いの…稔様に選ばれなくても…稔様の指名する方に添い遂げる…それが、稔様に仕える事に繋がる…)
 美香の心は、この時点で完全に稔に向いていた。
 それが叶わぬ思いでも、美香は構わなかったのだ。
 稔が選び、指定した者にその生涯を尽くす事が、稔に対する忠誠だと、美香は心を決めていた。

■つづき

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