夢魔
MIN:作

■ 第13章 調教4

 一方隣の居間に移動した、庵のグループは、庵の指示を受けながら、自分達を責めるための道具を準備している。
 居間の床には、工事現場で良く見る、5m四方の大きな青いビニールシートが、拡げられていた。
 庵は手に黒い革製の、スパンキング用の平鞭を手にし、手首の力だけで軽く振り抜いている。
 平鞭なのに庵が振ると、バットのスイングのように重い風切り音が、居間に響いた。
(凄い音…あんな力で打たれたら…どんな風に成っちゃうんだろう…)
 弥生は準備しながら、庵の方を盗み見て、顔を青ざめさせる。
 2人は庵に指示されたモノを手にすると、庵の前に正座した。
 正座した2人を見下ろしながら、庵が低い声で説明を始める。
「今からお前達には、苦痛を覚えて貰う…。人間は、一度体験したモノを基準に物事を判断するから、ここで、それなりの苦痛を覚えて、他で受ける苦痛に耐える身体を作るためだ」
 庵の低い響くような声が、2人には処刑人の宣言のように、2人の身体を萎縮させた。
「今日は手始めに、蝋燭とこの平鞭だ」
 そう言って、庵は手首を返して、鞭を振る。

 ブオッと低いうなりを上げて、平鞭が風を切り、2人はビクリと首を竦めた。
「俺は説明は余り好きじゃない、お前達は俺の命令に従って、苦痛を感じそれに耐える事だけを考えろ」
 そう言うとしゃがみ込んで、2人が準備した手枷と足枷を、2人に嵌める。
 足枷は足首を止めるスタンダードの物だが、手枷は手首から肘までを覆う手甲のような物で、金環が5個付いていた。
 枷を嵌め終えた庵は、2人の髪の毛を束ね、ゴム製の水泳帽のような物を被せ、髪の毛を完全に隠す。
 ぴっちりとしたゴム製の帽子は、顔の前面だけが露出するように作られていて、顎の下で固定するようになった居た。
 庵は横に開いてある穴から、弥生の耳を出すと、顎の下の留め具を嵌める。
 全頭帽は弥生の頭の形にフィットし、まるで髪の毛をそり落としたように見えた。
 庵は弥生の後ろに回ると、両手を伸ばしたまま後ろに回し、一番肘に近い部分の金環を固定する。
 弥生の胸は大きく反らされ、形の良い大ぶりの乳房が、ブルリと揺れてさらけ出された。
 手の自由を奪われた弥生は、それだけで顔を強ばらせ、蒼白になっている。
 庵はそんな弥生の顔を覗き込み
「恐いか…?」
 静かに低い声で、問い掛けた。

 弥生は庵の声を聞いて、お尻の穴がギュッと締まる程、ゾクリとさせられ、頷きながら
「は、はい…恐いです…」
 掠れた声で、返事を返す。
 庵は弥生の返事を聞くと、ニヤリと獰猛な肉食獣のような笑みを浮かべる。
 その、笑みを見た弥生は[ひっ]と小さく息を飲み込み、顔を引きつらせた。
(こ、恐い…普段はそう感じないけど…、い、今は凄く恐い…。でも…身体が熱いわ…)
 庵の笑みは、マゾヒストの心を握りしめて離さない。
 それだけの、迫力と威圧感に満ちている。
 弥生の身体は、熱を帯びピンク色に染まり始めた。
 隠しようのない乳房の頂は、見る見る固くなり、その存在を主張する。
 庵はそんな弥生の乳房に手を被せると、荒々しく揉みしだく。
「うっ…くっ…はん…」
 荒々しい愛撫に、苦痛の声を漏らす弥生。
(くうっ…い、痛い…そんなにされたら…潰れてしまいます…。くぅ〜…あ〜私のオッパイ…。あふぅ〜〜〜っ…な、何? 今の、あ〜〜〜っオッパイが…オッパイが熱い…これ…気持ちいい〜〜〜っ…)
 グニグニと庵の大きな手で、力任せに揉まれ、形を変える乳房を、弥生が見ていると、弥生の中で何かが弾けた。
 庵は弥生の変化を見て取ると、親指と人差し指で乳首を摘んで握る。
「あひゅ〜〜〜〜っ」
 弥生は頭をのけぞらせ、快感を押さえきれずに、乳首の愛撫だけでアクメを向かえた。
 弥生は自分の身体に起きた事が、信じられないという顔で、庵を見詰める。
「どうした…? こんな快感もある…、知らなかったろ」
 庵が低い声で弥生に告げると、弥生は驚いた顔のまま、コクコクと頷いた。

 庵は弥生の身体から離れて後ろに回ると、両足首の枷を両手首の金環に固定する。
 弥生の身体は、正座から膝立ちに変わり、後ろに引かれて、バランスが取りづらそうになっていた。
 庵はそんな弥生の肩を、おもむろに後ろに押した。
 弥生は途端にバランスを崩し、後ろに倒れ込む。
 後頭部が床に付く寸前、庵が弥生の身体を抱き止め、ソッと下ろした。
 弥生は衝撃が来るのに備え、固く眼を閉じていたが、思わぬ感触に驚いて目を開ける。
 そこには、思わぬ近さで庵の顔があり、あの獰猛な笑みで笑いかけ
「足と膝を広げてろ」
 低く響く声で、短く命令した。
 弥生は庵の命令に、弾かれたように両膝と足を開いて、後頭部との3点でブリッジの体勢を作る。
(違う…庵様は…他の方とは全然違う…。稔様は、服従心で従わせ、真様は優しさで従わせるけど…。庵様は…威圧感…ううん違う。純粋な恐怖感だわ…)
 庵の本質を知った、弥生はガタガタと、止めようもない震えに襲われていた。
 庵は美香も同じように拘束し、仰向けに寝かせると立ち上がって、2人の間に立ち
「これが、お前達の身体を飾る…蝋燭だ」
 そう言って直径5p長さ15pほどの、真っ赤な蝋燭を2人に見せる。
 2人が息を飲み、その赤い蝋燭を見詰めていると、庵は無言でライターを摺り、炎を移した。
 暫く庵と弥生と美香の3人は、その蝋燭の炎を見詰めていたが
「行くぞ」
 不意に庵が短く宣言し、その手を動かした。

 一方その頃、2階に上がった真と梓は、客間の布団と畳の上で、対峙していた。
「正直な所、私はこの調教は賛成していません…」
 真がいつになく真剣な表情で、梓に告げている。
「ですが…、こういう言い方をすると、卑怯なんですが、稔君は少しでも早く、梓の完成を望んでいます…。その上で、梓にはかなりのリスクを背負う、この調教を選ぶかどうかを、判断して頂きたいんです…」
 真は頭をボリボリと掻きながら、梓に説明した。
 梓は布団の脇の畳に正座し、ジッと真の顔を見詰め、話を聞いている。
 真は梓の視線を受けながら、また口を開いた。
「この調教…、私達は修行と呼んでいますが、これは何年も修行を納めた者が、受けても3割失敗します。失敗すると良くて、廃人…悪い時には死ぬ事もあります…。梓のような…普通の人ですと…成功率は、五分五分…いえ、四分六で失敗の方が高いでしょう…」
 沈鬱な声で、肩を落とし梓に告げる真。
 梓の表情は、少しも変わらず真を見詰める。
「今私は、稔君にこの秘術の話をしてしまった事を、本当に後悔して居るんです…」
 真は苦虫を噛み潰したような顔で、梓に告白した。
 真が黙り込み、沈黙が続くと梓が平伏し
「どのような結果が待とうと、稔様が望まれるなら、私の答えは[宜しくお願いします]しか有りません」
 淡々と真に返事を告げる。
 真は大きな溜息を吐き、頭を強く掻き始めた。

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