夢魔
MIN:作

■ 第13章 調教14

 弥生は朦朧とした意識の中、自分の周りでパタパタと風邪が吹くのを感じた。
 弥生は自分の手を、軽く誰かが叩く感触に、新しい指示と思い手に持った蝋燭を離す。
 すると、その指示は手首から肘を通り、肩まで移動する。
 弥生の意識は困惑し、覚醒を始めた。
(な、何…私はどうすれば良いの?)
 意識の目覚めた弥生は、自分のこれからの行動が解らず戸惑う。
 すると、左腕にも指示とも、刺激とも知れない、鞭が手から肩まで移動する。
 丁寧なその動きに、弥生の精神は、一挙に冷水を浴びせられた。
(この動き…ま、まさか…真様! う、嘘…い、いや…こんな、浅ましい姿…見せたくない!)
 弥生が、疑念を抱き、狼狽えて現実を否定すると、その否定は脆くも崩れ去る。
 弥生の手に、鞭を振るっていた者の手が触れ、ソッと押し開いたからだった。
(あ、ああぁーっ…嘘…こんな事を為さるのは…真様しか居ない…どうして、どうして来られたのですか…。こんな…こんな浅ましい姿を…あなた様だけには、見られたくは有りませんでした…)
 弥生は自分の乳房や腹を、丁寧に、ひたすら丁寧に蝋を払い落とす動きに、その鞭を振るう人間を限定し確信する。
 そして、自分の前から、ペシペシと何かを打ち付ける音がした時、弥生は1つの事を心に決めた。
(真様にちゃんと言おう…私は、こんな風にされるのも好きです…変態なんですって…)
 弥生は、自分の本質を変えられない事を、自分で理解していた。
(真様が…それを、お認めにならなかったら…もう良い…。私は、どうなっても…構わない…)
 弥生が自分自身の行く末に、気持ちを固めた時、弥生の前に真が跪いた。
 そして、真の手が弥生の顔に手を添える。

 稔の手が美香の舌に付いた蝋を、丁寧に剥ぎ取り、口の周りの蝋を剥がす。
 美香はこの時点で、自分の蝋を剥がしているのが、稔だと理解した。
(こんな状態だと、舌に付いている蝋が、もっとも危なく、その次に口の周り…こんな、理路整然と動く方…稔様しか居ない…どう…どうする…美香、時間がないわよ…)
 美香は一瞬で、今の状況を把握し、この先の行動を考える。
 稔の手が、口の周りの蝋を取り除き、瞼の蝋に手を掛けた時には、美香の答えは、決まっていた。
(今、目があったら、ニッコリ笑って、稔様に感謝を示して、私の被虐願望は、抑え込む! それしかないわ)
 美香が心の準備を整えた時、稔が美香の顔全体を覆う蝋を剥がす。
 稔が美香の目を覗き込んだ時、美香も稔の視線を受け止める。
 稔を見詰める美香の身体に、異変が起き始めた。
 頬は紅潮し、瞳はトロリと蕩け、身体がブルブルと震える。
(ああっ…だめ…がま…ん……で……き……な………)
 美香の頭の中は真っ白になり、稔の視線に押されるように尻餅を着き、両足を持って妖しく囁いた。
「稔様…ここがさいごで…ございます…」
 美香は稔の視線に負け、自分の妄想に負けた。
 股間を全て晒し、自分の変態性を全て晒す。
「美香はどっちで取って欲しいの?」
 稔の甘い声は、完全に美香を奴隷に導く。
「はい、美香は稔様のもちものです…、稔様がおもうように…あつかってくださいませ…」
 美香は稔に思う存分嬲って欲しかった、それを口に出せない自分が、愛おしかった。
 美香の心の中には、[隷属]と言う言葉だけが、満ちあふれる。
 美香のオ○ンコに突き刺さる、蝋燭を引き抜くと、稔は平鞭を持ち、美香のオ○ンコを叩き始める。
 その鞭の力は、美香の全身を覆う蝋燭を落とした力とは、比べようもない程強かった。
 美香は足を開いたまま鞭打たれ、ビクビクと震え絶頂を感じ続ける。

 真の手が弥生の額から、固まった蝋を引き剥がし始める。
 弥生の顔を覆う蝋燭が、次々に剥がれ、弥生の目が開いた。
 真を見詰める弥生の瞳からは、ポロポロと涙がこぼれ、真の手を濡らす。
「弥生苦しかったですか? 痛かったんですか? もう大丈夫ですよ…泣くのをお止めなさい…」
 真が優しい微笑みを向け、弥生に囁いた。
(う、うう〜…真様…優しくしないで下さい…弥生は…弥生は、こんな風に虐められて感じる…浅ましい女です…優しくされる資格なんて…有りません…)
 弥生の瞳から溢れる涙が、大粒に変わり、口から嗚咽が漏れ始める。
「だ、大丈夫です…泣かないで…。今、直ぐに取って上げますから…」
 真は更に泣き始める、弥生に狼狽えて、蝋を剥ぐ手を早めた。
 弥生の顔の下半分を覆う、蝋燭を剥ぎ終えると、弥生の嗚咽は固く閉ざした口に、飲み込まれる。
 真は固く口を閉ざし、涙を流す弥生に、心配そうな目を向け覗き込む。
(弥生…言うの…ちゃんと言うのよ…自分の性癖…自分が押さえられないもの…ちゃんと真様に告白するのよ…)
 真の心配げな視線が、弥生の心を苦しめる。
(もう、こんな目で、私を見ては呉れないかも知れない…。この目が、蔑みと、侮蔑に変わるかも知れない…。でも、真様に隠す事は、真様に嘘を吐くのと同じ…全て伝えなきゃ…例え嫌われても…)
 弥生は意を決して、口を開き真に自分の事を伝えた。
「し、真様…私は大丈夫です…。私は、庵様に蝋燭を垂らされ、鞭で打たれて何度もイッてしまいました…。私の身体は、苦痛を快楽にしてしまう…浅ましい身体なんです…どうか、どうかお気を遣わないで下さいませ…」
 そこ迄言った弥生は、さめざめと泣き始める。

 真は泣き続ける、弥生を驚きの目で見詰めた。
 真の驚きの視線に、弥生は絶望を感じる。
(ああぁ〜…やっぱり…こんな女は…真様のお相手になんか…成れない…)
 弥生が真から目線を外し項垂れて、泣き始めると
「知っていますよ…。ここに居られる女性は、全てそうなんですから…。それに、痛みが快楽になるのは、誰でも成ります、ただ、それを引き出す過程が難しいだけであって、弥生が感じたのは、庵君が上手かっただけです」
 庵はニコニコと微笑みながら、弥生に告げた。
 弥生は真の言葉に、弾かれるように頭を持ち上げて、驚きの表情を真に向ける。
「え? じゃあ…じゃあ、真様は私をお嫌いに成らないで、頂けるんですか?」
 弥生は震える声で、真に問い掛けた。
 真はニッコリ笑って
「成るわけ無いじゃないですか…弥生のような美しくて、可愛くて、聡明な人。私が嫌われる事はあっても、私が嫌う事はありませんよ。例えどんな性癖があってもね」
 優しく頭を撫でながら、弥生に告げる。
 弥生は真にしがみつくと、声を上げて泣き出した。
(嬉しい…嬉しい…嬉しい…。良いんだ…真様の前では…全部見せても…この方なら受け止めて下さるんだ…)
 弥生は先程の調教の多幸感など、比べものにならない幸福感に包まれる。
 真は弥生に抱きつかれ、困ったような微笑みを浮かべ、ボリボリと頭を掻いていた。

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