夢魔
MIN:作

■ 第13章 調教16

 稔はフッと溜息を一つ付くと、美香の首輪に掛けた手に、力を込め引き寄せ
「庵の責めに耐えた良い子に、ご褒美を上げましょう…」
 優しく囁きながら、唇を重ね美香の口腔に、言葉を送り込んだ。
 美香は稔の言葉に、驚くも直ぐに満面の笑みに変わり、稔の首に腕を絡め唇を貪った。
「但し、僕の手は真さんみたいにはいきませんよ、覚悟はして下さいね…。手で女性を嬲るのは、結構得意なんです…」
 稔の宣言を聞いた美香は、頬を強張らせる。
 美香を抱きかかえている右の脇から左手を背中に回した稔は、そのまま左手で美香の左腕を持ち、上半身の自由を奪うと、ユルユルと美香の乳房から下腹部までを、右手の色んな部位で撫で始める。
 指の先、掌、指の背、爪、手の甲。
 それらを掃くように這わせたり、撫でるように這わせたり、何かを塗り込むように這わせる。
 次第に稔の右手の五指が、意志を持ったようにバラバラに動き始め、美香の肌を刺激した。
(え…えっと…これは、愛撫…? お手々で打ってくれる訳じゃ…ないのかなぁ…)
 美香が戸惑いながら、稔に身を任せていると、その刺激は突然やって来た。
「きゃふ〜〜〜ん」
 美香は稔の突然の刺激に、思わず声を上げる。
 腹を撫でていた稔の指先が、凄い速度で美香の乳首目がけて走り、中指の先と人差し指の爪が乳首を挟むように、掠めて行った。
 そしてそれが、始まりの合図だった。

 稔は右掌を美香の左乳房に打ち付け、直ぐに脇腹に鞭のようにしならせながら、手の甲を打ち付ける。
 稔は手の様々な感触を駆使して、美香の身体に打擲を加えた。
 時には激しく、時には優しく、時には擦るように、そして、その合間合間に優しく肌を撫でる。
 美香は何が何だか、解らなかった。
 自分に与えられる刺激が、痛みなのか、快感なのか、認識が付いて行かなくなり、口からは刺激に合わせて、高く低く声を上げ、激しく頭を振り、稔に操られてゆく。
 稔はさながら、ギタリストのように美香の身体を打ち、弾き、撫でて美香から、嬌声を引き出す。
 美香は稔の与える刺激に、音を奏でる楽器に成り、快楽の波に飲み込まれていった。
 それに気が付いた真が
(稔君は…激しいですね…あんな事は、私にはとても真似できません…。私に出来るのは、せめて、これぐらいですかね)
 美香が受ける快感に、弥生も負けないようにと、自分の手に気を通わせる。
(うわぁ〜〜っ…し、真様…だめ〜〜〜っ! こんな、ときに…そんなことされたら…弥生…くるっちゃう〜〜〜〜っ…あはーーー)
 弥生は真から伝わる快感が、ドンドン膨れてくる事に、驚愕し喉を仰け反らせ、美香に負けない嬌声を上げた。
 居間を包む声は、最早意味をなさない悦楽の大合唱だった。
 2匹の奴隷は、主人の与える刺激に、喉を震わせ続け、股間から夥しい量の愛液を垂らし、時折震えながら潮や小便をまき散らす。

 その少し前、稔達が2匹の奴隷の蝋を剥がすために、意識を向けた時に戻る。
 稔達が蝋を念入りに取り始めると、庵はリビングに続く扉から、スッと音も無く出て行った。
 リビングに着いた庵は、ワイヤーに身体を支えられ、失神する沙希を見つけ、足早に駆け寄る。
 沙希の状態を調べた庵は、スッと沙希の身体を抱きかかえ、持ち上げると床にソッと寝かせた。
 庵はキッチンに移動すると、手ふき用のタオルを水で濡らし、沙希の元に戻って、失禁で汚れた沙希の股間を、丁寧に拭い始める。
 綺麗に拭い終えると、乱れた沙希の髪の毛を撫でつけ整えて、音も無く離れた。
 沙希から離れた庵は、無言で稔が使った責め具を、点検し片付け始める。
(大丈夫…何処も壊れていない…。改良は成功だ…、奴隷にも酷い傷跡も残っていない…。そう、俺は点検に来ただけだ…自分の作った道具を調べるため…点検に来た…それだけだ…)
 庵はブツブツと自分の中に、理由を作りながら、自分の行動を正当化しようとした。
 自分が一人の奴隷に心惹かれていると、認める事が出来なかったのだ。
 どんな大きな身体をして、どんな異常な性癖を持っていて、幾人もの女性とプレイをようとも、庵は恋愛経験の未熟な思春期の16歳である。
 ましてや、母親の虐待に会い女性には、負の感情しか抱いた事のない庵にとって、自分の中に育っている感情が、恋愛感情だとは、認める事が出来なかった。

 庵は全ての道具を片付け、立ち上がるとリビングを後にしようとする。
 リビングの出入り口に着くと、庵は振り返って床に眠る、沙希をジッと見詰めた。
 暫く見詰めていると、沙希の意識が覚醒を始め、軽く身じろぎし始める。
 庵はドキリと心臓が波打ち、急いで踵を返して、リビングを後にした。
 庵の出て行ったリビングで、横に成っていた沙希の目から、ツッと涙が一筋流れる。
 モソモソと起き上がった沙希は、横座りになると涙を拭い
(庵様…どうして、沙希に何もしてくれないんですか…身体を拭ってくださったのは何故なんですか…)
 自分を抱えて、床に移してくれた巨漢が、その後一切興味を示してくれなかった事が、悲しくて堪らなかった。
(私は魅力がありませんか…。ならどうして、髪の毛まで整えてくださったんですか…。庵様のお心が解りません…)
 沙希は項垂れ、啜り泣く。
 沙希は庵に抱えられた時点で、眼を覚ましていた。
 しかし、余りの予想だにしない展開に、声を掛けるタイミングを外してしまったのだ。
 そして、思わぬ庵の優しさ、壊れ物を扱うような所作に、感動すら覚える。
 だが、庵はその後、沙希に興味を無くしたように、一切触れる事無く道具を整備し、片付けて出て行った。
(庵様にとって…私は道具と同じなんですね…。壊れていなければ、そこに置いておかれる…ただの道具…)
 沙希の涙は、嗚咽に変わり泣き崩れた。
 押し殺すような鳴き声が、リビングを満たしてゆく。

 居間に戻った庵は、自分の居ない30分程の間に、変わり果てた状況に目を覆う。
(稔さん…真さん…。これじゃ、ただの快楽調教です…)
 居間は2匹の奴隷の嬌声と、体液の匂いが立ち篭めていた。
 庵は入り口で、パンパンと自分の手を大きく打ち鳴らし
「稔さん、真さん終わりましょう…。それ以上すると、そいつら死んじゃいますよ…」
 2人に調教の終わりを勧め、奴隷達を確認する事を告げた。
 庵の言うとおり、弥生と美香は白目を剥きながら、快感の海で溺死寸前だった。
「うわ! …弥生! 弥生…! 大丈夫ですか…」
「あっ、本当ですね…僕とした事が…つい調子に乗ってしまいました」
 お互い責める手を休めると、弥生と美香を気遣う。
 2人は息も絶え絶えで、グッタリと成っている。
 特に酷いのは弥生の方で、真が呼びかけても、その意識は中々戻らなかった。
 真は慌てて弥生を抱え上げて
「すいません、私は弥生を何とかしますから、これで失礼しますね! あっ、それと梓も後で、マッサージしないと、今日は使い物にならないと思います。成功はしましたから、お風呂には入れて上げて下さい」
 そこまで言うと、イソイソと出て行った。
 バタバタと収束に向かう調教は、庵の諦めに似た溜息で、終わりを告げる。
 残った奴隷は、グッタリとし、稔の腕の中で余韻に震える、美香だけだった。

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