夢魔
MIN:作

■ 第14章 専属(梓)8

 梓は稔の言葉に、嬉し涙を目に溜め、鼻から下を両手で覆いワナワナと震える。
「あ、有り難うございます…。こんな私にそこまで、お気遣い頂くなんて…、嬉しくて胸が張り裂けそうです…」
 梓は感謝の言葉を、心から稔に伝え、身もだえした。
「ですから、梓のオ○ンコの力を解放するのは、梓が仕える主人だけにして下さい。その他の人には、決して使わないようにして下さいね」
 稔は梓の言葉を制しながら、更に釘を刺すが、梓はそれを別の意味に取る。
「はい、私のオ○ンコは、稔様以外の誰にも、全ての力を使わない事を誓います。ですから、私をお側に置いて下さい、私を稔様に仕えさせて下さい」
 梓は勢いに任せて、稔に終生の服従を差し出した。
 稔は梓の言葉に暫く黙り込むと
「解りました、梓は今から僕が主人となり、管理しましょう。理事長や狂達関係者には僕から[梓は僕の専属にします]と言っておきます」
 あっさりと、梓の服従を受け取る。
(えっ! 受けて頂けた…こんな、こんな年経た私を奴隷にして下さる? こんな、才能に溢れた、美しい方が、私の主になって下さるって…今、確かに言って頂いた!)
 梓は予想外の稔の返事に、呆気に取られた後、ボロボロと大粒の涙を流し始め、全身を小刻みにふるわせた。
 梓の口は、パクパクと動くが、そこから声は漏れてこず、ただ、震えるだけだった。
 稔がニッコリと微笑みかけると、梓の時間がやっと動き始める。
 梓は稔に向かって、勢い良く頭を湯船に突っ込んで、平伏しようとするが、いかに広い湯船でも3人が入っていては、そのスペースも無く、稔が制止した。
 梓は稔に起こされた勢いを利用して、そのまま稔に抱きついて、涙を流す。

 事の成り行きを稔の背中から見守っていた美香は、余りの展開に呆然と2人を見詰めている。
 美香の思考は、稔の承諾の言葉から、完全に停止していた。
(ママが…稔様の奴隷に成っちゃった…。稔様の奴隷が、決まっちゃった…)
 美香は呆然と、その言葉だけを頭の中で繰り返し、自分の頬を伝う涙にも気付いていない。
 梓は稔の肩越しに、涙を流す愛娘の姿を見つける。
 悲しい涙が愛娘の頬を伝っていた、本来なら抱き寄せて慰めるのが、母である自分の努め。
 だが、その愛娘に涙を流させた、張本人は他ならぬ、母親である梓だった。
 梓はキュッと唇をかみしめ、涙を流す美香を見詰める。
(美香ちゃんごめんなさい…でも、駄目なの…ママは、稔様無しではもう生きて行く事が出来ないの…。それに、これはママだけの力では、どうにも出来ない事だし、決して譲れるモノでもない…。こんな、ママを許して…)
 梓の変化に気付いた稔が、ユックリと美香に向き直ると、美香の視線とまともにぶつかった。
 稔の視線を受け止めた美香の感情は、その時爆発する。
 ハラハラと流れていた涙は、滂沱に変わり、全身をワナワナと震わせた。
 稔は、そんな美香を不思議そうな目で見詰め
「美香はどうして泣いているんですか?」
 平然と美香に質問をする。

 稔の質問に、美香の押さえていたモノが吹き出した。
「どうして泣いているのか、お判りになりませんか? 稔様がママを奴隷にしたからです! 稔様が特別な奴隷にママを…ママを指定したからです! 私達は…私は、もう稔様に仕える事が出来なく成ったからです。お慕い申していました…。憧れてもおりました…稔様にお仕えする事を夢見ていました。ですがその夢が今、潰えてしまったんです…これで、涙がこぼれない訳が有る訳無いじゃありませんか」
 美香は一気に捲し立てると、稔に詰め寄り、泣き崩れる。
 稔は困り果てた顔でボリボリと頭を掻き
「え〜っと…美香? 僕がいつ梓を特別な奴隷にすると言いました?」
 美香に質問をした。
 稔の質問に、美香はガバッと顔を上げ
「今! たった今、ママの従属をお受けに成ったじゃ有りませんか。稔様の専属の奴隷に成ったじゃ有りませんか」
 稔に縋り付きながら、血を吐くような声で稔に訴える。
「ええ、その通りです。僕は梓の終生の服従を受け取りました。ですが、それと僕の特別な奴隷とは何の関係もありませんよ。最初に僕は言いませんでしたか? 僕は、僕に感情を教えてくれる女性を理想としています。ですから、こんな手の込んだ計画にも参加しているんです。僕はこの考えを変えるつもりは毛頭ありません。僕は、梓に一言も特別な奴隷にするとは、言っていませんよ」
 稔の言葉に、美香はビクリと震え記憶を探り始めた。
(た、確かに稔様はママの服従は受け取られたわ…でも、特別な奴隷って言う言葉は一度も出なかった…)
 稔の言葉を思い返して、徐々に冷静さを取り戻す美香。

 そんな美香をよそに、稔は淡々と話を続ける。
「今の梓はさっきも話していた通り、とても危険な状態です。ですから、僕が主人となって管理すると言ったんですよ。梓をこのまま野に放てば、間違いなく争奪戦が始まります。そんな梓を管理する為には、専属の主人が必要不可欠です。今の主人の中では、庵はトラウマが有りますから梓の相手は難しいし、狂はあの性格です…真さんに至ってはSMに興味が有りませんから、梓が満足しないでしょう。僕達はそれなりに経験を積んだサディストです、そんな中でもこれ程手に余るんですから、梓の相手を見つけるのは並大抵ではありません。必然、有る程度の条件を満たす僕が、梓の管理者になるのが当然の流れだと思うんですが」
 稔は美香に丁寧に説明した。
 稔の説明に、美香の表情が輝き始める。
「じゃぁ、じゃぁ稔様の横は、まだ空いて居るんですね? 美香の夢は終わってないんですね?」
 美香は稔に念を押す形で、質問した。
 稔は大きく肯き
「美香の夢がどうかは解りませんが、僕の横はまだ決まっていませんよ」
 ニッコリ微笑みながら、美香に伝える。
 美香の表情が、完全に元に戻ると、稔が美香の耳に口を寄せ
「でも、美香がそれ程僕を思っていて呉れていたとは、思いませんでしたよ…」
 小声で囁き、頬に優しく口づけをして顔を覗き込む。
 美香は耳どころか、首筋まで真っ赤に染めて、小さくなっていった。
(稔様の意地悪…そんな事言わなくても、良いじゃないですか〜…でも、そんな所も大好きです…)
 美香は早鐘のようにリズムを刻み出す心臓を意識しながら、モジモジと股間を摺り合わせる。

 美香に説明した稔は、振り返って梓を見詰めると、大きな溜息を吐いた。
(次は梓ですか…今度はどうしたんですか…)
 梓は悲しみを顔前面に打ち出し、項垂れている。
 稔は梓に向き直ると
「どうしたんです? せっかく望んでいたモノを手に入れたのに、そんな顔をして…」
 優しく穏やかな声で話しかけた。
「何でも有りません…少し夢を見ただけです…」
 梓は唇を少し尖らせ、拗ねた風情で稔に答える。
 稔は溜め息を一つ吐くと、梓に説明を始めた。
「梓良く聞いて下さい。梓が僕の専属になると言う事は、梓にとって少なからずメリットがあると思いますよ。先ず第一に、梓が僕の専属なんですから僕の身の回りの世話は梓の役割に成って行きます。それに、梓の管理も当然僕の仕事になりますから、今のように一緒にお風呂に入る事や、普段の生活や、SEXまで僕の管理下に入ります。そうなれば、必然僕と居る時間は今とは比べものに成らなくなります。これは、梓にとってメリットではありませんか?」
 稔の説明に、梓の機嫌が途端に変わる。
「それでは、私は稔様だけにお仕えする事を考えれば良いんですか? 他の方達は気にしなくて良いんですか?」
 梓は稔ににじり寄り質問すると
「他の3人や、これから増える方達は、全てゲストです。そう考えて、接して下さい」
 稔は、明快に梓に答えた。

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