夢魔
MIN:作

■ 第17章 始動1

 梓は病院の最上階の廊下の突き当たりにある、重厚な扉の前に立っている。
 目の前にある木の扉の奥は、医院長室で有った。
 トントンとノックをして、中からの言葉を待つ梓。
 部屋の中から鷹揚な声で、医院長が声を掛ける。
「入りなさい」
 妙に甲高い声で、それでも精一杯威厳を保ちながら、入室を許可した。
 扉を開いて梓が中に入ると金田満夫は、思わず生唾を飲み込んだ。
(この間見た時も思ったが…どうしたんだ…、この色っぽさは、何なんだ…)
 金田は梓の変わり様に、執務机越しに目を見張りながら、その身体を無遠慮に上から下まで、睨め上げる。
 その視線には、あからさまな好色の色が覗き、白衣の下の身体を想像している事が、一目で解る程だ。
 そんな視線を梓は、そよ風の様に受け流し
「ご用件は何でしょうか?」
 鈴が鳴る様な美しい声で、丁寧にお辞儀をしながら問い掛ける。
(ど、どうしたんだ…以前は、こんな目で見ると侮蔑の表情を向けたのに…。私をそこまで無視するのか…)
 梓の態度の変わり様に、金田は驚き、勝手に解釈して苛立ちを憶えた。
「別に君には用は無いんだが、是非とも柳井君と話がしたくてね…。連絡を取って欲しいんだ」
 金田が梓にぶっきら棒に依頼の内容を告げると
「それでしたら、今日のお昼にお連れしますわ。たまたま、この間の食事のお返しを、今日のお昼にする約束でしたので…」
 梓は驚く程あっさり、金田の申し入れを受ける。
 余りにもあっけない返事に、金田はポカンと口を開け、梓を見詰めた。
 梓は輝く様な微笑みを浮かべ、優雅に頭を下げながら
「それでは、お昼過ぎ…時間は12:30位になると思います。またお伺い致します」
 約束の時間を告げると、踵を返して医院長室を後にする。

 梓の態度に気圧され、呆然としていた金田は、扉が閉まっても数分間、魂を飛ばしていた。
 ハッと我に返ると
「な、何だ…。この間のレストランでも態度が違っていたが、今日の態度は、また一段と違うぞ? 一体何が梓を変えたんだ…」
 醜い顔の眉間に皺を寄せ、ブツブツと独り言を呟き始める。
 驚きと不機嫌さに顔を歪めていた金田だが、その身体は正直で、下半身は痛い程勃起していた。
 一方、扉を閉め退出した梓は、廊下を歩きながら携帯電話を取りだし、ダイヤルを始める。
 携帯の呼び出し音が始まると、階段室に身体を滑り込ませ、携帯電話を耳ににあて繋がるのを待った。
「もしもし、梓です。ご指示通りお昼に、伺う事をお伝え致しました」
『そうですか。では、それまでは、普通に働きなさい。時間になったら、僕が迎えに行きます』
「はい、お待ちしております。ご主人様」
 通話相手の稔の声を聞いた瞬間、梓の身体から淫蕩な雰囲気が溢れ出し、妖艶さが増す。
 梓は稔の奴隷として、仕える事を許可された為、呼び方を[稔様]から[ご主人様]に変えていた。
 それは、梓自身も望んだ事だった。
 複数の主人に仕えるのでは無く、稔だけを主人と仰ぐ事を許された証だからである。
 梓は、稔に[ご主人様]と語り掛けた時、身体の奥から熱い体液が溢れるのを感じていた。
 しかし、その体液は体外に流れる事は無い。
 梓のオ○ンコは、稔の嵌めた金具でピッタリと膣口を閉ざされ、その中も巨大なバイブが塞いでいる。
 そしてそのバイブは、中に空洞が有り、溢れ出す愛液を溜め込む仕組みになっていた。
 オ○ンコのバイブはアナルに嵌められたバイブとチューブで繋がっていて、バイブ内に溜め込まれた愛液は、一定量溜まるか、締め付ける圧力が高まると直腸に排泄される。
 つまり、梓は感じれば感じる程、自分の愛液で浣腸をされ続けるのだった。

 通話が切れた携帯電話を胸に抱き、とろけた表情を浮かべる梓の眉根に、突然悩ましい皺が寄った。
「くっ…くふ〜っ…あ、あん…」
 オ○ンコとアナルに嵌め込まれた、バイブが同時に動き始めたのだ。
 胸に抱き締めていた、梓の携帯が着信を知らせる。
 梓が着信音から、相手を理解し直ぐに通話ボタンを押した。
「ご、ご主人様…」
 興奮に掠れた声で、梓が通話相手を呼ぶと
『今、8時丁度…お昼までその状態で居なさい。タップリ色気を振りまいて、金田を驚かせるんですよ』
 稔は梓に残酷な指示を与える。
(お、お昼まで4時間…。私は、イク事も出来ず、淫らさを振りまくのですね…)
「はい、ご主人様。このままで、お仕事をさせて頂きます…」
 梓は震える声で、主人の意志を理解し返事を返した。
『我慢出来なくなったら、イッても構いませんが、回数分のペナルティーは覚悟しなさい』
 稔は梓に告げると、返事も待たずに通話を切る。
 返事を返そうと開きかけた梓の口は、通話が切れた事により、そのまま熱い吐息を漏らした。
(梓はご主人様の所有物です…ご主人様の命令には、何があってもお応えします…)
 プルプルと震えながら、快感を押さえ込み、その身の内に淫蕩さを蓄えて行く。
 息を整え、姿勢を正し歩き出そうとした瞬間、アナルのバイブが振動を強め、直腸に熱い愛液を放出する。
「くふぅ〜ん…はん…はぁ〜〜〜…」
 クネクネと腰を淫らに振り、快感に浸りそうになる身体を引き留めた。
(ご主人様…梓は、踏みとどまりました…。梓は、ご主人様のご指示を忠実に守るオモチャです…)
 梓は稔に対する隷属心を煽り、快感を押さえたが、それは、諸刃の剣で自分の感度も上げてしまう。
 ドンドン感度が上がり、梓のオ○ンコは愛液を溢れ出させ直腸内に溜められる。

 梓の身体は、稔の専属奴隷となった日から、稔の管理下に置かれ、食事や睡眠、排便まで一切の自由は消えていた。
 食事は稔の食べ物の残りを食べ、睡眠は催眠術で強制的に眠り、排便は直腸洗浄され、排尿に至っては、常に取り付けられているカテーテルで、自分の意志に関係なくさせられている。
 稔が側にいない時は、携帯で連絡を待ち許可を受けてから、自分で行う。
 連絡がない時は、連絡が来るまでただひたすら待つ、それが決まりだった。
 梓から、梓の都合で連絡を取る事は、許されて居ない為である。
 梓は、人の持つ自由を稔に完全に奪われていた、いや、譲り渡していたのだった。
 梓の何も無い直腸内には、梓の愛液だけが純粋に溜まって行く。
 その溜められた愛液は、稔の指示で、金田の前で垂れ流さねばならない事を梓は理解している。
 その時の口上も考えなければならない。
 それが、奴隷の務めであり、稔の望む事だと熟知していた。
 梓に取って思考や行動の基本は、常に[主人の求める事]が中心と成り、それ以外の物は些末な事に成っている。
 梓は最早、肉で出来た操り人形、痴態を晒す為のオモチャにまで堕ちていた。
 しかし、堕ちてしまった事を梓は後悔していない。
 何故なら、それは梓が稔との関係で唯一選択し、自ら望んだ事だからだ。
 その位置が梓の心の安らぐ場所であり、その姿が今まで心の奥にひた隠しにしていた、梓の本性だったのである。

 梓が階段室を出て廊下を歩いていると、後ろから小走りに走る靴音が近づいて来た。
 梓にはその靴音の主が、誰で有るか理解できたが、まるで関心を示す事無く歩き続ける。
「あ、梓! 待ってくれ」
 柏木が後ろから梓を呼び止めるが、梓は無視して歩調を緩める事すらしなかった。
 柏木の手が、後ろから梓の細い肩を捕まえ、強引に引き留める。
 立ち止まり振り返った梓の瞳を見て、柏木は肩を放し後ずさった。
 柏木を見詰める梓の瞳には、一切の感情が込められていない。
 まるで路傍に落ちている、石ころを見る様な目線で、柏木を見詰め
「お早う御座います」
 会釈し朝の挨拶を交わすと、クルリと踵を返して歩き始めた。
 柏木は彫像の様に固まって、梓を見送る。
(な、何だ…今の視線は何なんだ…。まるで関心が無い…いや、俺自身を見ていない様な視線…。この間の夜との変わり様は、一体何なんだ…。何か、危ない気がする…彼女に係わるのは、もう止めた方が良いかも…)
 柏木は訳が解らないまま、何か得体の知れない恐怖感に襲われ、梓に近づく事を断念しはじめた。
 流石に年若く総合病院の副医院長の座を狙うだけ有って、梓の変化に気付き恐怖を感じる、柏木の危機感知能力は大した物と言える。
 柏木は肩を落として踵を返すと、廊下を戻って行った。

 梓は午前中の診療を稔の指示通り、オ○ンコとアナルを嬲られながら行い、その妖艶さに磨きを掛けた。
 溢れ出した愛液は直腸を満たし、圧迫する程溜まっている。
 迫り来る便意の苦痛、両穴を穿られる快感、絶頂を我慢する苦しさ、妖艶に染まって行く自分の姿を見詰められる羞恥、それら全てを[主人の命令]と受け入れる隷属心。
 いつしか梓の妖艶さは、見る者を同じ領域に引きずり込む様な迫力を伴っていた。
 元々梓に好意を寄せていた、通院患者の女性は、梓に乳房を触診をされただけでアクメを迎え、もうお役目を終えた年齢の男性患者は、10数年振りに自分の分身が立ち上がった事に驚く。
 看護師達は梓の変化を口々に噂するが、誰一人本人に問い掛ける勇気は持たなかった。
 そんな診療室も昼前には、予定の患者の診察が全て終わり、梓は自室に戻って待機する。
 梓が執務机に座り、カルテの打ち込み作業をしていると、梓の部屋の扉がノックされた。
 梓は直ぐに作業の手を止め、飛びつく様に扉に走り、ソッと扉を開ける。
 梓は扉と同時に身体を引き、入り口の正面を空け、来訪者を迎え入れた。

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