夢魔
MIN:作

■ 第18章 使役11

 金田は苦虫をかみつぶしたような表情で、梓を見詰め、手にはさみを持つ。
 梓に近付くと金田はおもむろに、テグス糸にはさみを引っかけ、限界まで引き上げる。
 夢うつつだった梓の瞳が、痛みに極限まで開き、腰を上に突き上げた。
 しかし、その結果は身体を反ることになり、より激しい痛みを産む。
「がはぁ〜〜〜っ!」
 梓の悲鳴が上がった瞬間、金田はテグス糸を切った。
 焼け付くような痛みが、突然無くなり安堵した梓は、全身の力を抜く。
 ドスンと音を立てて、梓のお尻が机に落ちると、梓はまた悲鳴を上げて、跳ね上がる。
 机の上にバラ撒かれていた、十数個の画鋲が、梓の艶やかなお尻に、鋲のような彩りを与えていた。
「これぐらいの事で、そんな悲鳴を上げるなんて、大した事は…無いな…」
 金田が侮蔑するように、梓に投げ掛けると、梓はヨタヨタと机の上で正座をし、金田に向き直り
「もうしわけ…ございません」
 梓は呂律の回らない声で、机の上で頭を下げた。
 正座した梓の脛には、お尻に刺さりきらなかった、画鋲がめり込んでいる。
 金田は梓の謝罪する姿を見詰め
(良く分かった…。どうやら、こいつの中の少年に対する思いは、全てに勝るようだ…。どんな事も、あの少年を引き合いに出すと、意地に成るみたいだな…)
 笑顔を浮かべる。
 だが、金田本人も気付いていない。
 金田が浮かべた笑顔は、妙に引きつり、ぎこちないモノだった。
 その笑みの歪みは、梓の魂まで染め抜いている、稔に対する激しい嫉妬以外の何物でもないが、金田自身それと同等以上に、稔を尊敬する念が強いため、稔を本気で揶揄する事が出来ない。
 それどころか、自分の思いの中ですら、稔の事を[ガキ]とか[小僧]等の、侮蔑を含んだ呼称で呼ぶ事が出来なかった。

 金田は梓に命じると、ソファーから立ち上がり、バーカウンターの下から、2リッターのペットボトルと漏斗とクスコを手に戻ってくる。
「さあ、これを跨げ」
 そう言って、梓の足下にペットボトルを置きながら、漏斗をボトルの口に乗せ、クスコを握る。
 梓はふらつきながらも、ペットボトルを跨ぎ
「クスコは、いりませんわ」
 そう言って、アナル栓に手を掛け、引き抜こうとした時、金田がそれを制止する。
 梓が訝しげな表情で、金田を見ると、金田は絨毯の上に座り込み、梓の股間をかぶりつきで覗き込み
「俺が外してやる…。お前は中身を垂れ流して、ボトルに入れろ。ちゃんと何をするか、言いながらやるんだぞ」
 梓に命令した。
 梓は表情を固くすると、金田に言われたとおり、アナルの位置を調整しプラグが抜かれるのを待った。
 金田は即座にアナル栓に手を伸ばし、その底部を掴む。
 金田がアナル栓のロックを外し、アナルから引き抜くと同時に、梓が大声で叫ぶ。
「淫乱奴隷の排泄をご覧下さい…。お腹の中で、愛液割りを作る淫乱奴隷の恥ずかしい姿を、お笑い下さい」
 梓はその瞬間、肛門括約筋を開き
「あは〜〜〜ん」
 一際大きな甘い声で鳴き、ドボドボと排泄した。
 梓の直腸を満たしていた、ブランデーの愛液割りは、勢いよく漏斗を通じてペットボトルに溜まる。
 最後の一滴までペットボトルに収めた梓は、熱い吐息を吐きながら、金田に身体を寄せて密着し、耳元に囁く。
「いかがで御座いましょう…。梓は、お目を喜ばせることが出来たでしょうか…」
 梓の囁きに、金田は梓の乳房を握り込み
「お前の変態振りを、しっかり見せて貰った…」
 残忍な笑みを浮かべ、掠れた声で呟いた。

 梓は苦痛に顔を歪めた後、勝ち誇ったようにニッコリ微笑み、立ち上がろうとした。
 だが、梓の酔った足に、力が入らずバランスを崩す。
 グラリと狼狽えた表情を浮かべた、梓の身体が机の上から倒れてゆく。
 梓の転げ落ちる方角には、ソファーの木製肘掛けが待ち構えていた。
「きゃぁ」
 固く眼を閉じ短い悲鳴を上げ、衝撃に備えた梓は、思いの外柔らかい感触に驚いて、目を開く。
 梓の目の前には、しかめた表情の金田の顔が有った。
 梓が机から落ちると同時に、金田は身体を投げ出して、梓を抱き止めたのだ。
 金田は背中にソファーの肘掛けを、めり込ませ苦悶の表情を浮かべている。
 金田のブヨブヨに緩んだ胸の上で、梓の大きな胸が拉げていた。
 苦痛に歪んだ金田の顔に、梓はソッと自分の顔を近づけ
「あ、有り難う御座います。お怪我は有りませんでしょうか?」
 訝しみながらも、心配そうに問い掛ける。
 金田は自分の行動が、信じられなかった。
 気付いた時には、自分の身体を投げ出し、梓を抱き止めていた。
 太股や尻には、梓がバランスを崩した拍子に落とした、数個の画鋲が刺さっている。
(何故、俺はこんな事をしている…。何故、梓を庇ったんだ…)
 呆然とし反応を返さない金田に、梓は本心からの心配を向け
「医院長様! どこか、お怪我をされましたか?」
 縋り付きながら、肩を揺さ振り問い掛けた。
「あ、ああ…大丈夫だ…」
 曖昧に答えた金田の、焦点の合った目に飛び込んで来たのは、泣きそうな顔の梓の顔だった。

 金田はその梓の顔に、ドキリと胸を震わせる。
 潤んだ瞳で、心配そうに覗き込み、縋り付く梓。
 今まで、どれほど夢想したか解らない表情が、目の前に有り、そして、まごう事無く自分を見詰めている。
(本当に綺麗だ…梓…。何度、この視線を向けられる事を、夢に見たか…)
 金田が下から恐る恐る手を伸ばすと、梓の身体がビクリと震えた。
 その途端金田の心は、現実に引き戻される。
(くくくっ、そうだ、その通りだ…。こいつの瞳は、俺を見ちゃ居ない…。こいつは主人に命令され、俺に身を預けているだけだ…)
 金田は梓の頬を撫でようとして、下から伸ばした手を、宙で握りしめ梓の肩に当てると、グイッと押し離し
「イチチ…どけ!」
 痛みを訴えながら、短く命じた。
 梓の表情には、金田が手を伸ばしビクリと震えた瞬間、隠しようのない怯えが走っていたのだ。
 金田は、梓の下から起きあがると、太股やお尻に刺さっていた、画鋲を取り払い、梓に背を向ける。
 梓は金田に何か声を掛けようとするが、酔った頭では、何も浮かばず、ただ、呆然と見詰めるだけだった。

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