夢魔
MIN:作

■ 第19章 出張3

 梓の態度に狼狽えていた金田は、梓の変化に気づくのに遅れた。
 革ベルトでギュウギュウに締め上げられた身体を折り曲げた梓は、見る見る顔を真っ赤に染める。
 金具の部分が、ミチミチと音を上げ、梓の身体に掛かる負荷を物語る。
 肺が圧迫され、呼吸が止まり、血流を押さえられ、梓の美しい顔が鬱血し始めた。
 梓の身体全体から、ギシギシミチミチと有り得ない音が、わき上がっている。
 梓のオ○ンコとアナルのバイブは、固定した股帯により背中側に巻き込まれ、膣壁と腸壁を引っ張り上げ2穴を拡げ、クリトリスは千切れんばかりに引っ張られていた。
 乳房は圧が掛かり、締め付けを強めながら、乳首を上方向に背中側に引っ張り、苦痛を産む。
 梓の変化に気がついた隣の男が、我に返り金田を突いて慌てて注意を促す。
「金田! 早く起こさせないと、死んじまうぞ!」
 男の言葉に、金田は飛び上がり、梓に顔を上げさせる。
 身体を起こした梓の顔は、真っ赤に染まり目が充血していた。
(何だ…この女は…どんな調教を受けてきたんだ…。普通あの状態なら、自分から顔を上げて許しを請うだろ…)
 金田に注意を促した男は、鬱血した顔が戻り始めた梓の顔を見て、驚きを隠せないでいた。
 他の二人の男性も、その足下に踞る女性達も同様に、梓の顔を見つめている。
 金田だけが、梓の服従心の強さを理解していない。
 奴隷を調教した事が無く、いつも金銭を払ってプレイするだけの金田には、梓が示す服従の意味が全く分かって居なかった。

 金田の横に座った男は、梓の美しい顔をマジマジと見詰め、息を飲んでいた。
(金田の話だと僅か10日の調教だと聞き、タカを括っていたが只事じゃないぞ…。何年も手塩に掛けた奴隷でも、ここまでの行動は稀だ。5年目に成る、由美子ですらこんな事は出来ない)
 金田の横に座る男は、名前を溝口啓治(みぞぐち けいじ)と言い、隣の市内にある総合病院の医院長である。
 身長175p体重90s年齢は金田と同じ50歳で、大学の同級生だった。
 金田と違い社交的で華やかな性格は、真反対の金田と不思議と馬が合い、30年来の付き合いになる。
 若くからスポーツで鍛え上げた身体は、厚みを帯び重厚な雰囲気を醸し出していて、穏和な表情と相まって信頼できる医師として近隣では有名だった。
 その裏の顔は、若くからサディズムに目覚めた真性のサディストである。
 溝口は妻を早くに亡くし、その性癖から多数の奴隷を調教してきた、経験豊富なサディストだ。
 このグループのリーダーで、金田をこの世界に引き込んだのも彼であり、調教のアドバイザー的存在でもある。

 溝口は金田の顔を覗き込み、小声で話し掛けた。
「おい、本当に10日程の調教なのか? 薬物や洗脳している訳じゃないんだろうな?」
 眉を顰め声を殺して、耳打ちする溝口に金田が訝しげな表情で
「何でそんな事を聞く?」
 問い返して溝口の表情を読み取り、ソロリと言葉を付け加える。
「お前が見ても、レベルが高いのか?」
 溝口は大きく顎を引き、真剣な眼差しで
「30年の俺の経験から言っても、1,2を争う。いや、間違い無くトップだ」
 金田に答え、顎をしゃくって梓を示し
「あれは、普通の責め具に見えるだろうが、俺の経験上あれを付けて、平伏できた奴隷は居ないし、あそこまで身体を曲げて、我慢できる代物じゃないんだ…」
 梓の耐性と奴隷としての振る舞いを、恐怖に近い感情の声で賞賛する。
 しかし、溝口の賞賛の声は、金田にとって苦痛にしか成らなかった。

 そう、その言葉は稔の支配から、梓を奪い取りたい金田の思いを打ち砕いてゆく。
 固く歯を食いしばり、凄い目つきで梓を見詰める金田に、溝口が質問する。
「なあ、あの女の主人って何者だ? ヒョッとしたらこの、世界でも有名人じゃないのか…。どうやって知り合ったんだ?」
 溝口の質問に、金田は我に返り溝口を見詰めた。
(あぁ、お前も知っているよ、この世界じゃなく本職の世界だがな。この女を調教したのが、あの柳井稔だと知ったら、こいつは男の自信を全て無くして、抜け殻みたいに成るかも知れない…。俺は、こいつ程自信家じゃないから、まだ、マシなのか)
 金田は溝口に気を遣った訳では無いが、稔との約束から名前を出す事を躊躇った。
 金田は曖昧な笑顔を浮かべ、溝口に答える。
「いや、駄目なんだ…。こいつの主人との約束で、素性も経緯も話す事は出来ないんだ」
 溝口は食い下がろうとするが、この世界に長く身を置く経験から一旦は諦めた。
 この時金田が稔の名前を出していれば、溝口との邂逅は早まったかも知れない。
 そうすれば、稔は竹内伸一郎の情報をもっと、早く手に入れていた筈だった。

 溝口と金田の会話に、別の男達が割って入る。
 金田の友人で、どちらも中規模の病院を経営する医院長、長橋と岩崎だった。
 この2人は、金田達より少しだけ若く、どちらも妻子持ちで有り、奴隷も持っていた。
 長橋の奴隷は町田綾(まちだ あや)と言い、クラブのホステスをしている。
 その容姿と性格から、売り上げが悪く長橋にバックアップされている間に、関係が引き返せない場所まで来てしまった。
 身長160p体重60sB92W75H98、プックリとした身体に、少しきつめの目が印象的だが、どこかオドオドと視線が定まらない。
 岩崎の奴隷は本田美沙(ほんだ みさ)と言い、フリーターである。
 岩崎に援助交際を持ちかけ、そのままズルズルと岩崎の愛人になり、奴隷化した。
 身長157p体重45sB80W60H82、肉付きに乏しいよく言えばスレンダーな身体だに、ロングの黒髪はどこと無く陰気な雰囲気を漂わせる。
 どちらも、若さは有るがそれだけが取り柄の女性だった。

■つづき

■目次2

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊