夢魔
MIN:作

■ 第19章 出張8

 溝口は由美子の機転に、頬を緩めると子供をあやすように、優しく頭を撫でて誉めた。
 由美子は嬉しそうに目を細め、溝口の手にじゃれつく。
(そうだ…俺にはこれぐらいで、ちょうど良い…。あれは、俺には手に余る、金田なら尚更だ…)
 由美子を見ていた視線を梓に移し、金田を見詰める。
 金田は呆けたように、梓を見ていた。
 梓は流石に疲労の色が濃く、上体がフラフラと揺れている。
 しかし、金田はそんな状態の梓から拘束着を脱がせる事を頑として拒んだのだ。
 その頑なさは、まるで駄々をこねる子供のようだった。
(あいつは、もう駄目だ…。完全に正気を失っている。まるであの拘束着を外すと、あの女が消えて無くなるとでも、思っているようだ)
 溝口が溜め息を吐いた時、車は予約していた旅館に着いた。

 温泉街から少し離れた高台に有る、趣の有る老舗旅館で、その静けさと有る事情から溝口は常宿にしている旅館だった。
 だが、今日の雰囲気はいつもと違っていた。
 ガヤガヤと40代から20代後半ぐらいの男達が、20人程ロビーにたむろしている。
 この旅館に似つかわしくない集団に、眉を顰めて溝口が玄関に入ると、女将が飛んで来て溝口に挨拶した。
「申し訳有りません、溝口様。今日は、生憎と団体の方が入られていて、少し賑やかしくなってしまっています。つきましては、本日は本館の方ではなく、離れの方をご用意致しました。勿論、差額などは頂きませんので、どうかおくつろぎ下さいませ」
 長々しい説明をした女将に、溝口は鷹揚に答える。
 女将の名前は長田縁(ながた ゆかり)和服を着こなす牡丹のような印象の華やかな女性だ。
 学歴も都内の某有名外語大を卒業し5カ国語を操る才媛で、老舗旅館を切り盛りしている。
 身長は155pと小柄で年齢も42歳、3人の子供を産んで全体的に身体のラインが、崩れてもおかしくない条件で、体重49sB88W60H90の身体は圧巻のスタイルだった。
 華やかな女将の仕事を続けるために、日々の努力を惜しまない結果が、この身体を維持させている。
 縁の夫も溝口と懇意の中で、何度か縁を調教し肌も合わせていた。

 縁が示す離れの部屋も、何度か使った事が有る溝口は、その申し出は正直嬉しかった。
 離れの部屋には、専用の浴室も備えられていて、完全に孤立しておりプライバシー保護も申し分ない。
 ただ、金額的に馬鹿高かった、今回予約した最上級の部屋の1.5倍の金額だった。
 その差額を受け取らずに、部屋を割り当てる女将の意図を、金田は推し量る。
(しっかり者の女将が利益を無視して、部屋をあてがった理由は何だ? ダブルブッキングでもしたか? それとも、俺達を押し込めたのか?)
 溝口は少し気になり、縁に探りを入れてみる。
「すると、俺の予約した部屋は使えないと言う事だな」
 溝口の質問に、縁が頭を下げ
「誠に申し訳御座いません、今回は当方の不手際も御座いまして、ご用意が出来ませんでした。つきましては、溝口様のご要望を満たすお部屋として、離れの部屋を用意させて頂きました」
 縁は、[ご要望]の所を強調するように言い、溝口に視線を向ける。
 その目には、[これ以上突っ込ま無いで]と無言の懇願が有った。
(どうやら、訳ありのようだな…。ここは何も聞かず部屋に移動した方が無難だな)
 団体客に目を向けると、数人の男が梓に目を向けニヤニヤと話込んでいた。

 縁自らの案内で、本館を離れ通路を通り部屋へ向かう。
 離れの部屋は庵風の建物で、3棟有った。
 それぞれ、専用の浴室が付いていて、チェックインもアウトもフロントを通さず可能で有り、それぞれの部屋に対応した、専用駐車場に移動出来る仕組みになっている。
 それにそもそも、一般客は離れの存在すら知らない。
 何十回と無く足繁く通うか、離れを知る人間に紹介して貰うしか、宿泊出来ないのだった。
 溝口達は、そんな中でも一番奥に有る、一番大きな離れに進む。
(ここは、一泊の設定50万円の場所じゃないか…。女将どう言うつもりだ?)
 溝口は一度ここを紹介してくれた人物と泊まった事が有る、この旅館最上級の部屋に案内された。
「良いのかい女将? ここは、俺達なんかが止まれる所じゃ無い筈だけど」
 宿代の設定以前にこの離れの部屋を利用するには、それなりの格が必要だった。
 いわゆる、政界財界などの重鎮が、あらゆる人目をかわすための会合場所であり、秘め事が行われる場所なのだ。
「はい、今回は私どもの事情によりお部屋をお換え願ったのですから、最上級の持て成しをしろと主人に仰せつかっております。どうぞ御くつろぎ下さいませ」
 縁は華やかな微笑みを浮かべ、溝口にお辞儀をする。

 溝口は縁のお辞儀に返事を返すと、由美子に目配せして全員を中に案内させた。
 由美子はコクリと頷き、4人を離れ内に案内する。
 縁と二人っきりになった溝口が、縁に問い掛けた。
「どう言う事が有ったんだ? 兼久さんも顔を出していない様子だし、何があった?」
 溝口が心配そうな顔で縁に聞くと
「ウチの人今、旅館組合に怒鳴り込んでるのよ。さっき居た団体…見たでしょ? あれよ、あれ」
 縁は途端に口調と態度を変え、溝口に甘えるように身体を投げ出して答えた。
「あいつら、何なんだ?」
 溝口が縁の身体をクルリと回転させて、背後から抱き止め胸元と裾の間に手を差し込み、乳房とオ○ンコに愛撫を加えながら、うなじに息を吹きかけ質問すると
「どっかの成金の田舎者よ…あちこちで、問題起こしては出入り禁止を食らってて、今度はウチにお鉢が回ってきたの…あん…。で…問題を…う、う〜ん…起こされたくない…あふぅ〜…溝口さんには…はぁ〜っ…避難いただいたの…」
 縁は溝口の愛撫に身悶えながら、溝口に説明した。
 溝口の愛撫が熱を帯びてきだすと、縁の声が甘く蕩けてくる。
「で、どうして兼久さんは旅館組合に?」
 溝口の質問に縁は瞳を蕩かせ
「はい〜…この団体…を…無理矢理…フロントに…ねじ込んで…来たのが…あはぁ〜〜〜っ…旅館組合の会長で…ご主人様が…抗議に…うくぅ〜〜〜っ…行かれました…ああああぁ〜〜〜っ」
 更に態度と口調が変わり、身体をビクビクと震わせ、絶頂を迎えた。

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