夢魔
MIN:作

■ 第19章 出張21

 通路がT字路に突き当たると、金田は梓の右の尻タブを打った。
 梓の身体が、ビクリと跳ねる。
(右側に行けば…その先はラウンジ…。解りました…従います…)
 梓は身体を右に向け、進んでいった。
 この通路を左側に進めば、離れへの直通通路があり、人目を気にする事無く移動できたのだ。
 金田はそれを選ばせなかった。
 通路の前が開き、広い空間が見えてきた。
 旅館のラウンジである。
 この旅館は構造上、必ずラウンジを通らねば、他の施設に移動できないように成っていた。
 必然人の目が多い場所である。
 梓はラウンジの隅を、這い歩いて行く。
 常に耳に入る人の喧噪、ヒシヒシと感じる人の気配。
 梓は顔を上げる事が出来ず、隣にある壁面を感じ、ただ床の一点を見ながら、ひたすら進んで行く。
 すると、自分を打ち付けていた、木の枝の感触が無い事に気付く。
(はっ! 医院長様…何処に行かれたの!)
 梓は驚いて、頭を巡らせると、金田はまだ後ろを、ユックリと歩いている。
 立ち止まる梓に追いついた金田が、梓のお尻に木の枝を打ち付け
「中々早く気付いたな…、もう少し進んでたら先回りして、離れに続く全ての扉を閉めてやろうと思ったのに、残念だったな」
 小声で金田が梓に告げた。
「この感触が無くなったら、俺はそこに居ない…それを忘れるな」
 金田はそう言って、梓のお尻を打ち始める。
 梓の這い進む速度も、金田の手の中だった。

 ラウンジを抜けかけた時、周りで喧噪が起こる。
 それはザワザワと波紋のように広がり、ラウンジ中に拡がって行く。
 梓にはその喧噪の意味は解っていた。
 この喧噪が拡がるほんの数秒前、柱に寄り添い話しをしていた男女が、梓を目撃したのだ。
 その距離は僅か数m。
 梓の顔も、身体も、その立ち篭める臭気すら、2人には確認できたであろう。
 梓も驚き固まる女性の顔が、認識できたのだから。
 金田が軽く会釈し、何事も無かったかのように、悠々と梓を追い立てて行く。
 数秒後、その2人の呪縛が切れ、走り出していったのが、気配で梓は解った。
 梓の項垂れた顔の下を、ポツポツと水滴が濡らして行く。
 一刻も早く立ち去りたい梓、悠々とリズムを変えることなく進む金田。
 ラウンジの途切れるまで後ほんの数m、時間にしても数秒だろうが、梓にはそれは遙かに遠く、遙かに長く感じられた。
 金田が左の尻タブを強めに打ち付ける。
 ラウンジが終わり、左側に通路が延びていた。
 そこを進めば離れへの扉が現れる通路だった。

 金田と梓は離れに戻っていた。
 離れの副寝室に着いた金田は、梓を備え付けのユニットバスに入れる。
 梓の四つん這いは、まだ許されておらず、梓の目の前には洋式の便器が有った。
 金田は直ぐに荷物を漁り、色々な器具を持ってユニットバスに戻って来た。
 金田は梓の後ろに座り込むと、クリトリスにリングピアスを取り付ける。
 そしてそのピアスに細いチェーンを掛けると、太股と足首に拘束具を付けた。
 金田は梓を直立させると、太股と足首の拘束具を、それぞれピッタリ合わせる。
 梓の脚は完全に閉じられ、ピクリとも動かせなくなった。
 次に金田は肘まであるミトンの腕枷を梓に取り付け、背後で絞り上げ手の先を上にし、両手を拘束した。
 左右の二の腕が限界まで絞られ、梓の肩関節と肘関節が悲鳴を上げる。
 苦痛に顔を歪める梓を、金田はユニットバスの真ん中に座らせ、太股と足首の拘束具を繋げた。
 これで梓は正座のまま、身体を動かす事は、全く出来なくなった。
 それでも梓は、凛と背筋を立て金田に従う。
 だが、金田の仕打ちは、悪夢のように終わらない。

 金田は梓のスラリとした鼻にフックを掛けると、バスタブのカーテンレールにチェーンを掛け引き絞る。
 梓の顔は完全に上を向き、鼻の穴は斜め後ろに、引き上げられた。
 それは軽く膝の前が浮く程、強い張り方だった。
 金田はニヤニヤと笑い、梓を見下ろして
「仕上げだ…、口を開けて舌を出せ」
 梓に命じる。
 梓は指示通り舌を金田に差し出すと、金田は小さな万力のような物を、梓の舌に取り付けた。
 金田は梓の股間から伸びる、クリトリスに繋がったチェーンを持つと、正面にある排水溝のパイプをくぐらせ、梓の舌に取り付けた万力と組み合わせる。
 梓は天を向き、大きく口を開いた状態で、完全に身動きが、出来なくなった。
「良い格好だな…惨めだろ…。今日はこのまま眠らせてやる、明日のために英気を養え」
 金田はそう言って、背中を向けてユニットバスを出る。
 ユニットバスを出る時、金田が
「臭いが篭もると大変だからな、換気して行ってやる」
 そう言って換気扇を回し、電気を消して出て行った。
 こんな格好で誰が休めるだろう、どうして英気が養えるだろう。
 金田の仕打ちは酷い物だったが、実際は最後に行った物が、最も酷い物だったかも知れない。
 金田が最後に回した換気扇は、臭いが篭もるのを避けたためで無く、乾燥を促す目的のためである。
 大きく開けられた梓の口中は、明け方にはカラカラになり、呼吸すら困難に成っている筈だった。

■つづき

■目次2

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊