夢魔
MIN:作

■ 第19章 出張25

 露天風呂には4つのグループが出来ていた。
 一つは洗い場の真ん中で、3・4人が固まったグループ。
 もう一つはそれを覆うように取り囲む3人程のグループ。
 そして湯船に浸かり、ユッタリと身体をほぐす3人のグループ。
 そして隅っこにたむろしている、4人のグループ。
 洗い場のグループが輪から離れると、隅のグループに移動し、隅のグループから離れると、取り囲むグループに入る。
 取り囲むグループは、洗い場のグループから誰か抜けた瞬間、その輪の中に入った。
 時折洗い場のグループの者が、脱衣所に向かうと、直ぐに脱衣所から別の男が現れ、隅のグループに入る。
 洗い場のグループの中で、時折白い手足がチラチラと見える。
 白いしなやかな手足だった。
 その手足は、勿論梓の物で有り、洗い場のグループは梓を陵辱している者、取り囲んでいるのは順番待ちで、隅の者は金田を拘束している者だった。
 湯船に浸かっているのは、リーダーを含む有力者なのだろうか、この輪姦の中で平然と談笑している。
 足りない人数は、リーダーの命令で、チェックアウト手続きをしていた。

 梓は昨夜に続き、早朝から輪姦された。
 頭の中は真っ白になりながら、ただ金田に対する謝罪だけが有った。
 梓の中で、それは消えない棘のように、梓の心を貫いている。
(医院長様…もう、お声も聞こえないのは…どこかに行かれてしまわれたんですね…)
 梓は金田の気配が消えたのは、入れ替わりする男達に紛れ、露天風呂を後にしたと思っていた。
 だが、金田は梓の陵辱される様を、黙ってズッと見ていた。
 正確には、喋る事も出来ず見せ付けられていた。
 金田は石床に正座させられ、その両脇に男が1人ずつ腕を絞り上げ、背後には首を締め上げながら顔を固定し、口にタオルがねじ込まれている。
 金田の目からは、滂沱の涙が流れている。
 悔やんでも悔やみきれない自分の愚かな行為。
 自分の考えの甘さが金田の身に重くのし掛かり、押し潰されそうになっている。
 涙で霞む目の向こうで、男達の身体の間から、ヒラヒラと見える梓の白い身体が、痛々しかった。
(あぁ〜っ、梓…梓〜…すまん、すまん、すまん! お、俺のせいだ…俺のせいで、こんな事になってしまった…)
 金田は自分の意固地な性格が、この事態を招いた事を激しく悔やみ、涙している。
 金田は男達に自由を奪われ、身悶えしながら、梓の陵辱を見詰めていた。

 溝口の携帯に、着信が入る。
『ラウンジですがここにも居ません』
 岩崎からの報告だった。
 携帯を切った瞬間、長橋から連絡が入る。
『大浴場ですが、ここにも居ません。跡残るは、ラウンジかロビー、それと露天風呂ですね』
 長橋の報告に
「俺は今ロビーだ、ラウンジは岩崎が確認した。露天風呂に行ってくれ」
 長橋に指示を出した後、直ぐに岩崎に連絡を入れ、露天風呂へ向かう。
 露天風呂に続く通路に差し掛かる前、6人は合流する。
 緊張感を保ったまま、男達3人は目で頷き進み始めた。
(ここに居なければ、後は外だ…外なら、まだ安心できる。頼む、金田ここに居ないでくれ…)
 溝口は、そう願いながら通路を進み、露天風呂の脱衣場に入ろうとすると
「お〜! ごめんよ〜…今さ、ここいっぱいなんだ…大浴場行ってくんない」
「そうそう、下手に入るとさ〜、変な怪我とかしちゃうかもよ」
 20代後半の男達2人が、溝口達の行く手を塞いだ。
(やっぱり、ここか…見張りが立っているって事は…)
 溝口の嫌な予感が、現実味を帯び迫ってくる。

 溝口達が男性用の脱衣場の入り口で、もめているのを見た由美子達は、ススッと脚を忍ばせ女性用の脱衣場に入る。
 由美子達が女性用の脱衣所から、露天風呂の中を覗き込むと、大勢の男達の後ろ姿が見えた。
 女性用脱衣所から見える、男達の固まりは2つ有った。
 一つは立って、全員が同じ方向を見ているグループ、もう一つは3・4人がしゃがみ込んで、何かしているグループである。
 由美子達が、ガラス越しに覗いていても、ガラスに着いた湯気の水滴で、明瞭に見る事が出来ない。
 由美子達は思い切って、ソッとガラス扉を開けてみた。
 視界が開け、辺りの状況が克明に見えるようになる。
 そして、3人の目に飛び込んできた物は、3・4人の男に組み敷かれる、梓の姿だった。
 それを見た美沙が、思わず金切り声を上げてしまう。

 露天風呂の中から、突然響いた金切り声に溝口達が驚いた。
 それと同時に、見張りの男達もビクリとして、浴室の方を向く。
 背中を見せた男の1人に、溝口が飛びかかり、残りの1人に岩崎と長橋が飛びかかった。
 溝口が馬乗りになり、飛びかかった男の胸ぐらを掴んで、床に何度も頭を打ち付ける。
 4度目に打ち付けた時、男の手から力が抜けた。
 溝口が馬乗りになったまま、隣の岩崎と長橋を見ると、2人がかりで1人の男に押されている。
 溝口は立ち上がりざま、スタンドタイプの灰皿を手に取り、男の後頭部目がけて叩き付けた。
 男は糸の切れた人形のように、膝からガクリと落ちて、意識を失った。
 岩崎と長橋を助け起こし、溝口は露天風呂絵と向かう。
 扉を開けて中に入った時、目に入って来たのは、全裸に剥かれ男達に髪を引き摺られる、由美子達3人の姿だった。

 溝口達が浴室内に入ると、男達の数人が溝口達を見て
「おい、おい、慎次と一也何してんだよ…」
「全くだ、見張りも出来ないのかよ」
「まぁ、女が増えたのは、良い事だがな。これで、お土産が4ッつになったな」
「ちょっとブサイクも混じってるけど、穴が有るんだからそれでも良いか」
 軽口を言い出し、馬鹿笑いを始める。
 溝口の顔が、怒りで真っ赤に染まった。
(こいつら…、由美子達まで犯すつもりか…)
 拳を握り震える手を持ち上げかけた時、背後で悲鳴が上がる。
 溝口が驚き、後ろを振り返ると、岩崎と長橋が倒れていた。
 2人はさっき倒した見張りの男達に襲われ、踞っていたのだ。
 愕然とする溝口に、男達の中から30代後半の男が進み出て
「あ〜あ…仲間が減ったな? この女達も露出狂の変態なのか? 俺達がタップリ可愛がってやるよ」
 ニヤニヤ笑いながら溝口に告げる。

■つづき

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