夢魔
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■ 第19章 出張29

 8人が離れに到着すると、先に縁が来ていて、心配そうな視線を向ける。
 9人は離れの中に入ると、由美子達は梓と共にお風呂に入った。
 梓ほどではないが、由美子達も陵辱され、犯されたのだ。
 その痕跡を少しでも、洗い清めたかった。
 金田は取り敢えず、目が醒めるまで今の隣の部屋で眠らせる事にし、溝口達の怪我は縁が手当する事になった。
 傷の手当てを受ける、溝口達は一様に無言だった。
 重く沈んだ空気の中、縁は質問も出来ず、ただ黙々と怪我のの手当をする。
 手当が終わり、一息吐くと溝口が口を開く。
「女将…あいつらを追い払ったのは、女将達という事にしてくれ」
 溝口がそう言うと、縁は首を傾げ
「構いませんが…どうやって、あの人数を追い払ったんですか?」
 溝口に問い返してきた。
 溝口はグッと言葉を詰まらせ、岩崎と長橋の顔を見
「言っても信用できんし、口止めもされてるんだ…。正直、俺達も目の当たりにしたが、今でも夢じゃないかと思ってる…」
 縁に視線を向け、真剣な顔で伝えた。

 金田は薄く光が差し込む、暗い部屋で目が醒めた。
(う、う〜ん…ここは…。離れに戻っているのか…)
 まだハッキリとしない頭で、ボンヤリと場所を認識する金田。
 金田が手を上げ自分の顔を一撫ですると
(あ痛ぅ〜っ! くぅ〜っ)
 腫れた顔面の痛みに、一気に意識が覚醒する。
(お、俺は殴られたんだ…。あ、梓はどうした? あいつ達は、どこだ?)
 ガバリと布団から、起きあがると隣の部屋から、話し声が聞こえてくる。
『じゃぁ、何ですか? 私は意味も解らず、訳も教えられず、大事なお客様が傷つけられた事を納得しろと? それを解決したのは、私達だと言い張れと言うんですか?』
 縁が声を大きくして話した。
『ま、まぁ待て…そう興奮するな…、取り敢えず追っ払ったのは梓さんで、梓さんはその事を口外して欲しくないんだ。それに、事をおおきくして俺達の身元を知られたくないんだ』
 溝口が縁に説明する。
(梓が追っ払った? どうやって? 何があったんだ…)
 金田は暗がりの中で、腕組みをし頭を捻った。

 金田が横の部屋で、聞き耳を立てているとも知らず、真相を話す溝口。
「まあ、そんな感じで、今回の件は納めてくれ…」
 縁にそう言って、溝口が頭を下げると
「はい、はい。解りました…」
 縁は不満そうにしながら、返事をし
「溝口さんがそう言うのなら、私はもう何も言いません」
 スッと席を立った。
「女将、悪いな」
 立ち上がった縁に溝口がそう言うと
「この状態でしたら、朝ご飯を一緒には無理ですね…。悪いと思われたなら、夫の面倒任せましたわよ…」
 縁は溝口に、張り付いたような微笑みを浮かべそう言うと[コロコロ]と笑い出て行った。
 溝口はボリボリと頭を掻いて、困った顔を見せ縁を見送る。

 縁が出て行くと、直ぐに女性達がお風呂から出てきた。
 真ん中で項垂れる梓を、心配そうに覗き込み、周りを由美子達が取り囲んでいる。
 梓はボロボロと涙を流し、露天風呂で見せた迫力など、微塵も感じさせなかった。
(何でこんなにコロコロ変わるんだ…。本当にこの人には、驚かされてばかりだ…)
 溝口が困り顔で見詰めていると、梓が机の横に座る。
 溝口は咳払いを一つして、梓に問い掛けた。
「何で、そんなに泣いて居るんですか?」
 溝口は回りくどい言い回しでは無く、ストレートに聞く。
 梓は涙を拭いもせず
「私は、奴隷として…最も、してはならない事をしてしまったからです…」
 小さく成りながら、呟くように言った。
「奴隷として、してはならない事? 何ですそれは」
 溝口が不思議そうに、質問を繰り返した。
「ご主人様の…、ご主人様の命令を…ご主人様との誓いを…自分の意志で、破ったからです…」
 梓はそう言うと、顔を両手で覆い泣き崩れてしまった。

 溝口は、梓の余りの泣きように、自分が見た事を思いだし、問い掛ける。
「それは、あの変貌振りの事ですか?」
 溝口の質問に、梓は首を左右に振り
「違います…あれは、あれで…人に見せる物では有りませんでしたが、それでもご主人様に禁止されては居ませんでした…」
 梓は溝口の質問を否定し、答えた。
「じゃぁ…何なんです?」
 溝口は、本当に頭を捻り、梓に問い掛ける。
「私は、特殊な訓練を行い、オ○ンコとアナルを自在に動かす事が出来るんです…。それを、お試しに成られたご主人様が[災いの元になるから、本気を使ってはいけません]と固く命じられたのです。私は、それに対して心から誓ったのに…本当に、駄目な女です…私なんて、もう生きる価値なんて無い…。ご主人様のお側で、お仕えする資格なんて無いんです」
 梓は告白するように話し始め、最後は激情に駆られて泣き崩れた。
(いやいや、ちょっと待て…。有り得ない話しが、今出てきたぞ…。オ○ンコとアナルを自在に操る? 災いの元になる? 何か話しが、でかく成ったな…。でも、それが本当ならあの男達の反応も頷ける…)
 腕組みをした溝口が、ふっと思い出し岩崎と長橋に問い掛ける。
「お前達、確か車の中で、梓さんを抱いたよな? どうだった…」
 溝口が2人に本人の前で、面と向かって評価を求めた。
「い、いや〜…確かに、凄く気持ち良かったです…」
「え、ええ…、今まで感じた事がないくらい、凄い締め付けでした…」
 2人は照れながら、溝口に報告する。

 だが、溝口はその時気付く、岩崎達と肌を合わせた時は、まだ禁を破っていない事に。
「梓さん…つかぬ事をお聞きしますが…、普段は、どれくらいセーブしてるんです?」
 溝口はソッと囁くように、梓に聞いた。
「最近はかなり制御できるようになったので、今は1/10程も使っていません…」
 梓が正直に答えた。
 岩崎と長橋が、顔を見合わせ、驚きの表情を浮かべる。
 溝口はそんな2人の表情から、本当に有り得ないレベルの物だと感じた。
「そんな、約束を何で、破ったんですか?」
 溝口は梓の思い詰めた様子から、慎重に言葉を選びながら、問い掛けると
「医院長様が…医院長様が、打たれている所を見て、私…もう、何だか…解らなくなって…、ただ、[許さない]って思って…。気付いたら…使ってしまってたんです…」
 梓は激情に駆られたように話し、嗚咽の中で告白した。
「ちょっと待って下さい、それじゃ梓さんは、金田が殴られたから、大切なご主人様との誓いを破ったんですか?」
 溝口が面食らって、梓に質問すると
「そうなります…。私は、金田様を今まで傷つけて来ました。それを、一昨日の夜ご主人様に諭され、真っ白な心で今回接し、痛いほど解りました。私は、金田様に許されるまで、どんな事にも従う覚悟を決め、お仕えしようと思っておりました。なのに…、こんな、こんな事になって…ご主人様に合わせる顔が御座いません…。ましてや、大切なゲストの方が、あんな怪我を為さるなんて…私の不甲斐なさが原因なんです。全て私が悪いんです」
 梓は情緒不安定になり、最後は何もかも自分のせいだと号泣した。
 そして、梓は突っ伏したまま、呟き始める。
「そうよ…全部私が悪いの…私が我慢していたら、金田様に危害が及ぶ事なんか無かった…私が、あそこに居なければ、金田様が怪我をする事もなかった…そうよ…私が…私が悪いの…」
 梓は自分をドンドン否定し、追いつめて行く。

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