夢魔
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■ 第20章 恋慕23

 絵美は狂の話を聞きながら、自分の早とちりを激しく後悔する。
(純君ご免なさい…私本当に馬鹿だわ…早とちりだし、思い込み激しいし…はぁあ〜…本当、馬鹿…)
 絵美は両肩をガックリ落とし、項垂れた。
 狂はそんな絵美の頭をペシリと叩き
「気にするな! やっちまった事は、やっちまったんだ! 悔やんだって、一銭も得しねぇ。次同じ事しなきゃ良いんだ! 純の奴には、今度会ったら思い切り甘えて、思い切り感じてやれ! そうすりゃ、あいつの気も晴れるし、お前も気持ちいい筈だ…多分な…」
 ニヤリと笑いかけ、話し始めながら、最後は言葉を濁した。

 絵美は途端に不安が押し寄せ、泣きそうになりながら
「い、今のって…かなり不安なんですけど…。なんで、どうして最後は、疑問系なんですか…」
 狂に対して、敬語を自然に使い始めていた。
 縋り付く絵美に、狂は更に言葉を濁しながら
「純はな…もう一つ特技があるんだ…。縄を使うのが…上手いんだ…。で、それが問題なんだ…」
 狂はそこまで言うと、絵美をジッと見詰める。
 絵美は狂の視線に引き込まれながらも、疑問が何一つ解決していない事に気付いて
「そ、それが…どうなんですか…?」
 掠れた声で問い掛けた。

 狂は頭を掻きながら、諦めた顔をして
「あいつが縛るとな、女の反応が格段に跳ね上がるんだ。あいつはいつも、縛ると満足して引っ込む。で、残った女を俺が嬲るんだけど…、正直感じ方が、段違いなんだ…」
 絵美に告げると、絵美は恐る恐る首を縦に振る。
「絵美は純に触られてどうだった? かなり気持ち良かったろ…」
 狂が問い掛けると
「は、はい…直ぐにイキそうに成っちゃいました…」
 コクリと頷き、呟いた。
「そんな指の動きを、格段に感覚が跳ね上がる縛りの中で受けて、あいつが満足するまで抱いたとしたら…」
 狂は[ふ〜っ]と大きく溜息を吐きながら、絵美を見詰め
「俺は、想像できない…」
 ボソリと呟いた。

 狂の告白を聞いて絵美の顔が、大きく驚きに変わる。
「え〜っ! ど、どう言う事ですか? そ、それって、見た事がないって事ですか?」
 絵美の質問に、狂は大きく頷いて
「今まで、一度もねぇんだ…。でも、絵美にはしそうなんだ…、純もお前の事、相当気に入ってるからな…」
 ボソボソと呟くように言った。
 絵美はその言葉を聞いて、凄く嬉しくなった反面、とても恐くなる。
「それって、どんな風に成るんですかね…?」
 絵美が問い掛けると
「想像は付く…。けど、あくまで想像は、俺の見た事を元に考える。そこら辺から言っても、絵美は純のSEXを絶対に忘れられなくなる…と思うぜ」
 狂はボソボソと絵美に説明した。

 絵美はゴクリと唾を飲み込み、狂を見詰める。
「で、でも…純君と離れる積もりが無かったら…それって、ずっと、スッゴク良い事ですよね…」
 絵美の答えは、狂を驚かせ、満足させた。
「ああ、そうだ…そうだな…。絵美には心配のない話しだったか…」
 珍しく優しい微笑みを向け、絵美の頭を撫でる。
(そうだ…、いつものように、別れる事を前提にする必要はない…こいつは、俺達の全部を知り、それでも、尚かつ受け入れたんだ…こいつなら、大丈夫か…)
 狂の優しい微笑みに、頬を染めながら小首を傾げ
「ご主人様…? 私、何か喜ばせる事しました?」
 無邪気に聞いてくる。

 狂はそのまま、絵美の唇に優しく唇を合わせ
「いいや…絵美は、絵美のままで居ろ…それだけで、俺はこうなれる」
 ニッコリ微笑んで、頭を撫でた。
 絵美は良く分からないまま、微笑んで
「はい、絵美は絵美のままで居ます」
 狂にハッキリと誓った。
 狂の優しい口吻は、絵美を抱き寄せ続き、絵美はいつまでも飽く事無く、狂の舌に応える。

 狂は唇を離し、絵美の顔を見詰めると
「ところでよぅ、お前の相談事って、何なんだ?」
 絵美に真顔で、問い掛けた。
「え、あ、あ〜。あのですね、新しく仕事が出来たんですが、今のお家から引っ越さなきゃいけないんです。それで、隣のお婆ちゃん…あ、今住んでる家の隣にいる人なんですが、そのお婆ちゃん達と離れると、妹達が可哀相で…いつも一緒に居て、本当のお婆ちゃんみたいに、良くしてくれた人達なんです。その人達から、離れるのは…辛いかなぁ〜…。でも、契約は結んじゃったし…どうしようかって思って…」
 絵美は自分の心の内を狂に話した。

 狂はその話を聞き、詳しい状況を聞く。
「絵美の言う事は解った。俺の意見は、もう少し話を聞いてから、答えてやる」
 狂はそう言って、絵美に告げると、質問を始めた。
「お前自身、隣り家の住人と離れたくないのか?」
「はい」
「隣の家の住人も、お前と同じ考えか?」
「多分そうです…」
「今度住む事になった家の間取りは、幾つだ?」
「えっと、20畳を超えるリビングと、12畳ぐらいのお部屋が5つです」
「その家は、何か特殊な制限をされたか? 例えば、家族以外駄目だとか…」
「いえ、何も…」
「今住んでる場所の広さは、どれくらいだ?」
「え! え、え〜っと…4畳半2間です…」
「今度行く所は、単純に言って、今住んでる2世帯の4.5倍の広さだな? 家賃がタダに成って、広くなって、バストイレ完備で、立地条件が良くて、一緒に居たいと思ってるんだったら、言う事無いんじゃないか? …聞いてみろよ」
 狂はニヤリと笑って、絵美に告げる。
 絵美は余りの驚きに、口を開けて狂を見詰めるだけだった。

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