夢魔
MIN:作

■ 第29章 暗転1

 夏休みも3週目が終わり、4週目に入ろうとしていた日曜日の朝。
 奴隷化計画は順調に進み、稔の管理下の元、奴隷教師達の調教も進み、また奴隷教師に墜ちていない教員も4名を残すのみと成っている。
 生徒の中にもちらほらと、マゾ性を開花させつつある者が出始め、計画は順調そのもののように見えたが、行方が解らなくなった、金田は杳として見つからず、総合病院の医院長代理に柏木が就任していた。
 稔の影響力に翳りが見え始めた頃、学校棟の改築工事が終わり、その全貌が明かされる。
 全教師と関係者が学校に呼ばれ、珍しく姿を現した伸一郎に、主だった教師達と共に地下に案内された。

 学校棟の地下に大きなボックスカルバートを埋め込む工事は、そのまま、巨大な地下室を形成し、新しくできた管理棟で、行き来出来るように作られた。
 管理棟からエレベーターで地下に下りると、高さ3m程のコンクリートの通路が現れ、奥へと伸びている。
 一目で分かるその規模の大きさから、この地下室は校庭部分にもはみ出しているのだろう。
 通路は地下の真ん中を通っており、左右に大きなコンクリートの部屋が幾つも有り、その入り口には分厚いガラスが張られ、鉄格子が嵌められていた。
 コンクリートの部屋は、それが何に使われる部屋か、一目瞭然で各部屋には防音処理が施されている。
 一番奥の部屋はかなり大きく、まるで中世の拷問部屋のようだった。

 伸一郎は稔に向き直ると、ニヤリと笑い
「今日からここを使ってくれ。ここは、地下で声も外には漏れん、思う存分調教出来るぞ」
 教師達に視線を振りながら、静かに告げる。
 教師達はそれぞれ思い思いの部屋に入って、調教道具を吟味した。
 稔1人のみ、伸一郎の前に佇みジッと、伸一郎を見詰めている。
「どうしたのかね? 君は見なくて良いのか」
 伸一郎が問い掛けると、稔はフッと微笑んで
「僕に何かお話があると思ったんですが、違いましたか?」
 伸一郎に問い掛ける。

 伸一郎は稔の言葉に、大きく頷いて
「ああ、その事なら上で話をしよう…」
 稔を伴いエレベーターに乗り込んで、校庭側の入り口から理事長室に入った。
 伸一郎が椅子に座り、稔の方を見てにっこり微笑むと
「単刀直入に言おう。ここには、もう君の席は無い。今日から君はお払い箱だ」
 稔に向かって、宣言した。

 稔は伸一郎の言葉を聞いて、微笑みを浮かべ
「それは出来ない相談ですよ。僕には2人の副理事長から受けた、委任状が有りますから、僕を排斥する事は出来ないはずです」
 伸一郎に告げると、伸一郎は大声で笑い
「入って来たまえ」
 校長室側の扉に声を掛け、待機していた者達を呼んだ。

 校長室の扉が開き、2人の男達が入ってくる。
 中に入って来た男達を見て、稔は右側の眉を跳ね上げ、訝しむような表情を作った。
 入って来たのは狂と榊原だったのだ。
「ほいよ、これで良いんだろ」
 狂は2枚の紙を伸一郎に手渡すと、伸一郎はそれを手に取り
「これで、君が学校に対する、全ての権利を失った」
 ヒラヒラと稔の前にちらつかせ、ニヤニヤ笑いながら言った。

 稔の顔から表情が消え、ジッと狂を睨み付け
「狂…そこまで、僕を裏切りますか…」
 ボソリと呟く。
 狂は稔の視線から逃げるように俯き、無言で立ちつくした。
「さあ、もう用は無い。君に預けている奴隷を返して貰おうか。あれには、良い買い手が付いている。何処に隠してるんだ?」
 伸一郎が笑いながら稔にそう告げると、稔が身構える。
「おっと、動くなよ。お前はかなり腕が立つそうだが、これの前では関係ねぇぜ」
 榊原はそう言って拳銃を抜き、稔に狙いを定めていた。

 伸一郎の笑いは更に大きくなり、哄笑を上げると
「さぁ、さっさと言った方が、身のためだぞ。それとも、さっきの拷問部屋で、儂に責められてから吐くか? 好きな方を選ばせてやるぞ」
 勝ち誇って稔に告げる。
 すると、稔の身体が一瞬沈み、その姿が勢い良く後ろに下がった。
 榊原は慌てて狙いを付け直すため、稔の姿を銃口で追うが、稔の身体はすでに逆側に跳んでいる。
 榊原が銃口を再び稔に向け終えた時には、稔の身体は校庭側に有る、窓ガラスを突き破っていた。
 榊原が窓ガラスに飛びつき、伸一郎が[追え!]と叫ぶのは殆ど同じで、榊原の身体が校庭に出て、稔の姿を探すが、その姿はもう何処にも見あたらなかった。

 稔の鮮やかな逃走に、榊原が呆気に取られ振り返り、伸一郎に視線を向けると
「逃がすな、絶対に捕まえて来い!」
 伸一郎は真っ赤な顔で、割れた窓から身を乗り出し、榊原に命令する。
 榊原は首を竦めて、踵を返すと一目散に走り出した。

 荒い息を吐きながら、伸一郎は椅子に戻ると、インターホンを押し
「校長か? 儂だ。今すぐサディスト教師全員を会議室に集めろ! それと、源と上郷を連れて来させろ」
 校長に指示を飛ばす。
 暫くすると、理事長室に真と弥生が、東と谷に追い立てられて現れる。
 弥生の表情は暗く沈み項垂れ、真は怒りを現していた。
 弥生の首には庵特性の、スタンガン内臓の首輪が嵌められており、自由を奪われている。

 伸一郎は弥生に向かって
「お前は分院に戻って、薬の調合を続けろ。監視には、薬の調合に支障が無ければ、何をしても構わんと言っている。精々、真面目に働かんと、どんな目に遭うか解らんぞ」
 指示を出し、谷に向かって顎をしゃくり、追い出すように退出させると
「お前はここで、こいつ等の下で用務員として働け。お前の働き如何では、あの女を払い下げてやる。あの女を少しでも早く助けたかったら、こいつ等に逆らうんじゃないぞ」
 東と、出て行った谷を示して、真に命令した。
 真は弥生を人質に取られてしまったため、従う以外無かった。

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