夢魔
MIN:作

■ 第29章 暗転2

 伸一郎は、席を立ち上がり
「今から、儂の体制を教師達に伝える。お前等も付いて来い」
 3人に向かって告げると、理事長室を後にする。
 会議室の扉を開けると、伸一郎の通達どおりサディスト教師全員が集まっており、何の会議が始まるのか、不安そうにしていた。

 伸一郎はザワザワとざわめく、会議室の壇上に上がると
「あの小僧の出番はお終いじゃ、今日から儂がお前等に指示を与える」
 サディスト教師達全員に伝えた。
 伸一郎の言葉を聞いた、サディスト教師達のざわめきは更に大きくなり、伸一郎は声を大きくして伝える。
「お前達は、今から調教師だ。主人は儂だけ、全ての奴隷達を儂に跪かせろ! これは、決定事項だ。文句のある奴、逆らう奴は全力で叩き潰すから、覚悟して聞け!」
 伸一郎の命令は、教師達の言葉を奪う。

 静まり返った会議室内を見渡し、伸一郎は口を開き始める。
「お前達は、奴隷教師を儂に差し出せ。その奴隷の質に応じて、お前達にはポイントをやる。ポイントの高い者からランクを付けて、下級者は上級者に服従する事を命じる。良いか、これからはこのシステムで、奴隷を調教しろ、今までの主人ごっこはお終いだ!」
 伸一郎の言葉に強い反感を持つ者も居たが、誰1人反論出来なかった。

 伸一郎の言葉に、白井が手を挙げて質問する。
「あの、今まで有った調教時の制約や禁止事項は、どう成るんでしょうか?」
 伸一郎は手を大きく横に振ると
「そんな物は無い! 一切禁止はしないが、殺す事と狂わせる事は許さん。もし、そうなった場合、儂がそいつを同じ目に遭わせてやる。他に質問は」
 サディスト教師を覗き込み、宣言した。

 サディスト教師がコソコソと話し始めると、小室が手を挙げ
「理事長、奴隷を査定するのは、理事長が行われるんですか?」
 伸一郎に問い掛けると、伸一郎は首を左右に振り
「儂でも良いが、それだと偏りが出来る。今回は、知人の紹介でプロの目に依頼してある。聞く所に依れば、殆どの者は面識が有るらしいな…。新任の養護教員、末鬼 沙羅(まつき さら)だ…、彼女の言葉は儂の言葉と思え」
 伸一郎が入り口を手で指し示すと、扉が開きキサラが現れた。

 キサラはシックな濃紺のスーツに白衣を羽織り、ピンヒールを履いてカツカツと進み出る。
 演壇の横に立つと、キッとサディスト教師全員を睨め回し
「そう言う事に成ちゃったから、よろしくね皆さん」
 妖艶な微笑みを浮かべ、挨拶をした。
 キサラの登場に、合宿組の教師達の顔が引き痙る。
 合宿中のキサラは、まさに悪魔のような責めを行い、教師達の心を支配していたのだ。

 それ以外にも、キサラの登場で表情を変えた者がいた。
(ちぃ! キサラが出て来やがった。あの女、政財界にかなりのパイプを持っている筈…。あの女が出張って来たって言う事は、竹内の爺に誰か加わったな…。それも、かなりの大物だ…ここでの加入は、不味いぞ)
 狂は、苦虫を噛みつぶしたような表情で、俯いて顔を逸らせる。

 伸一郎は狂の表情の変化に気付く事なく、男達を示すと
「あと、ここに居る東と源、もう一人谷という3人が、ここの用務員として働く、東と谷は監視役だ、源は今まで通りだが、何の権限も持たせていない。お前達で好きなように使え」
 それぞれの役割を告げる。

 伸一郎は学校の運営サイドを説明すると、狂を指差し
「彼は、みんなも知っている、この計画発案の唯一の残留者だ。彼は、儂の考えに賛同し、計画を実行して行く。彼には学生を統括して貰う、今後は生徒会長として働いて貰う予定だ。新校則により、彼が実質生徒達の頂点に立つ」
 意味ありげな笑いを口の端に浮かべて、紹介した。

 伸一郎はそこまで話すと、一旦話を打ち切り、全ての教師を集め、新システムについて話し始めた。
 先ず調教師のランクをS・A・B・Cの4っつに分け、ランクを上げるために、必要なポイントを教える。
 Cランクから始まり、30ポイントでB、50ポイントでA、100ポイントでSと定め、奴隷の出来次第でポイントが与えられた。
 奴隷のポイントはキサラが基本を10点満点で判定し、特別な能力に対しては、加点して行く方法が取られる。
 判定方法は、キサラが全て判断して行く審査方式だ。

 伸一郎は現在の首輪を全て取り上げ、新たに奴隷教師を区分けした。
 黒首輪はポイントを付けられた完成品と見なされ、これに対する管理者以外の一切の手出しを禁止する。
 次に赤首輪は調教中の奴隷教師とされ、Sランクには5人、Aランクスには3人、Bランクには2人、Cランクには1人、それぞれ持つ事を許される。
 この赤首輪も、管理者以外の一切の手出しは禁止された。

 そして青首輪は調教待ちの奴隷で、どの調教師が手出ししようと自由だが、調教師以外の手出しは禁止される。
 最後に首輪を持たない、奴隷教師は全ての者がどう使おうが、全くの自由とされた。
 それこそ、校長や教頭や指導主任はもとより、用務員や奴隷教師、果ては生徒達であろうと、何をしても構わない、最下層の奴隷である。

 ここで、問題になって来るのが、奴隷の首輪の移行問題だが、キサラの発案の元、伸一郎が手心を加え、ルールが決められた。
 先ず、一挙に黒首輪が増える事だが、黒首輪の定数を24名と定め、5ポイント以上が合格点とする事により、それを防いだ。
 黒首輪が24名を超えると、自動的に黒首輪の中で、ポイントの低い奴隷教師が剥奪され、青首輪に代わる。
 青首輪から赤首輪には、奴隷の申し出でも、調教師の選抜でもどちらでも構わないが、青首輪時の不服従は即首輪剥奪とされた。
 首輪剥奪から、青首輪への移行は、当面伸一郎若しくはキサラの合意があり、調教師2/3以上の承認が必要とされる。
 審査は、翌日からだと宣言し、話を締めくくった。

 伸一郎のこの話を聞いて、首輪に断固反対していた、4人の女教師が眉根を吊り上げ
「な、何を言ってるんですか! それは、犯罪でしょ? そんな事を強要するなんて、頭がおかしいとしか言えません! 教育委員会に訴えます! いえ、その前に警察に訴えますわ!」
 口々に顔を真っ赤に染めて、捲し立てる。
 だが、その4人の教師を、他の奴隷教師は哀れみの目で見詰め、12人のサディスト教師は苦笑を噛み殺し、伸一郎がユックリと口を開く。
「おい、解らせてやりなさい…。今の言葉を泣いて悔い改めても、許すんじゃないぞ…。自ら進んで這い蹲るように成る迄、徹底的に教えてやれ…首輪が無いと、どう言う目に遭うかな…」
 4人の女教師は、12人の調教師と校長達に引き立てられ、悲鳴を上げながら管理棟に向かった。

 稔の作り上げた秩序は、[リーダーの排斥]と言う最悪の形で、崩壊した。
 そして、学校は伸一郎の統制を受け、奴隷農場へ姿を変え始める。
 様々なバグは絡み合い、プログラムを根底から変えてしまう。
 奴隷教師の多くは、この結果を受け項垂れ、震え上がっていた。

■つづき

■目次4

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊