夢魔
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■ 第29章 暗転5

 キサラは美由紀に命じると、視線を白井に移し
「制約も守れないお前に、言って置いて上げる。もし、その奴隷に少しでも干与したら…私が、教えて上げる。SMの全てをね…」
 右側の唇の端をキュッと引き上げ、凍り付くような視線を向け宣言した。
 キサラの言葉と表情に、白井は全身を震え上がらせ、頭を下げる。

 キサラは白井を凍てつく微笑みで見送り、スッと黒澤に近づくと
「学校の外で控えている教師と奴隷、早く呼びなさい…。貴方の部下でしょ、小手先の浅知恵は必要ないわ」
 黒澤に向かって、妖しげな目線で告げた。
(くっ、バレてるのか…。この女、底が知れない…)
 黒澤は唇を噛み、学校の外に待機させていた、盟友の教師4人とそれぞれ2人ずつの奴隷教師、12人を呼び寄せる。

 黒澤の予定外の呼び出しに、山孝・山源・大貫・大城の4人の教師と、8人の奴隷教師は慌てて出勤した。
 黒澤は12人の教師達が集まると
「どう言う訳か、外に待機させていた事がバレてた…」
 キサラの態度と、言葉を思い出しながら、教師達に説明する。
「あの女…、思っていたより、かなりまともだぞ…。今のところは、信頼しても構わんだろう…」
 自分のキサラに対する感想を加え、教師達に伝えた。

 調教教師12名が揃うと、キサラが集合を掛けた。
 その招集に従って、12名が集まると、キサラはマイクロSDカードを教師達に配る。
「そのSDカードは、携帯電話に入れて使いなさい。中に、あるソフトが入ってるから、起動して。あ、GPS機能の付いていない携帯では、使えないから早めに交換する事ね」
 キサラの説明に、教師全員が訝しそうにSDカードを見詰めると、黒澤はそれに直ぐ気付いた。
(GPS機能…。昨日の注射…。山孝達の待機…。そうか、そう言う事か)
 黒澤は自分の携帯電話にSDカードを差し込み、ソフトを起動させる。

 すると、携帯電話に学校の地図が現れ、黄色の数字が1から12、白い数字が1から48まで映し出された。
 携帯電話の地図の中で、黄色の数字は会議室に集まり、白い数字は学校内に散らばり、移動して居た。
「こう言う事か…」
 黒澤が、携帯電話を操作すると、地図は学校から半径5キロまで広がり、その所在を映しだしている。
「理解出来たかしら? 昨日の注射は、貴方達に発信器を埋め込んだの。その電波は、厚さ5mのコンクリートでも通り抜けるらしいから、貴方達が何処にいるのかは、一目瞭然。黄色の数字は貴方達、白い数字は奴隷教師、あと赤と黒と青に色は変化するわ。意味は分かるわよね…、制御はこちらでしか操作出来ないし、取り外しも不可能…。だって、筋肉繊維に入り込んで、レントゲンでもCTでも映らないらしいんですって」
 キサラがコロコロと笑い、説明した。

 キサラはスッと微笑みを消すと
「貴方達に逃げ場所はないの、勿論奴隷達にもね…。日本中…、いえ世界中の何処に逃げても、直ぐに居場所は分かっちゃうわ」
 調教教師全員に告げ、スッと視線を白井に向け
「貴方達の動きは、全てトレースされ記録される。間違っても私の命令に、背かない事ね…。私は、そんなに優しくないわよ」
 囁くように歌うように告げる。
 その美しい声を聞いた白井は、一瞬で震え上がった。

 キサラは全調教教師の顔を見渡し
「で、これからは業務連絡、[至急24人の黒首輪を決めろ]って指示が有ったの。手っ取り早く審査するから、逐次地下に連れてきなさい」
 理事長の指示を伝える。
 扉に手を掛けて、不意に振り返り
「そう、そう、私の元にカスを連れて来たら、お仕置きしちゃうわよ。最低限、服従心を持ってなきゃ審査もしないから…。良く覚えておいて…」
 妖しく微笑んで、会議室を出て行った。

 そう言ったキサラの目線は、白井を真っ直ぐに見ていた。
 白井は唇を噛みしめ、視線を落として床を見詰め、ブルブルと身体を震わせる。
(浅知恵は必要ないとは、この事か…[正攻法で来い]という事だな…。何を考えているか解らんが、どうやらSMに関しては、随分とまともそうだ)
 黒澤はキサラの言動をそう捉えるが、回りの教師は小刻みに震えている。
 山孝や京本ですら青い顔をして、震えていたのだ。

 キサラが退室する事で、招集が解散した。
 黒澤はスッと山孝の横に近づき、問い掛ける。
「どうした? 何をそんなに怯えている…」
 黒澤が、山孝に問い掛けると
「あぁ…俺等は見ちゃいましたからね…、あの人の店で…。あの人の[お仕置き]を受けて、人の原型が無くなった男や女の姿を…。あの人は、人間の感情全てで、支配するんでさぁ…。喜怒哀楽恐…全ての感情を支配し、服従させる…。それを思い出したんですよ…」
 山孝は大きく溜息を吐くと、ボソボソと呟くように言葉を吐いた。

 山孝の言葉を聞き、黒澤は自分の考えの甘さに気付く。
(そうか、あの女は厳格なルールを認め、白井の自分勝手な行動を叱責したが、その前に行っていた暴虐は止め無かった。服従心を示させろと言ったが、その方法までは言及していない。これは、私の思い込みだ…、どのレベルの奴隷を求めているか解らない以上…ここは、憶測で行動するのは危険だな)
 黒澤は自分の気持ちを引き締め、4人の教師達と会議室を出て行き
「基本的には昨日の計画通り、審査を受けさせる。先ずは私が由香を連れて、審査を受けてこよう…」
 廊下を歩きながら、4人に告げる。

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